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令和七年十二月十一日提出質問第一六五号
成年後見制度における後見人の報酬決定の透明性の確保と財産権の保護に関する質問主意書
提出者 松原 仁
成年後見制度における後見人の報酬決定の透明性の確保と財産権の保護に関する質問主意書
成年後見制度は、高齢者・障害者の権利を保護する上で重要な役割を果たしている。しかし、後見人報酬の決定過程において、透明性が十分に確保されていないとの指摘が多く寄せられている。特に、財産額と報酬額が比例するかのような決定運用、本人死亡後の報酬受領の不適切事例、親族後見人と専門職後見人の扱いの格差、自治体助成制度の地域差など、制度の根幹に関わる問題が顕在化している。
憲法二十九条が保障する財産権の保護及び、本人の権利性への配慮を明確化した「第二期成年後見制度利用促進基本計画」の趣旨に照らしても、これらの課題は看過できない。
よって、以下質問する。
一 管理財産額と報酬額の連動に関する問題について
1 家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」は、管理財産額が高額な場合に報酬の増額を示唆している。もっとも、裁判所が公表する統計には、財産額と報酬額の相関を示すデータは存在しない。
@ 全国の裁判所において、財産額が報酬額に実質的に影響している運用実態を把握しているか。
A 過去五年間における財産額と年額報酬額の相関について、政府が把握する統計・分析があれば明らかにされたい。
B 「報酬額のめやす」が事実上の拘束力を持っているとの指摘に対する政府の認識を示されたい。
2 管理財産額が高額であっても、財産が預貯金中心の単純管理である場合には業務量の増加につながらない例が存在する。政府として、次の@及びAに対する見解を示されたい。
@ 財産多寡が業務量増加に比例するという一般化に合理的根拠があるのか。
A 財産の性質・種類・手間に基づく「実質的業務量評価」への見直しが必要ではないか。
3 被後見人死亡後は、民法第百十一条により後見人の代理権は当然に消滅する。しかし、審判確定前に、後見人が故人の口座から報酬を引き出す事例が報告されている。政府として、次の@及びAに対する見解を示されたい。
@ こうした事案の把握状況(件数・主な処理内容)。
A 刑事・民事上の措置の有無。
4 前項の問題は相続人の財産管理権の侵害の問題でもある。政府として、次のような考えられる対応策について、検討の必要性等、政府の見解如何。
@ 本人死亡後の報酬請求ルールの明確化。
A 相続人通知制度の導入。
B 後見人による勝手な引き出しへの罰則強化。
二 親族後見人等に対する報酬・助成の格差是正について
1 専門職後見人には報酬の目安がある一方、親族後見人には「目安」が存在しないとされる。政府として、次の@及びAにつき、明らかにされたい。
@ 親族後見人への報酬基準が存在するか。
A 前記@の基準が存在しない場合、その理由。
2 自治体によっては親族後見人への助成が存在しないため、地域格差が大きく、また、親族後見人の多くが無報酬で、専門職後見人との格差も大きい。親族後見を推進する観点から、全国統一的な助成制度及び親族後見人の評価基準の整備が必要と考えるが、政府の見解如何。
3 生活保護受給者を対象とする助成制度において、自治体が専門職後見人のみ助成する例がある。しかし、後見人には親族・一般市民後見人も選任され得る。資格の有無のみで助成対象を区別する運用は不合理との指摘がある。政府の見解を示されたい。
三 後見人報酬の実態調査の必要性について
1 後見人報酬に関する調査は、裁判所・士業団体によるものが中心であり、被後見人と家族を対象とした全国的調査は行われていない。政府として、こうした調査を実施したことがあるか明らかにされたい。
2 後見制度の現状を正確に把握し、制度や運用の改善に活かすために、市区町村に対する「助成実施の有無、対象者(専門職のみ/親族可等)、年度別支給件数、支給上限、申請件数、不支給理由等」に関する一斉調査、被後見人や家族を対象とした、後見人の属性(専門職、親族、その他等)も踏まえた、「後見人に支払った報酬(総)額」や「後見人の業務、サービスへの満足度」などに関する大規模な意識調査や実態調査を政府として実施することは有意義であると考えるが、今後実施する考えはあるか。政府の見解如何。
右質問する。

