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答弁本文情報

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平成十四年八月二十七日受領
答弁第一五五号

  内閣衆質一五四第一五五号
  平成十四年八月二十七日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員平野博文君提出死者の人権の保護に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平野博文君提出死者の人権の保護に関する質問に対する答弁書



一の1について

 お尋ねは、一身に専属する権利の主体が死亡した後に、その権利がどのように保護されるか、という趣旨であると考えるが、一身に専属する権利は相続の対象とはならない。また、死者の名誉を毀損する行為は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十条第一項の名誉毀損罪に当たるが、同条第二項により、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しないものとされている。

一の2について

 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第六十条は、「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。」と規定している。この規定は、著作者の著作物を創作する意欲を確保し、また、貴重な文化的所産である著作物の利用の公正さを確保するためには、著作者の死後においてもその人格的利益を保護する必要があることから設けられたものであると考える。また、この規定は、著作者人格権が相続されないことを前提に著作者の死後における人格的利益を保護するものであるので、著作者人格権が一身に専属する権利であることに抵触するものではない。
 なお、実演家の死後における人格的利益の保護について、著作権法の一部を改正する法律(平成十四年法律第七十二号)により、著作者におけるものと同様の規定が設けられ、本年十月九日から施行されることとなっている。

一の3について

 著作権法第百十六条は、著作者の遺族等に、著作者の死後における人格的利益の保護のための措置として、差止め請求や名誉回復等の措置の請求を認めている。これは、著作者の死後における人格的利益の保護の実効性を確保するためには、著作者の生前の意志を最も適切に代弁することができる遺族等が、著作者の死後における人格的利益の侵害を防止し、又は名誉回復等の原状回復のための措置を講ずることができるものとする必要があるためと考える。また、この規定は、著作者の死後における人格的利益を保護するための措置として、著作者の遺族等に特に請求権を認めるものであり、著作者人格権が一身に専属する権利であることに抵触するものではない。
 なお、実演家の死後における人格的利益の保護のための措置について、著作権法の一部を改正する法律により、著作者におけるものと同様の規定が設けられ、本年十月九日から施行されることとなっている。

二について

 死者に関する情報の取扱いについて、どのような法律上の制度を整備するかは、それぞれの制度の趣旨・目的に照らして個別に判断されるべきものと考える。
 「個人情報の保護に関する法律案」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」及び「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案」(以下「個人情報保護関係法案」という。)は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大している中で、個人情報の取扱いに関連する個人の権利利益を保護することを目的とするものであるが、ここで課題になっている個人情報の保護は、すぐれて生存する個人についてのものと考えられる。また、個人情報取扱事業者、行政機関及び独立行政法人等における個人情報の取扱いに対するチェックは、個人情報の本人であって初めてこれを正確に行い得るものであるため、個人情報の本人が個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する仕組みとしたものであるが、これらの権利を行使することは、生存していなければ不可能である。これらを考慮すると、「個人情報」の範囲を「生存する個人に関する情報」に限ったのは、立法政策として必要かつ十分なものと考える。
 なお、個人情報保護関係法案においては、死者に関する情報であっても、当該情報が遺族等生存する個人に関する情報でもある場合には、生存する個人を本人とする個人情報として保護の対象となるものである。
 また、個人情報保護関係法案の個人情報の保護の内容が以上のようなものであるからといって、制度の趣旨・目的を異にする著作権法や刑法の名誉毀損罪との関係で法的な均衡を欠くものではないと考える。



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