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平成十六年三月十九日受領
答弁第四〇号

  内閣衆質一五九第四〇号
  平成十六年三月十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員平岡秀夫君提出有事法制関係法案等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平岡秀夫君提出有事法制関係法案等に関する質問に対する答弁書



一の(一)について

 国は、武力攻撃事態等(武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第一条の武力攻撃事態等をいう。以下同じ。)においては、その組織及び機能のすべてを挙げてこれに対処する責務を有していることから、政府としては、武力攻撃事態等に対処するための予算を確保する必要が生じた場合には、武力攻撃事態等への対処にいささかも支障が生ずることのないよう、適切に措置する考えである。

一の(二)について

 お尋ねの「不測の事態」がいかなる事態を意味するのか明らかではないが、内閣の首長である内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、そのあらかじめ指定する国務大臣が臨時に内閣総理大臣の職務を行うこととなる旨、内閣法(昭和二十二年法律第五号)第九条に定められている。小泉内閣においては、内閣発足に当たり、内閣総理大臣の臨時代理をあらかじめ第五順位まで指定して危機管理に備えており、万一の場合には、五人のうちで最も先順位の者一人が臨時代理となる。

一の(三)について

 万一お尋ねのような事態が生じた場合において、事態対処法その他法律の規定に基づき国会の関与が定められているときは、政府としては、国会の機能が回復し次第、直ちに対処基本方針(事態対処法第九条第一項の対処基本方針をいう。)について国会の承認を求めるなど、適切な対応を図ってまいりたい。

一の(四)について

 行政上の不服申立て、行政訴訟及び国家賠償に関する一般的法制度として、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)及び国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)がある。御指摘の対処措置(事態対処法第二条第七号の対処措置をいう。以下同じ。)その他の措置の実施においては、行政事件訴訟法及び国家賠償法が適用され、行政不服審査法も、例外的に不服申立てができないと法律上規定されている場合を除き、適用されることとなる。これらの法律の規定により、対処措置その他の措置の適法性は十分に担保されるものと考えている。
 また、今国会に提出している法律案においても、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(以下「国民保護法案」という。)第百五十九条から第百六十一条までの規定を始めとして、収用その他の処分を受けた者に対する損失の補償、要請を受けて協力をした者に対する損害の補償又は事態対処法第十四条第一項に規定する総合調整等に従った場合において地方公共団体等が受けた損失の補てんに係る所要の規定を設けているところであり、公平性にも十分に配慮しているものである。
 なお、国民保護法案第六条においては、国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置(国民保護法案第二条第三項の国民の保護のための措置をいう。以下同じ。)に関し、国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない旨の規定を設けているところである。

一の(五)について

 緊急対処事態(国民保護法案第百七十二条第一項の緊急対処事態をいう。以下同じ。)においては、国民保護法案第八章の規定に基づき、当該緊急対処事態における住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、緊急対処事態における災害への対処に関する措置その他の緊急対処保護措置(同項の緊急対処保護措置をいう。以下同じ。)を的確かつ迅速に実施することとしており、これにより、国民の生命、身体及び財産の保護等に万全を期することができるものと考えている。
 なお、いわゆる「緊急事態に係る基本的な法制」の検討に際しては、既存の法令との関係を十分に整理し、国民にも分かりやすい議論が進められる必要があると認識している。

一の(六)について

 事態対処法第三条第四項においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利の尊重が基本理念として明記されている。これを受け、国民保護法案第五条及び第百七十四条において、それぞれ国民の保護のための措置及び緊急対処保護措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならないとした上で、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置及び緊急対処保護措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない旨を規定している。また、国民保護法案第七条第二項において、国及び地方公共団体は、放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置については、その言論その他表現の自由に特に配慮しなければならない旨を規定している。なお、同項の規定は、国民保護法案第百八十三条において、緊急対処保護措置について準用されている。
 このように、武力攻撃事態等及び緊急対処事態においても、思想及び良心の自由、表現の自由その他の国民の基本的人権が最大限尊重されるのは当然のことである。

一の(七)について

 事態対処法第六条は、指定公共機関全体に通ずる一般的な責務を定めたものであり、特定の措置の実施について具体的な義務を課すものではなく、当該措置の実施が強制されることはない。
 他方、事態対処法第六条の規定を踏まえ、国民保護法案においては、指定公共機関が実施すべき国民の保護のための措置及び緊急対処保護措置の内容についての所要の規定(第五十条、第五十七条、第百一条、第百八十三条等)を設けており、これらの規定により、指定公共機関は、当該国民の保護のための措置及び緊急対処保護措置を実施する法律上の義務を負うこととなる。

二の(一)について

 国民保護法案第三十二条第二項第二号の規定に基づいて基本指針(同条第一項の基本指針をいう。以下同じ。)に定める「武力攻撃事態の想定」としては、現時点においては、航空機や船舶により地上部隊が上陸する攻撃、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空機による攻撃等を想定しているが、具体的には、今後、基本指針の策定段階で検討することとしている。

二の(二)について

 国民保護法案の規定により指定公共機関及び指定地方公共機関が実施すべき国民の保護のための措置は、国民保護法案第百二十七条第一項及び第四項に規定する被災情報の報告等の指定公共機関及び指定地方公共機関が共通に実施すべきものを除き、次に掲げるとおりである。なお、次に掲げる国民の保護のための措置に係る国民保護法案の規定については、第五号に掲げる国民の保護のための措置に係る国民保護法案第百三十三条の規定を除き、国民保護法案第百八十三条において、緊急対処保護措置について準用されている。
 一 放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による警報の内容の放送(第五十条)、避難の指示の内容の放送(第五十七条)及び緊急通報の内容の放送(第百一条)
 二 運送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による避難住民の運送(第七十一条)、緊急物資の運送(第七十九条)並びに旅客及び貨物の運送を確保するため必要な措置(第百三十五条第一項)
 三 日本赤十字社による都道府県知事が行う救援への協力(第七十七条第一項)、救援に関し地方公共団体以外の団体又は個人がする協力についての政府の指揮監督の下に行う連絡調整(同条第二項)並びに外国人に関する安否情報の収集、整理及び回答(第九十六条第一項)
 四 電気通信事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による避難施設における避難住民等のための電話その他の通信設備の臨時の設置についての都道府県知事が行う救援に対する協力(第七十八条)並びに通信を確保し、及び国民の保護のための措置の実施に必要な通信を優先的に取り扱うため必要な措置(第百三十五条第二項)
 五 日本銀行による銀行券の発行並びに通貨及び金融の調節、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を通じた信用秩序の維持に資するため必要な措置(第百三十三条)
 六 電気事業者及びガス事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による電気及びガスを安定的かつ適切に供給するため必要な措置(第百三十四条第一項)
 七 水道事業者、水道用水供給事業者及び工業用水道事業者である指定地方公共機関による水を安定的かつ適切に供給するため必要な措置(第百三十四条第二項)
 八 日本郵政公社並びに一般信書便事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による郵便及び信書便を確保するため必要な措置(第百三十五条第三項)
 九 病院その他の医療機関である指定公共機関及び指定地方公共機関による医療を確保するため必要な措置(第百三十六条)
 十 河川管理施設、道路、港湾及び空港の管理者である指定公共機関及び指定地方公共機関による河川管理施設、道路、港湾及び空港の適切な管理(第百三十七条)
 十一 災害に関する研究を業務として行う指定公共機関による国、地方公共団体及び他の指定公共機関に対する武力攻撃災害の防除、軽減及び復旧に関する指導、助言その他の援助(第百三十八条)

二の(三)について

 国民保護法案第八十五条第一項及び第二項は、大規模な武力攻撃災害が発生した場合において、避難住民等に対する医療を確保することが国民の生命又は身体を保護する観点から極めて重要であることにかんがみ、医師等の医療関係者に対し、都道府県知事が、医療の提供を行うため必要があると認めるときは医療を行うよう要請し、及び当該医療関係者が正当な理由がないのに当該要請に応じない等の要件に該当するときに限り医療を行うべきことを指示することができることとしている。
 医師等の医療関係者は、医師については医師法(昭和二十三年法律第二百一号)がその第十七条において医師でなければ医業を行うことができない旨のいわゆる業務独占の規定を設けている等の点で一般の国民とは異なる社会的な役割を担うべきことが期待されており、大規模な武力攻撃災害が発生した場合においては、一定の社会的な責任を負うことが適当であると考えている。

二の(四)について

 指定公共機関及び指定地方公共機関である民間関係者に対する指示については、国民保護法案第七十三条第一項(国民保護法案第七十九条第二項において準用する場合を含む。)の規定により内閣総理大臣が行う運送事業者である指定公共機関に対する指示及び国民保護法案第七十三条第二項(国民保護法案第七十九条第二項において準用する場合を含む。)の規定により都道府県知事が行う運送事業者である指定地方公共機関に対する指示のみとしている。
 また、指定公共機関及び指定地方公共機関以外の民間関係者に対する指示については、国民保護法案第八十五条第二項の規定により都道府県知事が行う医師等の医療関係者に対する指示のみとしている。
 このように、民間事業者その他の民間関係者に対する指示については、国民保護法案においては、極めて限定的なものとしているところである。

二の(五)について

 国民保護法案第七十一条第二項、第八十一条第二項、第八十二条第二項又は第八十五条第二項に規定する「正当な理由」とは、それぞれ国民保護法案第七十一条第一項、第八十一条第一項、第八十二条第一項又は第八十五条第一項の規定による求め、要請、同意の求め又は要請(以下「求め等」という。)に応ずることが極めて困難な客観的事情がある場合に限られるものと考えており、具体的な例を挙げると、次のとおりである。なお、求め等を拒否することができる「正当な理由」については、求め等を受けた者の事情のみではなく、それぞれの措置の必要性等諸般の事情を考慮し、第一義的には当該求め等を行う者によって客観的かつ総合的に判断されるべきものである。
 一 運送の求めについては、当該求めがあった運送に適する車両の故障等により当該運送を行うことができない場合又は当該運送の求めをした地方公共団体の長以外の地方公共団体の長から既に運送を求められている場合
 二 特定物資の売渡しの要請については、被災により当該特定物資が使用に耐えなくなっている場合又は売渡しの対象となる当該特定物資が既に他の都道府県知事による収用の対象となっている場合
 三 家屋の使用についての同意の求めについては、当該家屋が老朽化等により使用に適さない場合又は当該家屋において他の避難住民等が既に収容され、当該家屋の収容の容量に達している場合
 四 医療の実施の要請については、当該医療関係者が自らの負傷等により医療に従事することができない場合又は当該医療関係者が一刻を争う他の患者の治療に専念しなければならない場合

二の(六)について

 国民の自由と権利に制限が加えられる場合の救済措置としては、行政上の不服申立て、行政訴訟及び国家賠償に関する一般的法制度として行政不服審査法、行政事件訴訟法及び国家賠償法があり、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置の実施においても、これらの法律が適用されることとなる。
 なお、国民保護法案第六条においては、国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置に関し、国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない旨の規定を設けているところである。

二の(七)について

 国民保護法案第八十八条第二項の規定により内閣総理大臣が自ら所要の救援を行うことができる措置としては、国民保護法案第七十六条第一項の規定の例により市町村長に救援の実施に関する事務の一部を行わせることとすること、国民保護法案第七十七条第三項の規定の例により日本赤十字社に救援の実施に関し必要な事項を委託すること等を考えている。

二の(八)について

 国民保護法案第九十三条は、著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、法律の規定によっては避難住民等の救援に係る海外からの支援を緊急かつ円滑に受け入れることができない場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときに備えて設けている規定であるが、著しく大規模な武力攻撃災害の発生により避難住民等の救援に大きな支障が生じている場合等においては、同条の規定に基づき、海外からの支援の緊急かつ円滑な受入れに関する政令を制定することを想定している。
 また、国民保護法案第百三十条は、著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、国の経済の秩序を維持し及び公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときに備えて設けている規定であるが、著しく大規模な武力攻撃災害の発生により国民経済に大きな混乱が生じている場合等においては、同条の規定に基づき、金銭債務の支払(賃金その他の労働関係に基づく金銭債務の支払及びその支払のためにする銀行その他の金融機関の預金等の支払を除く。)の延期及び権利の保存期間の延長に関する政令を制定することを想定している。

二の(九)について

 今国会に提出している千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)(以下「第一追加議定書」という。)は、その第三十三条1において、敵対する紛争当事者により行方不明であると報告された者(以下「行方不明者」という。)の捜索を紛争当事者に義務付けるとともに、同条3において、行方不明者に関する情報は直接に紛争当事者間で伝達するほか、各国の赤十字社等を通じて伝達することを規定している。また、日本赤十字社法(昭和二十七年法律第三百五号)第二十七条第一項第一号は、赤十字に関する諸条約に基づく業務に従事することを日本赤十字社の業務として規定していることから、同社は、行方不明者に関する情報の伝達を業務として行うことができる。
 国民保護法案第九十六条第一項の規定は、これらの規定を踏まえて、行方不明者の捜索を求められた場合には日本赤十字社が当該行方不明者に関する安否情報を回答しなければならないこととし、あわせて、同社が外国人一般に関する安否情報についての照会に対しても回答しなければならない旨を規定したものである。

二の(十)について

 国民の保護のための措置に係る交通の規制については、国民保護法案第百五十五条第一項の規定に基づき、それぞれの地域における道路及び交通の状況を詳細に把握した上でこれを的確かつ迅速に実施するための組織及び能力を有する都道府県公安委員会が実施することとしている。この場合において、同条第二項において準用する災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第七十六条の四の規定に基づき、国家公安委員会は国民の保護のための措置が的確かつ円滑に行われるようにするため特に必要があると認めるときは関係都道府県公安委員会に対し通行禁止等に関する事項について指示することができることとするなど、緊急時における交通の規制が全国的に整合性をもって行われることを確保することとしている。なお、車両その他の物件の移動等については、交通の規制の現場における措置であることから、現場の警察官が命ずることができることとしている。

二の(十一)について

 国民保護法案第百六十四条の「実施について責任を有する者」とは、その所掌事務又は業務に関し、国民の保護のための措置のほか、国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画の作成、国民の保護のための措置についての訓練の実施等の国民保護法案の規定に基づくその他の措置を実施すべき者として国民保護法案に規定されている指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関をいう。

二の(十二)について

 お尋ねの「武力攻撃の手段に準ずる手段」としては、著しい破壊力を有する爆弾の使用等の武力攻撃(事態対処法第二条第一号の武力攻撃をいう。以下同じ。)において通常用いられる攻撃の手段又は生物剤、化学剤の散布等の武力攻撃において通常用いられる攻撃の手段に準ずる攻撃の手段を考えている。なお、緊急対処事態の認定については、用いられた攻撃の手段の態様のみならず、被害の発生状況、国家として緊急に対処することにより国民の生命、身体及び財産を保護することの必要性等を総合的に勘案した上で判断されることとなる。

三について

 武力攻撃予測事態(事態対処法第二条第三号の武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)と周辺事態(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号)第一条の周辺事態をいう。以下同じ。)とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものであり、状況によっては、両者が併存することはあり得る。
 その場合であっても、今国会に提出している武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(以下「米軍行動関連措置法案」という。)に基づいて我が国が弾薬の提供を行うことができる対象は、米軍行動関連措置法案第二条第五号に規定する「日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための」行動を実施しているアメリカ合衆国軍隊に限られる。
 また、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(平成八年条約第四号。以下「日米物品役務相互提供協定」という。)を改正するために今国会に提出している日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定による改正後の日米物品役務相互提供協定(以下「改正された協定」という。)に基づいてアメリカ合衆国軍隊が弾薬を受領し、また、使用し得るのは、「武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際して・・・日本国に対する武力攻撃を排除するために必要な」行動のために必要な場合に限られる。
 加えて、日米防衛協力のための指針に示されているとおり、周辺事態が予想される場合及び日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米間の調整メカニズムの運用が早期に開始されることとなり、アメリカ合衆国政府から我が国政府に対して改正された協定に基づいて弾薬の提供の要請があった場合にも、必要に応じ、当該要請に関する適切な調整が行われることとなる。
 これらのことにより、武力攻撃予測事態において我が国が提供する弾薬が、我が国に対する武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国軍隊の行動のために使用されるものであることが確保されるものと考えている。

四の(一)について

 今国会に提出している武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(以下「特定公共施設利用法案」という。)第十二条第一項の道路の利用指針(以下「道路の利用指針」という。)は、対策本部長(事態対処法第十一条第一項の対策本部長をいう。以下同じ。)が、その権限として行う事態対処法第十四条第一項に規定する総合調整の一環として定めるものであり、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関は、特定公共施設利用法案第五条の規定により、対処措置等(特定公共施設利用法案第二条第二項の対処措置等をいう。以下同じ。)を実施するに際し、道路の利用指針を踏まえ、適切にこれを利用し、又は利用させる責務を負うこととなるが、当該総合調整の対象ではない一般の道路利用者に対して、道路の利用指針に基づき、直接何らかの規制が行われるわけではない。
 なお、武力攻撃事態等における交通の規制については、道路の利用指針を踏まえ、都道府県公安委員会が、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第四条、国民保護法案第百五十五条等の規定に基づき、必要に応じ、実施することとなる。

四の(二)について

 港湾施設、飛行場施設又は道路の利用に際し優先すべき対処措置等の内容については、対策本部長が、その時々の状況を総合的に勘案し、適切に判断した上で、これらの利用に関する指針をそれぞれ定め、又は適時にその見直しを行うこととしており、優先すべき対処措置等の内容をあらかじめ確定することは、困難である。

五の(一)について

 今国会に提出している国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(以下「国際人道法違反処罰法案」という。)は、刑法(明治四十年法律第四十五号)等と相まって、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を図るため、戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約(昭和二十八年条約第二十三号から第二十六号までをいう。)及び今国会に提出している第一追加議定書(以下「ジュネーヴ諸条約等」という。)に規定する「重大な違反行為」に対する罰則を整備するものである。
 ジュネーヴ諸条約等は、「重大な違反行為」について処罰される者の範囲を限定しておらず、国際人道法違反処罰法案においても、その範囲を限定していない。
 他方、お尋ねの元首を含む国際法上一定の特権及び免除を享受する者の取扱いについては、関係する国際法に従って、それぞれの事案ごとに個別具体的に判断されることになる。

五の(二)について

 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百五十条は、公訴時効の期間について、長期十年未満の懲役に当たる罪については五年、長期五年未満の懲役に当たる罪については三年と規定しているところ、国際人道法違反処罰法案に規定する各罪についても、同条の公訴時効の規定が適用される。
 したがって、国際人道法違反処罰法案第六条に規定する文民の出国等を妨げる罪の公訴時効の期間は三年、国際人道法違反処罰法案に規定するそれ以外の罪の公訴時効の期間は五年である。

六について

 今国会に提出している武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(以下「海上輸送規制法案」という。)の規定による外国軍用品の海上輸送を規制する措置は、自衛権の行使に伴い実施するものであり、海上輸送規制法案第二条第二号に規定する外国軍用品についても、武力攻撃事態において我が国に対する外部からの武力攻撃を行っている外国軍隊等が所在する一定の地域を仕向地とする物品として定義しているところであり、武力攻撃事態以外の場合について、このような物品の海上輸送を規制する措置を講ずることは困難であると考える。

七の(一)について

 お尋ねの捕虜等が逃走した場合における今国会に提出している武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(以下「捕虜取扱い法案」という。)第六章第三節に定める逃走捕虜等の再拘束等の権限は、捕虜等警備自衛官に付与されたものであり、警察官はこれらの権限を有しないが、捕虜等警備自衛官は、逃走捕虜等の再拘束について、捕虜取扱い法案第百六十三条第二項の規定により、警察機関を含む公務所に照会して必要な事項の報告を求めることができる。また、捕虜等警備自衛官がこれらの権限を行使するに当たっては、警察機関は、捕虜取扱い法案第百八十二条に規定するとおり、捕虜等警備自衛官と相互に緊密に連絡し、及び協力することとなる。

七の(二)について

 捕虜資格認定等審査会の委員については、捕虜取扱い法案第九十五条の規定に基づき、防衛庁長官が、人格が高潔であって、安全保障に関する識見を有し、かつ、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約その他の国際的な武力紛争において適用される国際人道法又は防衛に関する法令に学識経験を有する者のうちから、任命することとしている。

八について

 今国会に提出している自衛隊法の一部を改正する法律案の規定による改正後の自衛隊法第百条の十第一項第一号から第四号までに規定する合衆国軍隊に対する物品及び役務の提供については、日米間の協議を通じ、当該合衆国軍隊が武器(弾薬を含む。)の提供を受けることを必要としないと判断されたことによるものである。

九の(一)について

 日米物品役務相互提供協定は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号。以下「日米安保条約」という。)を実施するために日米安保条約上締結が要請されているものではないが、日米物品役務相互提供協定は、その前文においても言及されているとおり、日米安保条約の円滑なかつ効果的な運用に寄与するものである。

九の(二)について

 改正された協定は、それ自体が自衛隊によるアメリカ合衆国軍隊への物品又は役務の提供の権限を付与するものではなく、自衛隊によるアメリカ合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供の権限は、我が国の関連の法律により付与されるものである。したがって、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号)又はイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号)に基づく対応措置を実施する自衛隊は、改正された協定第六条の規定の有無にかかわらず、これらの法律の定めるところにより、アメリカ合衆国軍隊に対し、譲与等の形で物品又は役務を提供することは可能である。ただし、改正された協定第六条の規定がない場合には、これらの法律に基づく対応措置を実施する自衛隊は、改正された協定第七条に定める手続等による物品又は役務の提供を行うことはできない。
 他方、アメリカ合衆国軍隊については、改正された協定に物品又は役務の提供を認める規定がない場合には、他に物品又は役務の提供を認めるアメリカ合衆国の国内法の規定がある場合を除き、自衛隊に対し物品又は役務を提供することはできないと承知している。

九の(三)について

 仮に日米物品役務相互提供協定の改正が行われないとしても、お尋ねのような場合において、アメリカ合衆国軍隊は、アメリカ合衆国の国内法に基づき権限を付与されているときは、自衛隊により提供される物品又は役務を受領することができると承知している。

九の(四)について

 改正された協定第五条2にいう「施設の利用」とは、自衛隊又はアメリカ合衆国軍隊が、自らの施設を他方の要請に基づき一時的な利用に供することを指している。改正された協定第五条を含め、改正された協定に基づく自衛隊によるアメリカ合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供は、我が国の関連の法律に従って行われるものであり、武力攻撃事態等において、自衛隊がアメリカ合衆国軍隊に対し改正された協定にいう「施設の利用」を提供し得る根拠は、米軍行動関連措置法案第十条である。
 他方、武力攻撃事態等においては、必要に応じ、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第二条の規定に基づき、施設及び区域としてアメリカ合衆国軍隊に土地等が提供されることも想定される。
 なお、御指摘の日米地位協定第五条1及び3は、アメリカ合衆国によって、アメリカ合衆国のために又はアメリカ合衆国の管理の下に公の目的で運航される船舶及び航空機の我が国の港及び飛行場への出入りについて定めたものであり、お尋ねの件とは直接の関係はないものと考える。

九の(五)について

 防衛庁設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第五条第十三号の「所掌事務に係る装備品、船舶、航空機及び食糧その他の需品の調達、補給及び管理並びに役務の調達に関すること」である。

九の(六)について

 日米物品役務相互提供協定及び改正された協定に基づく物品及び役務の提供に係る要請、提供、受領及び決済並びに実施結果の報告については、日米物品役務相互提供の実施に関する訓令(平成八年防衛庁訓令第五十一号)等の定めるところにより、適切な管理が行われる。

十の(一)について

 武力紛争における戦闘の方法及び手段については、国際法上一定の制限が課されており、今国会に提出している第一追加議定書においても、戦闘の方法及び手段の制限について規定されているが、第一追加議定書の規定は、お尋ねの劣化ウラン弾の使用を含め特定の種類の兵器の使用について規律するものではないと解されている。

十の(二)について

 国際刑事裁判所に関するローマ規程の締結については、政府としては、現在、同規程の内容や各国における法整備の状況を精査するとともに、国内法令との整合性等について検討を行っているところである。

十一について

 今国会に提出している千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書U)(以下「第二追加議定書」という。)については、イラクは、現在、その締約国ではなく、第二追加議定書は、イラクにおいては適用される余地はないと考える。

十二の(一)について

 従来から申し上げているとおり、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという我が国の非核三原則については、武力攻撃事態等においてもこれを堅持する考えである。

十二の(二)について

 お尋ねの北朝鮮に係るものを含め、我が国をめぐる安全保障環境については、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する一方、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が国際社会の差し迫った課題となっており、我が国としても、我が国及び国際社会の平和と安定のため、日米安全保障体制を堅持しつつ、外交努力の推進及び防衛力の効果的な運用を含む諸施策の有機的な連携の下、総合的かつ迅速な対応によって、万全を期す必要があると考えている。

十二の(三)について

 運送事業者が指定公共機関として行う対処措置については、国民保護法案第七十一条、第七十九条及び第百三十五条第一項において所要の規定が設けられているが、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とする国民保護法案を根拠として、武器又は弾薬の輸送を行うことはない。したがって、運送事業者である当該指定公共機関が、国民の保護のための措置として、当該武器又は弾薬の輸送について協力を求められることはない。



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