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令和七年十二月十二日提出質問第二〇二号
善福寺川上流地下調節池整備事業の費用便益比に関する質問主意書
提出者 五十嵐えり
善福寺川上流地下調節池整備事業の費用便益比に関する質問主意書
東京都が事業実施主体である善福寺川上流地下調節池整備事業に関して、国交省は令和七年度当初予算で、二億円を社会資本整備総合交付金として配分している。今後は、事業費の二分の一にあたる約七〇〇億円以上の国費投入が予定されている。
善福寺川上流地下調節池事業の単体の費用便益比(B/C)は公表されていないが、費用については、東京都は事業費を一五五七億円と公表している。また、神田川流域の河川整備計画に対応するB/C算定資料には善福寺川上流地下調節池の事業費(一四〇六億円、工事費以外の設計・管理費等を除いた試算値を用いる)及び計画に含まれる他の事業を含む全体の事業費の総額は約四八四四億円と示されており、善福寺川上流地下調節池の費用は約二九%を占める。
便益については、神田川流域の事業全体の総便益は、六八一四億円とされているところ、善福寺川上流地下調節池は貯水容量では河川整備計画にある全地下調節池の十八.六%にあたる。また、河道整備が時間降雨一〇ミリに対応し、全地下調節池が同一五ミリに対応することから、按分すると善福寺川上流地下調節池の便益は河川整備計画の総便益の一一.二%に当たると考えられる。
これらから善福寺川上流地下調節池の費用便益比を推計すると約〇.五となり、一.〇を大きく下回る。
これは推計に基づく数値ではあるものの、このように費用便益比が一.〇を大きく下回ると推計される事業に対して、国が事業費の二分の一(約七〇〇億円以上)に相当する国費を交付することの妥当性については疑問が残る。この観点から、以下質問をする。
一 善福寺川上流地下調節池整備事業について、国交省は当該事業の費用便益比が一.〇を上回ることを確認しているか。すなわち、当該河川事業の実施によって防止し得る災害に伴い発生すると見込まれる被害額が、当該河川事業に必要な費用を上回っていることを確認しているか。政府の見解を伺いたい。
二 社会資本整備総合交付金要綱(令和七年三月三十一日最終改正)には、調節池整備事業として、「水系・一連区間単位等で算出した費用便益比を記載することができる」とある。しかし、水系・一連区間単位に複数の事業(河道整備、各調節池等)が含まれる場合、費用便益比の高い事業(一.〇を超える)と、低い事業(一.〇を下回る)が組み合わされて、全体としては一.〇を超えると算定されるケースがあり得る。実際に、上述の通り、東京都が申請した「社会資本総合整備計画」(令和七年一月二十九日)においては、「荒川水系神田川調節池整備事業(調節池群)として費用便益比が「一.四」と示されているが、これには善福寺川上流地下調節池を含む複数の事業が含まれている。
事業効果が重視されている中で、本来であれば、費用便益比の低い事業は排除するか、事業内容を改善して費用便益比が一.〇を超えるようにする等の措置が必要であるが、現要綱に従えば、こうした改善努力が行われず、公金の不要な支出が行われる恐れがある。
国交省として、こうしたモラルハザードないし公金濫用を防ぐための要綱改正等の措置が必要ではないか。政府の見解を伺いたい。
右質問する。

