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令和八年十月九日提出
質問第一〇号

HPVワクチンの男性接種の定期接種化に係る費用対効果評価に関する質問主意書

提出者  向山好一




HPVワクチンの男性接種の定期接種化に係る費用対効果評価に関する質問主意書


 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんのみならず、尖圭コンジローマ、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がん等、男女双方に関係する疾患及びがんの原因となることが知られている。諸外国においては、男女双方のHPV関連疾患の予防、集団免疫、接種機会の公平性等の観点から、男性に対するHPVワクチン接種を公的接種の対象としている国が多数に上っている。
 我が国においても、HPVワクチンの男性接種については、令和四年以降、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会において検討が行われている。しかしながら、現時点においても定期接種化には至っておらず、政府は、令和八年七月十四日付内閣衆質二百二十一第二十九号答弁書において、最新のエビデンスや信頼性の高い国内データについて情報収集を行っていること、また、今後の具体的な議論のスケジュールや定期接種化の時期について現段階で示すことは困難である旨を述べている。
 そのような中で、本年七月二十二日に開催された第三十五回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会(以下「小委員会」という。)において、HPVワクチンの男性接種について議論が行われた。しかしながら、定期接種化の具体的な道筋は示されず、同委員会で引き続き議論をしていく方針がとりまとめられた。
 以上のことを踏まえ、以下質問する。

一 第三十五回小委員会において、九価HPVワクチンの男性接種に係る費用対効果分析の結果が示されたが、男性接種に伴う女性の子宮頸がんの予防効果(以下「間接効果」という。)を考慮したシナリオが含まれていなかった理由を明らかにされたい。
二 第三十五回小委員会で示された九価HPVワクチンの男性接種の費用対効果分析は、令和六年三月十四日開催の第二十四回小委員会における四価HPVワクチンの分析と同様のマルコフモデルである。したがって、間接効果を考慮したシナリオについても、同様の条件の下で分析可能と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
三 厚生労働省において、九価HPVワクチンの男性接種に係る費用対効果分析について、四価HPVワクチンの場合と同様にマルコフモデルを用いて間接効果を考慮したシナリオの分析を、自ら実施し、若しくは厚生労働科学研究の研究班等が実施した当該分析の結果の報告を受けるなどして把握しているか、明らかにされたい。
四 三について、分析を実施し、又はその結果を把握している場合は、その分析結果を明らかにするとともに、当該分析結果を第三十五回小委員会に提示しなかった理由及び経緯を具体的に明らかにされたい。また、当該分析結果を明らかにできない場合はその理由を、実施も把握もしていない場合は、四価HPVワクチンにおいては実施された間接効果を考慮した分析が、九価HPVワクチンにおいては実施されていない合理的な理由を、それぞれ明らかにされたい。
五 第六十回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、「四価HPVワクチンの男性への接種の評価に当たっては、女性への波及効果等を含めて総合的に評価を行っていくことについて了承され」ており、小委員会においても、男性接種による間接効果を勘案した議論を行う重要性が繰り返し指摘されてきた。さらに、第三十一回小委員会では、より精緻な「ダイナミックモデル」を構築するための情報収集を行う方針が示されている。
 しかしながら、第三十五回小委員会においては、従前のマルコフモデルを用いながら、間接効果を考慮しないシナリオのみが示され、これに基づく費用対効果に課題があるとしつつ、ダイナミックモデルについては引き続き情報収集を行う方針が示された。これまでの議論の経緯や方針と整合しない分析結果が示された理由及び経緯を明らかにされたい。
六 第三十五回小委員会における費用対効果分析では、有効性持続期間の基本設定が「二十年」とされた。これに対し委員からは、若年層が接種し、がん好発年齢である四十代から六十代に達するまでの長期的な予防効果を評価するには、この設定は極めて保守的であり過小評価につながる旨の指摘がなされている。これに対し、費用対効果分析の研究班の研究代表者である池田委員からは、有効性持続期間の基本設定が二十年であることにより将来発生するがんの予防効果を低く見積もっている可能性を認めつつ、今後の基本分析で有効性持続期間を何年とするかについては、委員の意見や先行研究及びエビデンス等を踏まえながら設定していきたい旨の回答があった。
 さらに、本年十月八日に開催された第七十八回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会においても、有効性持続期間を二十年と設定することについて、将来のがん予防効果が十分に反映されないとの指摘がなされた。
 また、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート追補版(令和六年三月十四日国立感染症研究所)」でも、「Ngらのレビューに含まれているgender‐neutral vaccinationを扱った十四件の論文の発症予防効果をみると、生涯持続が八件、残りの六件のうち記述なしの二件を除いた四件では五十年以上の効果持続を仮定している。」とあるように、諸外国の費用対効果評価のシステマティックレビューにおいてその大半が五十年以上の効果持続又は生涯持続を仮定していることが示されている。これらを踏まえ、有効性持続期間について五十年以上を基本分析として設定することは合理的と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また、政府として、小委員会や費用対効果分析の研究班に対し、このような国際的な科学的エビデンスと整合した合理的な条件設定に基づいて分析を行うよう促す考えはあるか、明らかにされたい。
七 第三十一回小委員会において、厚生労働省の担当官より、我が国の公的な費用対効果分析の判断基準として、増分費用効果比(ICER)が五百万円/QALYである旨、発言があったと承知している。
 一方で、B型肝炎ワクチンやおたふくかぜワクチン(MMRワクチン)の定期接種化の議論においては、費用対効果が必ずしも優れていない場合であっても、疾病負荷、臨床的有用性、社会的要因、あるいはジェンダー平等の観点など、費用対効果以外の多角的な要素を総合的に勘案して評価が行われ、定期接種化が決定されてきた、あるいは定期接種化に向けた議論が進められてきた経緯がある。
 これらを踏まえ、予防接種の定期接種化の可否決定において、費用対効果の評価結果は唯一絶対の判断基準ではなく、他の多角的な要素を勘案して総合的に判断されるべきであるという認識でよいか、明らかにされたい。また、HPVワクチンの男性接種についても、仮に増分費用効果比(ICER)が基準値を超過するなど費用対効果が必ずしも優れていないと評価される場合であっても、費用対効果以外の多角的な観点を含めて総合的な評価を行うべきと考えるが、政府の見解をあわせて明らかにされたい。
八 第三十五回小委員会において、費用対効果分析の研究代表者より、性的接触パターンの国内データの提供を依頼している研究グループがある旨の発言があった。当該研究グループの名称、研究課題名、調査内容、調査実施時期、及びデータ集計完了・提供の見込み時期を具体的に明らかにされたい。
九 小委員会の複数の委員から、費用対効果分析の過度な精緻化による議論の長期化や、具体的なタイムラインの欠如を懸念する声が上がっている。
 七における総合的評価の観点に立ち、費用対効果分析の精緻化にいたずらに時間をかけることなく、国内独自のデータの新規蓄積や分析モデルの極端な精緻化に固執することなく、既に蓄積されている諸外国の信頼性の高い既存データや知見を積極的に代替・補完的に活用するなどして、議論を早期に進めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
 また、日本独自のデータの収集や分析の精緻化を待つことで定期接種化の意思決定が長期化し、その間に本来であればワクチン接種によって予防可能であったはずの中咽頭がん等のHPV関連疾患が男性において発生し続けることによる健康上の不利益や、それに対する行政の不作為の責任について、政府はどのように認識しているのか、具体的に明らかにされたい。

 右質問する。

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