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令和七年十二月十二日提出質問第一七四号
古本文化の価値及び持続可能性確保に関する質問主意書
提出者 八幡 愛
古本文化の価値及び持続可能性確保に関する質問主意書
我が国の出版文化は、多様な出版社・書店・図書館・古書店が相互に補完しながら形成されてきたものであり、特に古書店は、絶版書籍や郷土資料、専門書、雑誌等を再流通させることにより、「知識の循環」と文化記録の保存に重要な役割を果たしてきたと承知する。
こうした古本文化は、図書館や公的アーカイブでは補完しきれない多様な記録を維持しており、我が国の出版文化や知識基盤を支える文化的基盤として重要な役割を担ってきたと考える。
一方、近年は後継者不足や店舗減少が進み、古書店が地域から失われることが、文化資料の散逸等という形で取り返しのつかない損失をもたらす可能性が指摘されている。まず政府が古本文化及び古書の価値を正確に認識し、文化が毀損されないよう制度運用に慎重を期すことが不可欠であると考える。
よって、以下質問する。
一 古本文化の文化的価値に関する政府認識について
1 古書店は、絶版書籍、郷土資料、ミニコミ誌(個人誌やサークル誌等)、戦後雑誌、小規模出版社の刊行物など、図書館では網羅されにくい民間資料の多くを保持してきたと承知する。これらの資料の中には、国立国会図書館にも所蔵されていないものが相当数含まれるとされるが、政府はこの状況をどの程度把握しているか。また、こうした民間資料を古書店が保持してきたことの文化的意義について、政府の認識を示されたい。
2 古書店の減少が、文化資料の散逸や研究資料へのアクセス低下を生じさせる可能性について、政府はどのような認識を有しているか。
二 後継者不足に関する政府の現状認識について
1 古書店の多くが個人事業・家族経営であり、後継者不足が深刻化しているとの指摘があるが、政府はその現状をどのように把握しているか。
2 古書店が果たしてきた文化的役割を踏まえれば、後継者不在による店舗消失は文化的損失に直結し得ると考えるが、この点について政府の所見を示されたい。
3 店舗廃業時にまとまった在庫資料が散逸することを防止するため、公的機関との連携や寄託のあり方を検討する余地があると考えるが、政府の認識如何。
三 古書店に蓄積された知識・技能の継承について
1 古書の年代判定、資料価値の識別、修復技術といった専門性は、古書店主の経験に基づき属人的に蓄積されてきたが、これらが失われることの文化的影響について、政府はどのように評価しているか。
2 古書店主が持つ専門知識・技能が円滑に次世代へ継承されることは文化的観点から重要と考えるが、政府はどのような課題認識を有しているか。
四 古書店の環境変化と文化継続の観点からの制度運用について
1 地価上昇や商店街の衰退等により、文化的価値を有する古書店街が縮小しているとの指摘があるが、政府はこうした環境変化が古本文化に及ぼす影響をどのように認識しているか。
2 古書店の在庫管理・書誌情報のデジタル化は、文化資料の保存に資する面があるが、デジタル化の遅れによる資料散逸のリスクについて、政府の見解を示されたい。
3 図書館が古書店を通じて絶版書籍・郷土資料等を入手することは、公的アーカイブの補完として有意義と考えるが、この点について政府の認識如何。
五 古本文化が損なわれないための公的配慮について
1 古書店と図書館・大学等が連携し、書誌情報を共有する仕組みは文化資料の散逸防止に資する可能性があるが、政府はどのような課題認識を持つか。
2 地域出版社の刊行物、郷土資料、ミニコミ誌等、保存が難しい資料が古書店によって残存してきた歴史を踏まえ、これらが失われないようにするための公的配慮について、政府の見解を示されたい。
3 古本文化の担い手が急速に減少している現状を踏まえ、どのような環境整備が必要と考えるか、政府の認識如何。
右質問する。

