衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十八年六月二十二日受領
答弁第三六五号

  内閣衆質一六四第三六五号
  平成十八年六月二十二日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員阿部知子君提出「国民保護法」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出「国民保護法」に関する質問に対する答弁書



一について

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)(平成十六年条約第十二号。以下「第一追加議定書」という。)第四十八条は、「紛争当事者は、文民たる住民及び民用物を尊重し及び保護することを確保するため、文民たる住民と戦闘員とを、また、民用物と軍事目標とを常に区別し、及び軍事目標のみを軍事行動の対象とする」と規定しており、この規定は、国際人道法の原則及び精神を踏まえたものであると考えられる。

二から四までについて

 軍事組織が住民の避難誘導等に当たるとしても、これが軍事行動から生ずる危険から住民を保護することを目的としたものであることを踏まえると、このような活動が、直ちに国際人道法に反しているとは言えないと考えている。
 また、第一追加議定書第五十一条7は、文民の移動等について、「特定の地点又は区域が軍事行動の対象とならないようにするために、特に、軍事目標を攻撃から掩護し又は軍事行動を掩護し、有利にし若しくは妨げることを企図して利用してはならない」と規定しているが、この規定は、軍事組織が住民の避難誘導等に当たること自体を禁じているわけではない。
 したがって、自衛官が避難住民の誘導等を行うことは、第一追加議定書を含めた国際人道法との関係で直ちに問題を生ずるものではないと考えている。
 なお、戦時国際法との関係については、お尋ねにおいて想定されている戦時国際法の内容等が明確ではなく、一概にお答えすることは困難である。

五及び六について

 第一追加議定書第四十八条では、紛争当事者は、「文民たる住民と戦闘員とを、また、民用物と軍事目標とを常に区別し、及び軍事目標のみを軍事行動の対象とする」との基本原則が規定されている。また、紛争当事者が攻撃を受ける側に立つ場合には、第一追加議定書第五十八条において、実行可能な最大限度まで、人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避けるといった攻撃の影響に対する予防措置をとる旨が定められている。
 もっとも、これらの規定にいう「軍事目標」は、第一追加議定書第五十二条2において、「物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であってその全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限る」と規定されており、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況下で判断する必要があるものである。また、第一追加議定書第五十八条の定める予防措置は、あくまでも紛争当事者が実行可能な最大限度までとるべきものである。
 いずれにせよ、実際に武力紛争が生じていない現時点においては、御指摘の自衛隊の諸施設及び在日米軍の諸施設の所在が第一追加議定書に違反しているということはない。

七について

 国際人道法には、武力紛争の影響を受ける住民の保護及び武力紛争の結果生じた傷病者、死者等の人道的取扱いに関する規定が含まれている。これらを的確に実施するために、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)では、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、安否情報の収集等、赤十字標章等の交付等及び特殊標章の交付等について規定し、国民保護法第三十二条第一項に規定する国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)においても、これらについて具体的な定めを設けている。
 また、基本指針に基づき作成される、指定行政機関、都道府県等の国民の保護に関する計画についても、これらについて所要の規定を設けているところである。

八について

 都道府県の国民の保護に関する計画において、全都道府県が、例えば、住民に対する避難の指示、避難住民の誘導に関する措置、都道府県の区域を越える住民の避難に関する措置その他の住民の避難に関する措置、救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置に関する事項を定めている。
 なお、これらの措置に関する事項は、国民保護法第三十四条第二項第二号の規定により、都道府県の国民の保護に関する計画に定める事項とされている。

九について

 第一追加議定書第五十九条2では、無防備地区の宣言を行うには、すべての戦闘員の撤退等の要件を満たす必要があるとされているところであるが、戦闘員の撤退等は、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第二条第七号イ(1)に掲げる武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動に関する事項である。
 したがって、無防備地区の宣言は、国民の生命、身体及び財産を保護する観点から国民保護法第二条第三項に規定する国民の保護のための措置に関連はあるものの、武力攻撃を排除するための措置との関連がより深いと考えられることから、事態対処法第九条第一項に規定する対処基本方針で定めることが適当と考えている。
 我が国に対する武力攻撃に対して無防備地区の宣言を行うこととなるか否か、また、宣言をすることとした場合に具体的にいかなる地域について宣言を行うのかについては、無防備地区が敵対する紛争当事者による占領に対して開放されるものであることを踏まえ、実際に武力攻撃が発生した後に、その時点の状況に応じて個別具体的に検討されるべきものであることから、無防備地区の宣言に関する事項を事態対処法第九条第二項第三号の対処措置に関する重要事項にどのように記述するかについても、実際に武力攻撃が発生した後に、その時点の状況に応じて個別具体的に検討すべきものであると考えている。



経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.