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平成二十年一月十一日受領
答弁第三七二号

  内閣衆質一六八第三七二号
  平成二十年一月十一日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員近藤昭一君提出「木曽川水系連絡導水路事業」の環境影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員近藤昭一君提出「木曽川水系連絡導水路事業」の環境影響に関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 御指摘の「1/20規模の渇水」が何を指すのかが必ずしも明らかではないが、平成十九年十一月六日に開催された第八回木曽川水系流域委員会(以下「第八回流域委員会」という。)で配布した資料−六−二において「異常渇水の発生頻度;過去100年間の全国の降雨状況をみると、年間降水量の最小値の更新が6〜8回程度生じていることから、平成6年規模の異常渇水が20年間に1回程度発生すると仮定。」と記載しているものを指しているのであれば、この「20」という数字は、単に百を六で除した値である十六・七の一の位を四捨五入した数字であり、渇水の発生確率を計算したものではない。先の答弁書(平成十九年六月二十二日内閣衆質一六六第三七八号。以下「先の答弁書」という。)二の(一)についてで述べたとおり、個々の渇水について統計学上の発生確率を計算することは困難であり、計算していない。

一の(2)について

 お尋ねの「理由」については、先の答弁書三の(四)についてで述べたとおりである。御指摘の「主軸にはなっていなかった」の趣旨が必ずしも明らかではないが、例えば、平成十九年七月三十一日に開催された第七十二回社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会で配布した資料二において「特に、平成6年に既往最大規模の渇水が発生し、市民生活・社会経済活動・河川環境等に甚大な被害を与えた」と記載している。また、第八回流域委員会で配布した資料−六−二において「平成6年の渇水では、木曽川の上流ダム群が枯渇し、河川流量がゼロを記録するなど、維持流量を大幅に下回る厳しい状態が約2ヶ月継続した。」と記載している。さらに、平成十九年十一月二十二日に開催された第九回木曽川水系流域委員会で配布した資料−三において「平成6年の渇水では、木曽川本川でも瀬切れが発生し、河川環境に深刻な影響を与えた。」等の記載をしているところであり、多くの機会をとらえて木曽川水系の異常渇水対応の必要性を説明している。

一の(3)の@及びAについて

 木曽川水系連絡導水路事業(以下「導水路事業」という。)は、異常渇水時に、徳山ダムに貯留されている緊急水毎秒十六立方メートルを導水路により一級河川木曽川水系木曽川(以下「木曽川」という。)に補給し、その一部である毎秒四立方メートルは一級河川木曽川水系長良川(以下「長良川」という。)を経由させることにより、木曽川木曽成戸地点(以下「木曽成戸地点」という。)における流量は木曽川上流ダム群(味噌川ダム、阿木川ダム及び新丸山ダムをいう。以下同じ。)による補給と相まって毎秒四十立方メートル、長良川忠節地点における流量は毎秒十一立方メートルを確保することとしている。これらにより、平成六年に木曽川で発生したような瀬切れが防止されること、木曽川の中流部のアユ等の産卵場で必要と考えられる流量が確保されること、平成六年に木曽川で発生したようなヤマトシジミの斃死等の現象が改善されること、平成六年に木曽川及び長良川で発生したような水質悪化が改善されること等河川環境の改善効果があると考えている。
 このような河川環境の改善効果及び導水路事業の必要性・妥当性については、これまで国土交通省が実施してきた調査のうち結果が取りまとめられたものについて、岐阜県、愛知県、三重県、名古屋市等により構成される「徳山ダムに係る導水路検討会」、木曽川水系流域委員会等において説明し、また、広く公表しているところである。
 なお、更に必要となる環境調査等については、引き続き行う予定である。

一の(4)の@の(ア)及び(イ)並びにAについて

 木曽成戸地点においては、関係行政機関により構成される木曽三川協議会が昭和四十年に決定した木曽三川水資源開発計画等に基づき、新規の利水における取水や上流のダムでの貯留をその流量の超過分の範囲内とする基準流量を毎秒五十立方メートルに設定してきており、この運用の下での木曽成戸地点下流における河川環境の保全に関してヤマトシジミの生息に関する検討を行った。御指摘の「グラフ」は、木曽川大堰からの放流量と塩素イオン濃度の関係を示したものであり、木曽成戸地点の流量がおおむね毎秒五十立方メートル以上であれば、ヤマトシジミの生息に悪影響を及ぼさないと考えられる塩素イオン濃度を満足できていることを確認したものである。
 木曽川水系河川整備基本方針の検討に当たっては、これらも踏まえ、毎秒五十立方メートルを木曽成戸地点での維持流量としたものである。
 なお、御指摘の「「57m3/s必要と思われる」となっている」が何を指すのかが必ずしも明らかではないが、御指摘の「グラフ」に毎秒五十七立方メートルとの記載はあるものの、同ページにおいて「必要な流量は概ね50m3/s以上であることを確認した。」としている。また、ヤマトシジミの生息環境については、引き続きデータの蓄積を図ることとしている。
 また、木曽成戸地点における維持流量である毎秒五十立方メートルの確保に当たっては、木曽川上流ダム群で毎秒四十立方メートルの流量を確保し、毎秒五十立方メートルとの差分の毎秒十立方メートルについては、既得用水の合理化で対応することとしている。
 導水路事業については、異常渇水時に、徳山ダムに貯留されている緊急水を導水路により木曽川に補給し、その一部は長良川を経由させることにより、木曽成戸地点において木曽川上流ダム群による補給と相まって毎秒四十立方メートルの流量を確保することとしている。

一の(4)のBについて

 平成六年に木曽川で発生したようなヤマトシジミの斃死等の現象が改善されることの他にも、一の(3)の@及びAについてで述べたような導水路事業による河川環境の改善効果があると考えている。

一の(5)について

 長良川河口堰(以下「堰」という。)の建設により、堰上流域では堰運用後は淡水化するため、ヤマトシジミは繁殖できなくなること、また、堰下流域においては長良川の流下能力を向上させるために実施するしゅんせつの影響を受ける区域でヤマトシジミの漁獲量が減少することが予測されたことから、関係の漁業組合と十分話し合った上で、適正に漁業補償を行ったものである。

二の(1)の@について

 御指摘の「名古屋市工業用水」については、渇水時のみならず平常時においても長良川を経由して木曽川に導水する予定である。

二の(1)のAについて

 ダムの貯水池では、水質及び水温は季節及び時間に応じ、また、水深により変化するため、貯水池の水質及び水温分布に応じて取水し放流する選択取水は、下流の河川環境に極力支障を与えないように放流を行うための有効な方法であると考えている。例えば、一級河川淀川水系猪名川の一庫ダムでは、ダム完成以降、選択取水を行うことにより、適切な水温層から取水し、貯水池に流入する水温とほぼ同じ水温の水をダム下流へ放流しており、河川環境に特段の支障を与えていないと考えている。

二の(2)及び三の(1)について

 一の(3)の@及びAについてで述べたとおり、導水路事業は木曽川及び長良川の河川環境の改善のために実施するものであるが、導水路事業が生態系に与える影響に関しては、これまで行った水質、動植物等についての現地調査等の分析を行い、必要とされる調査を引き続き実施するとともに、学識経験者による意見等を踏まえながら、今後、検討してまいりたい。

二の(3)について

 導水路事業の実施により、長良川における漁業に著しい損失が生じることは現段階では想定していないことから、導水路事業に係る事業費に漁業補償に要する費用は見込んでいない。なお、導水路事業が漁業に与える影響については、必要に応じて今後検討してまいりたい。

三の(2)の@について

 国土交通省が平成十四年度から平成十六年度までに実施した「河川水辺の国勢調査」(以下「国勢調査」という。)においては、木曽川のダム貯水池を除く直轄管理区間における特定外来生物(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成十六年法律第七十八号)第二条第一項に規定する特定外来生物をいう。以下同じ。)は、魚類についてはブルーギル及びオオクチバス、底生動物についてはカワヒバリガイ及びコウロエンカワヒバリガイ、植物についてはアレチウリ、オオフサモ及びオオキンケイギク、両生類についてはウシガエル、哺乳類についてはヌートリア及びアライグマを確認しており、長良川の直轄管理区間における特定外来生物は、魚類についてはカダヤシ、ブルーギル及びオオクチバス、底生動物についてはカワヒバリガイ及びコウロエンカワヒバリガイ、植物についてはアレチウリ、オオフサモ、オオキンケイギク及びオオカワジシャ、両生類についてはウシガエル、哺乳類についてはヌートリア及びアライグマを確認しており、一級河川木曽川水系揖斐川(以下「揖斐川」という。)のダム貯水池を除く直轄管理区間における特定外来生物は、魚類についてはカダヤシ、ブルーギル及びオオクチバス、底生動物についてはカワヒバリガイ、植物についてはアレチウリ、オオフサモ及びオオキンケイギク、両生類についてはウシガエル、哺乳類についてはヌートリア及びアライグマを確認している。
 また、国土交通省が平成十三年度から平成十五年度までに実施した国勢調査においては、揖斐川に設置する木曽川水系連絡導水路の取水口の上流に位置する横山ダム貯水池で、特定外来生物を確認していない。

三の(2)のAについて

 三の(2)の@についてで述べたとおり、揖斐川に設置する木曽川水系連絡導水路の取水口の上流に位置する横山ダム貯水池ではこれまで特定外来生物を確認していないが、導水路事業における特定外来生物の拡散・侵入への対策については、その必要性も含め、導水路事業に伴い実施する調査の結果等を踏まえて検討してまいりたい。



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