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令和七年十二月十一日提出
質問第一六三号

成年後見制度における本人の意思尊重と制度利用者の手続保障の確保に関する質問主意書

提出者  松原 仁




成年後見制度における本人の意思尊重と制度利用者の手続保障の確保に関する質問主意書


 成年後見制度は、高齢者・障害者の権利保護を目的とする重要な制度である。しかし、現行制度では、本人の意思尊重と手続保障が十分に担保されていないとの指摘が、学界や実務家から多数指摘されている。特に、本人の希望する後見人が選任されにくい運用、陳述権の保障不足、不服申立て権の制限、記録閲覧制限など、重要な制度上の問題が存在する。
 政府は、「第二期成年後見制度利用促進基本計画」において、意思決定支援・本人主体の理念をより明確にしたが、実務運用との乖離が指摘されている。国民の信頼確保のため、以下質問する。

一 後見人選任プロセスにおける本人の意思の尊重について
 1 家庭裁判所が後見人を選任する際、本人が希望する親族が選任されず、専門職後見人が優先される運用があるとの指摘がある。いわゆる「親族排除」の傾向について、政府の把握と見解を示されたい。
 2 我が国における親族後見の割合は約三割前後で推移している。他方で、ドイツ連邦共和国やアメリカ合衆国(カリフォルニア州等)では、「後見人の優先順位として、本人が希望した人、家族、家族が決めた人」の優先順位が制度として確立している例がある。これらの制度運用について、政府が行った調査研究の内容と、今後追加調査を行う意思があるか明らかにされたい。
 3 本人の意向をより重視した後見人選任基準の導入を検討すべきと考えるが、政府の見解如何。
 4 家事事件手続法第百二十条第一項三号等は、家庭裁判所に対し本人の陳述聴取義務を課しているが、実務上、陳述が可能であるにもかかわらず聴取を省略する事例が指摘されている。この事実を政府は把握しているか明らかにされたい。
 5 我が国における後見人選任の審判について、本人の心身の障害等を理由に陳述を省略した件数、全体に占める割合、ならびに「陳述不能」の判断基準(医学的・法的ガイドライン)が存在するか明らかにされたい。
 6 前項に関し、統計を把握していない場合、その理由と、今後の調査実施の有無を明らかにされたい。
 7 本人が陳述可能な場合、陳述は原則として省略すべきでないと考えるが、政府の見解如何。
二 報酬額・選任審判に対する不服申立て権の確保について
 1 後見人の選任審判および報酬決定は、本人の財産・生活に重大な影響を与える。しかし、現行法は後見人選任審判に対し、本人・親族に即時抗告を認めていない。この点は憲法上の適正手続(デュープロセス)に反するとする指摘もある。制度改正を検討すべきと考えるが、政府の見解如何。
 2 民事訴訟法第三十一条により、被後見人は訴権が制限され、後見人が加害者である場合に被害者である被後見人本人が訴訟を提起できない「利益相反」が生じている。特別代理人制度はあるものの、選任に時間を要し、また認められない事例もある。被後見人の「裁判を受ける権利」の侵害となり得るが、現状を政府はどう評価するか。
 3 本人が自身の権利制限の根拠である鑑定書等の記録閲覧・謄写を求めても、家事事件手続法等を理由に拒否され、医師名が黒塗りとされる事例がある。本人が費用を負担し、自己に関する情報であるにもかかわらず、これを秘匿する合理的根拠は乏しいと考える。政府として、(1)非開示の法的根拠、(2)運用改善の必要性についての見解を示されたい。

 右質問する。

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