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平成二十三年十一月二十五日受領
答弁第五六号

  内閣衆質一七九第五六号
  平成二十三年十一月二十五日
内閣総理大臣 野田佳彦

       衆議院議長 横路孝弘 殿

衆議院議員塩川鉄也君提出八ッ場ダムの費用対効果に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員塩川鉄也君提出八ッ場ダムの費用対効果に関する質問に対する答弁書



一の1のア、ウ及びオについて

 国土交通省関東地方整備局が平成二十三年十月六日に公表した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」(以下「報告書(素案)」という。)における費用対効果の検討に当たって算定した八ッ場ダム建設事業の洪水調節による年平均被害軽減期待額は、「治水経済調査マニュアル(案)」(平成十七年四月一日付け国河計調第二号国土交通省河川局河川計画課長通知。以下「マニュアル」という。)に従って、各氾濫ブロックについて、流量規模ごとに、八ッ場ダム建設事業を実施した場合と実施しない場合における洪水氾濫による想定被害額の差である被害軽減額と当該流量規模に係る年超過確率を用いて、当該氾濫ブロックの年平均被害軽減期待額を算定した上で、それらを合算して求めている。
 なお、想定被害額は、氾濫ブロックにおいて、その無害流量を超えた場合に、当該氾濫ブロックについて、被害が最大となる一地点において堤防が決壊するなど一定の想定の下に算定している。一方、実際の被害は、水防活動の状況、堤防内部の構成材料等の様々な要因が複雑に関連した結果生じるものであることから、想定被害額と実際の被害額は、単純に比較できるものではないと考えている。

一の1のイについて

 お尋ねの場合における想定被害額は、報告書(素案)における費用対効果の検討に当たって算定した八ッ場ダム建設事業を実施しない場合における、年超過確率一分の一から五十分の一までの洪水が生起した場合の流量規模ごとの想定被害額に、当該流量規模に係る年超過確率を用いて算出した額を合算して求めると、約四千八百二十億円である。

一の1のエについて

 お尋ねの昭和三十六年から平成二十一年までの四十九年間における利根川水系の累積の水害被害額は、「治水経済調査マニュアル(案)各種資産評価単価及びデフレーター」(平成二十三年二月改正)を用いて平成十七年時点の価格に換算すると、約八千六百四十二億円である。

一の2のアについて

 御指摘については、一の1のア、ウ及びオについてでお答えしたとおり、想定被害額と実際の被害額は、単純に比較できるものではないと考えているが、国土交通省においては、会計検査院の指摘を踏まえ、年平均被害軽減期待額の算定方法について、最新のデータを踏まえた浸水深別の被害率の検討等の処置を講じているところである。

一の2のイについて

 お尋ねについては、昭和二十六年以降の最近六十年間、一級河川利根川水系利根川本川の八斗島下流部及び一級河川利根川水系江戸川本川において破堤した箇所はない。

一の2のウについて

 お尋ねについては、マニュアルにおける評価手法をより良いものとするため、学術論文等の収集及び分析を行うなど、技術的な知見の集積に努めているところである。

一の2のエについて

 お尋ねの治水安全度について、現在の整備水準で対応できるものと認識している流量規模を年超過確率を用いてお示しすると、一級河川利根川水系利根川の八斗島地点を含む一連の区間ではおおむね三十分の一から四十分の一である。

一の3のアについて

 国土交通省が平成二十年三月及び平成二十一年三月に八ッ場ダム建設事業の再評価(以下単に「再評価」という。)を行うに当たって前提とした費用対効果の算定における洪水調節に係る便益は、それぞれ約八千二百七十六億円、約一兆三百四十四億円である。

一の3のイについて

 お尋ねについては、国土交通省が平成二十年三月及び平成二十一年三月に再評価を行うに当たって前提とした費用対効果の算定における洪水調節に係る便益の算定においては、利根川水系工事実施基本計画における八斗島地点の計画高水流量から基本高水のピーク流量の部分に係る年平均被害軽減期待額を八斗島地点の上流のダム等における洪水調節に係る便益としていたが、報告書(素案)における費用対効果の算定における洪水調節に係る便益の算定においては、八斗島地点の計画高水流量より小さな流量である毎秒一万六千五百立方メートル以下の部分に係る年平均被害軽減期待額についても、八斗島地点の上流のダム等における洪水調節に係る便益に含めたことによるものである。

一の3のウについて

 国土交通省が平成二十年三月及び平成二十一年三月に再評価を行うに当たって前提とした費用対効果の算定における八ッ場ダムの洪水調節に係る便益は、平成十五年十二月の再評価において算定した方法を踏襲して算定したものである。なお、洪水調節に係る便益から八斗島地点の計画高水流量より小さな流量の部分に係る年平均被害軽減期待額を除外していた理由については、平成十五年度当時の詳細な資料がないことから、お答えすることは困難である。

一の3のエについて

 八斗島地点の計画高水流量より小さな流量の部分に係る年平均被害軽減期待額を除外した場合の八ッ場ダムの洪水調節に係る便益は、約七千三百三十七億円である。

一の3のオについて

 報告書(素案)における費用対効果の算定において、八斗島地点の計画高水流量より小さな流量の部分に係る年平均被害軽減期待額を八ッ場ダムの洪水調節に係る便益に含めたことは、八ッ場ダム建設事業を実施した場合と実施しない場合における洪水氾濫による想定被害額の差を算定するために行ったものであり、御指摘の「いっさい現況の堤防が強化・拡幅されない」ということを意味するものではない。

一の3のカについて

 国土交通省が平成二十一年三月に再評価を行うに当たって前提とした費用対効果の算定における八ッ場ダムの洪水調節に係る便益に、八斗島地点の計画高水流量より小さな流量の部分に係る年平均被害軽減期待額を含めた場合の洪水調節に係る便益は、約四兆四千五百五十九億円である。また、平成二十年三月の再評価においては、お尋ねのような計算は実施しておらず、お答えすることは困難である。

二の1のアについて

 国土交通省関東地方整備局が平成二十三年八月に実施した「吾妻峡に「水を流す取組」に関するアンケート調査」(以下「アンケート調査」という。)は、渇水時の一級河川利根川水系吾妻川の景観改善のために必要な同川の維持流量を八ッ場ダムから補給する場合の景観改善の効果に着目し、その便益を算定するために実施したものであり、アンケート調査の項目については、当該便益の算定に資するものを設定したものである。

二の1のイからエまでについて

 抵抗回答とは、調査票に提示される仮想的市場について、支払意思額の徴収の仕方等に抵抗を感じるために「支払わない」と回答するものであり、アンケート調査においては、「世帯から負担金を集めるという仕組みに反対だから」、「これだけの情報では判断できない」等の回答が相当する。抵抗回答を含む調査票は、吾妻峡に水を流す取組を実施する場合と実施しない場合の効用の変化と支払額を比較して「支払わない」と回答したものではないことから、支払意思額の推定に用いる標本から除外している。
 一方、「たとえ支払いがなくても、この取組を行わない方がよいと思うから」等の理由から「支払わない」と回答したものについては、その支払意思額を零円とし、支払意思額の推定に用いる標本に含めて便益を算定していることから、「便益がひどく過大に計算されている」との御指摘は当たらないと考える。
 なお、便益の集計範囲は吾妻峡から五十二キロメートル圏内ではなく、五十キロメートル圏内としている。

二の1のオについて

 抵抗回答の内訳は、「世帯から負担金を集めるという仕組みに反対だから」という回答が百三票、「これだけの情報では判断できない」という回答が九十一票、その他が八票である。

二の2のアについて

 お尋ねについては、東京電力株式会社から水利権の許可の更新についての申請を受けていない現時点において、お答えすることは困難である。



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