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令和七年十二月十一日提出
質問第一四八号

「不法滞在者」という呼称の使用等に関する質問主意書

提出者  上村英明




「不法滞在者」という呼称の使用等に関する質問主意書


 国連総会は一九七五年の決議「三四四九(XXX)全ての移住労働者の人権及び尊厳を確保するための措置」(三四四九(XXX).Measures to ensure the human rights and dignity of all migrant workers)二項において、国連機関及び関係専門機関に対し、他国に不法に、かつ/あるいは、密かに入国して就労を得る労働者を定義するにあたり、全ての公式文書において「書類のない」(non-documented)もしくは「非正規の移住労働者」(irregular migrant workers)という用語を使用するよう要請している。
 また、同三項において、加盟国政府に対し、自国の管轄行政当局に対して「非正規移民を含む全ての移住労働者の人権を尊重する義務」を再確認するよう要請している。
 更に、「不法滞在者」のように、「違法」や「非合法」の意味を含む言葉は、ビザの期限超過といった行政上の違反行為を過度に強調し、不必要な犯罪性を連想させるおそれがあるため、一般的に使用を避けるべきというのがIOM(International Organization for Migration=国際移住機関)の見解である。
 以上を踏まえて、以下質問する。

一 政府は、二〇二五年五月二十三日に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下「ゼロプラン」という。)を公表した。日本は一九五六年に国連加盟国となり、国際社会の一員として規範を尊重する義務を負っているにもかかわらず、一九七五年の国連総会決議を無視してまで、政府が「不法滞在者」という呼称に固執する理由を示されたい。
二 ゼロプランにおいては、「不法滞在者ゼロを目指」すとし、「在留管理・難民審査」や「出国・送還」等の強化を図るとしているが、国際人権規約を批准した日本が「書類のないもしくは非正規状態を含む全ての移住労働者の人権を尊重するという国家の義務」を果たさない理由を示されたい。
三 政府は、「非正規移民を含む全ての移住労働者の人権を尊重する義務」を遵守し、差別や偏見を助長しないためにも、「不法滞在者」という呼び方を直ちに「非正規滞在者」に変更する必要があると考えるが、見解を示されたい。
四 政府は、ゼロプランの公表前から、難民認定申請中の家族のうち、その親のみを強制送還することで家族の分離を強いる取扱いを行ってきたと認識している。これは、日本が批准した「児童の権利に関する条約」の第九条一に規定された「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」という権利を侵害するものと考える。しかし、政府は、同条約の第九条一について、「出入国管理法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではない」という解釈宣言を行っている。この解釈宣言は、国内法である出入国管理及び難民認定法(入管法)が国際条約上の義務に優先するという立場を示唆するものであるが、そもそも入管法は国際法よりも法的に上位に位置するものであるか否か、その理由も含めて説明されたい。
五 日本国憲法第九十八条第二項には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と明記されている。この条文は一般的に国際法が国内法より上位であることを示すものとされているが、最高法規である日本国憲法に反してまで、入管法が国際法に優先するという見解を示す理由を説明されたい。
六 日本は「難民条約」「児童の権利に関する条約」「国際人権規約」を批准しており、これらに従う国際的義務があるが、現在の入管行政が国際法から逸脱しているとの認識はあるのか。これと異なる認識である場合には、その理由もあわせて説明されたい。

 右質問する。

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