質問本文情報
令和七年十二月四日提出質問第一一一号
「リサイクル燃料貯蔵(株)に関する使用済核燃料搬入・搬出計画」及び「六ヶ所再処理工場」に関する質問主意書
提出者 山崎 誠
「リサイクル燃料貯蔵(株)に関する使用済核燃料搬入・搬出計画」及び「六ヶ所再処理工場」に関する質問主意書
東京電力ホールディングス(株)及び日本原子力発電(株)とリサイクル燃料貯蔵(株)(以下むつ中間貯蔵施設)は、本年七月七日、青森県とむつ市に「リサイクル燃料貯蔵(株)に関する使用済核燃料搬入・搬出計画」(以下中長期計画)の検討状況を報告した。
使用済核燃料は、再処理されなければ高レベル放射性廃棄物として地層処分されなければならないことから、青森県民、むつ市民の間には中間貯蔵施設から搬出されず、核のゴミ捨て場にされるのではとの不安が高まっている。
そのことから、青森県とむつ市は中長期計画の策定を国と事業者に要請し、国の指導により取りまとめられたものである。
中長期計画は二〇九〇年代初頭までの長期間にわたる内容で、青森県民及びむつ市民の安全安心が永遠に確保され、国策に対する不安、不信、疑念が解消されるよう以下質問する。
一 中長期計画は、根拠が乏しい「想定」を前提条件として、様々な変動要因と不確実性を抱えている。
1 そのため、五十年以内にむつ中間貯蔵施設から六ヶ所再処理工場に搬出されず、むつ中間貯蔵施設に長期間貯蔵されるのではないか、あるいは六ヶ所再処理工場に搬出されても同工場で再処理されず、長期間貯蔵されるのではないか、といった不安、不信、疑念が高まったと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
2 中長期計画策定を指導した政府の責任として、同計画の内容の妥当性、確実性について検証し、国民、青森県民、むつ市民に説明すべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
二 平成十七年(二〇〇五年)東京電力(株)と日本原電(株)が公表した事業計画は、東京電力(株)の十七基の原発から発生する使用済核燃料は年間五百トン程度で、その内三百トン程度を六ヶ所再処理工場に、二百トン程度をむつ中間貯蔵施設に搬出し、日本原電(株)は、四基の原発から年間百トン程度発生し、内五十トン程度を六ヶ所再処理工場に、五十トン程度をむつ中間貯蔵施設に搬出する内容である。
従って、中間貯蔵施設に年間二百五十トン程度を二十年間搬出し、貯蔵能力五千トンの施設が必要とされ、一棟目を三千トン、二千トンの計画としたものである。
しかし、その後福島原発事故等により、両電力会社では廃炉計画が示され、現時点では東京電力(株)は新潟柏崎刈羽原発の五基に、日本原電(株)は、敦賀二号機が原子力規制委員会から不合格とされたことにより、一基の原発運転計画であり、計画当初から環境が大きく変化している。
東京電力(株)の五基の原発から発生する年間使用済核燃料は二百トン程度で、日本原電(株)一基からは三十トン程度と見込まれ、いずれも全て六ヶ所再処理工場に直接搬出できる量である。
1 原発から発生する使用済核燃料の量は六ヶ所再処理工場に直接搬出できる量であり、むつ中間貯蔵施設は必要ないと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
2 原発において使用済核燃料の貯蔵割合が高くなっている対策として、他電力会社のように原発内に貯蔵する対策を講じる方が、中間貯蔵施設の建設、維持管理、輸送のキャスクの製造及び輸送等の経済性を考慮すればより合理的と考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
3 同施設の規模を四千トンから四千五百トンと見込んでいるが、両電力会社が想定している原発の数及び使用済核燃料の年間発生見込量とその内、六ヶ所再処理工場に搬出する量とむつ中間貯蔵施設に搬出を予定している量を明らかにする必要があると考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
4 平成十六年八月の東京電力(株)資料によれば、中間貯蔵施設建設費(暫定)として一千億円程度(この内七〜八割は金属キャスク費用)と説明していることから、再処理工場、MOX燃料加工施設のようにむつ中間貯蔵施設の建設、維持、運営、輸送等に係る費用を公表すべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
三 六ヶ所再処理工場への搬入計画は、二〇三〇年から二〇六四年までは原発からの搬入が年間二百トンで、二〇六四年から二〇七四年までは、むつ中間貯蔵施設から年間三百トンを、二〇七四年から二〇八〇年代後半までは、原発から年間百トンを、更に二〇八〇年代後半から二〇九〇年代初頭まで、むつ中間貯蔵施設から年間三百トンの搬入計画となっている。
1 原発の老朽化と原発の最長運転可能年数の六十年を考慮すれば、両電力会社の既存の原発運転可能時期は二〇六〇年頃で、それ以降の原発運転計画は存在せず、中長期計画では、むつ中間貯蔵施設から搬出される担保にならない。
従って、二〇三〇年以降の原発の新増設を含んだ運転計画を示す必要があると考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
2 二〇三〇年から二〇六四年まで年間二百トン、二〇七四年から二〇八〇年代後半まで年間百トンとした根拠について、原発稼働予定基数を両電力会社がそれぞれ明らかにすべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
3 むつ中間貯蔵施設から搬入される二〇六〇年から二〇七四年及び二〇八〇年代後半から二〇九〇年代初頭までの間は、東京電力(株)、日本原電(株)から直接、六ヶ所再処理工場に搬入される使用済核燃料を見込んでいない理由について説明が必要であると考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
4 六ヶ所再処理工場への搬入計画があっても、プルトニウムの利用が進まなければ、六ヶ所再処理工場で再処理されず、長期間貯蔵されることになる。
従って、二〇三〇年以降から二〇九〇年代初頭までの東京電力(株)、日本原電(株)のプルトニウム利用計画を示すべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
四 東京電力(株)のプルトニウム保有量は、十三・五トンで(二〇二五年八月)使用済核燃料貯蔵量は六ヶ所再処理工場貯蔵量も含み、七千九百四十トン(二〇二五年六月末)であるが、同社のプルサーマル計画は住民の理解が得られない等で、策定されていない状況にある。
現時点で、プルサーマル計画を進めることが出来ない会社が、七十年、八十年先の原子力施設の安全性を確保し、プルサーマル計画を確実に進めることに、疑念と不安と不信を持っている国民、青森県民が多いと考える。
政府として、東京電力(株)に対し、早期にプルサーマル計画の公表を求め、その実施を見極めた上で、むつ中間貯蔵施設の操業可否を判断すべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
五 資源エネルギー庁は、去る十一月十二日に青森市で開催された「第一回青森県原子力・エネルギー対策県民会議」に出席し、原子力・核燃料サイクル政策と取組について説明している。
説明資料に、中長期計画について「福島の使用済核燃料について、福島県外への搬出計画が初めて具体化」との記述がある。
政府として、中長期計画で搬出が具体化したと認識しているのか、また政府としても、むつ中間貯蔵施設に搬出することを認め、推進する考えなのか、政府の見解と対応を示されたい。
六 むつ中間貯蔵施設から六ヶ所再処理工場に搬入されるのが二〇九〇年代初頭までとなっているが、同再処理工場は未だ竣工せず、二〇九〇年代初頭以降も、同工場が安全性と安定性を確保し、操業することに大きな疑問と不安を持つ。政府は、同工場の長期安定性、安全性をどのように確保するか、政府の見解と対応を示されたい。
七 再処理工場で生成されるプルトニウム以外に、再処理量の九割を超える回収ウランが生成されるが、その活用は事業者もほとんど未着手のままで、国内でも現有量一万トン程度が存在すると思われるが、その活用が進まない原因と今後の活用方法とスケジュールについて、政府の見解を示されたい。
加えて、それぞれの電力会社等がどの程度保有しているのか、政府が把握している事業者別の保有量を示されたい。
八 むつ中間貯蔵施設には使用済MOX燃料を搬入しないことを、両電力会社は青森県とむつ市に約束している。
その一方で、将来、使用済MOX燃料の再処理施設として六ヶ所再処理工場を想定すると、第七次エネルギー基本計画に示されたことから、使用済MOX燃料の貯蔵、再処理に不安を感じている県民は多い。
1 今後の両電力会社の使用済MOX燃料発生見込量及び貯蔵場所と貯蔵期間を明らかにすべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
2 むつ中間貯蔵施設に搬入しないことを政府としても確認すべきと考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
3 使用済MOX燃料の再処理施設として、六ヶ所再処理工場が想定されているが、同工場以外の選択肢として、新たに建設することもあり得るのか。また再処理施設を決定する時期及び決定に至るまでのスケジュールと操業開始時期等について、政府の見解と対応を示されたい。
九 今後、六ヶ所再処理工場が本格操業し、プルサーマル計画が進行しても、既に大量のプルトニウムが保有されている状況は変わらない。一方で原発の老朽化により、再処理されない使用済核燃料が大量に発生することから、緊急避難的な「中間貯蔵政策」でなく、「全量再処理政策の見直し」が必要と考えるが、政府の見解と対応を示されたい。
右質問する。

