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令和七年十二月十二日提出質問第一九七号
持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営の支援等に関する質問主意書
提出者 緑川貴士
持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営の支援等に関する質問主意書
政府が令和七年九月三十日に公表した令和六年度の地方公営企業等の決算によれば、地方公共団体が運営する全国六百七十八の公立病院事業の合計の経常収支は、三千九百五十二億円で過去最大の赤字となり、経常収支が赤字となった病院の割合は八十三.三%となっている。
以下、質問する。
一 公立病院における経営赤字は、コロナ禍以降の患者数の減少等による医業収入の減少、薬剤費や医療機器、光熱費等の物価高騰や賃金の上昇、制度的課題等の複数要因が関係しており、その経営悪化は上記の通り、極めて深刻な状況にある。地域医療提供体制を維持するため、緊急的な財政支援に加え、診療報酬の大幅な加算が不可欠である。また、物価や賃金の上昇に応じて診療報酬を適時適切にスライドさせる仕組みの導入も急務である。政府見解と対応を伺う。
二 過疎化・高齢化が進む地域では、医師や看護師等の確保が難しく、必要な人員配置の基準を満たせないことで診療報酬の点数が低く算定されることから、厳しい経営状況となっている所がある。医療従事者の確保や処遇改善の取り組みを進める上で、同地域に対しては特段の支援が必要であると考える。政府見解と対応を伺う。
三 公立病院は、へき地医療、救急医療、周産期医療、精神医療等、不採算医療の多分を担っており、これらをカバーするために地方公共団体の一般会計から病院事業会計への繰入金制度に基づき、病院設置分として地方交付税措置されているところである。一方、同事業の運営費に対する積算単価が実態に見合っておらず、地方公共団体の持ち出しによる負担が限界に達しているとの指摘や、同交付税の繰出基準については、一部が明確な定量的基準ではなく定性的であり、費用の便益分析が困難である等、繰出の現行基準が実情に合っていないとする指摘があり、改善を求める声がある。政府見解と対応を伺う。
四 地域医療構想に基づく従来の取り組みにより、すでに多くの地域で病床数の適正化は進んでいる。令和六年度病院機能報告によれば、全国の総病床数は百十七・八万床となっており、政府が令和七年度に向けて必要量と掲げてきた百十九・一万床を、すでに約一・三万床下回っている。特に公立病院は、不採算医療の実施の他、コロナ禍にあっては積極的に患者の受け入れを行い、新興感染症対応におけるバッファ機能も有してきた。経営悪化への対応として病床削減がさらに進んでいく現状が、今後の地域医療の維持・継続に深刻な影響を及ぼす恐れがあると考える。政府見解と対応を伺う。
五 政府は、令和九年度からの「新たな地域医療構想」に向けた病床削減について「地域の実情に応じて病床を適正化する」と答弁する一方、十一万床という数値目標を掲げている。一般病院、ケアミックス病院における病床を削減の対象としているが、必要のない病床であれば、試算(一般病院で一床あたり年間約二千三百万円、ケアミックス病院で一床あたり年間約千四百万円の医業収益)にある医療費は生じないはずであり、より稼働率が低く、患者数が少ない場合の一床当たりの医業収益は同試算よりもはるかに小さくなると考えられる。地域で維持されるべき病床を削減対象とすることが、かえって地域の実情に沿わない病床削減の推進や、地域医療提供体制の混乱を招きうると考える。政府見解と対応を伺う。
右質問する。

