答弁本文情報
平成二十三年十二月十三日受領答弁第九八号
内閣衆質一七九第九八号
平成二十三年十二月十三日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員宮本岳志君提出東日本大震災被災者の奨学金債務の返済免除に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員宮本岳志君提出東日本大震災被災者の奨学金債務の返済免除に関する質問に対する答弁書
一について
「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)は、金融界や経済界等の関係者、学識経験者等で構成される研究会において、個人である債務者の私的整理に関する金融機関関係団体の自主的自律的な準則として策定されたものであり、その解釈はガイドラインの運営を担うために一般社団法人全国銀行協会により設立された一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会(以下「運営委員会」という。)において示されるべきものであるところ、運営委員会によれば、独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)に対する奨学金の返還に係る債務はガイドラインによる債務整理の対象となり得るとされているものと承知している。
ガイドラインにおいては、ガイドラインによる債務整理の対象となり得る債務者は、「住居、勤務先等の生活基盤や事業所、事業設備、取引先等の事業基盤などが東日本大震災の影響を受けたことによって、住宅ローン、事業性ローンその他の既往債務を弁済することができないこと又は近い将来において既往債務を弁済することができないことが確実と見込まれること。」、「弁済について誠実であり、その財産状況(負債の状況を含む。)を対象債権者に対して適正に開示していること。」、「東日本大震災が発生する以前に、対象債権者に対して負っている債務について、期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと。ただし、当該対象債権者の同意がある場合はこの限りでない。」、「このガイドラインによる債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること。」などの要件を備える個人である債務者とされている。
ガイドラインによる債務整理を行うための手続については、その対象となり得る債務者において、対象債権者に対し、債務整理の申出、弁済計画案の提出、運営委員会が弁済計画案の合理性等を確認して作成した報告書の提出等を行うこととされている。その後、対象債権者全員が当該弁済計画案に同意した場合には、弁済計画が成立し、債務者は当該弁済計画を実行する義務を負担し、対象債権者の権利は、当該弁済計画の定めに従って変更されることとされていると承知している。
なお、これらの手続に当たっては、債務者において必要に応じ運営委員会の支援を受けることができることとされている。
機構に対する奨学金の返還に係る債務について、機構に対してガイドラインによる債務整理の申出があったのは、平成二十三年十二月一日時点で一件であり、現在手続が行われていると承知している。
文部科学省としては、機構に対して、機構に対する奨学金の返還に係る債務がガイドラインによる債務整理の対象となり得ることについて、機構のホームページへ掲載するよう促し、当該ホームページに掲載されるに至っている。今後は、機構において大学等の担当者に対し奨学業務連絡協議会等を通じて説明を行うことにより、周知を図ることとしていると承知している。
運営委員会は一般社団法人全国銀行協会により設立された一般社団法人であり、そのホームページの内容については、運営委員会において検討されるべきものと考えている。
機構が行う奨学金事業は、返還金を再度奨学金事業の原資とすることで、より多くの学生等への奨学金の貸与を行うこととしており、御指摘のような機構に対する奨学金の返還に係る債務の免除を行うことについては、財源の確保等の観点から困難である。なお、災害又は疾病により奨学金を返還することが困難となった場合等には、機構において、その事由が継続する期間、返還の期限を猶予しているほか、一定期間割賦金の額を減額して返還することができることとしている。また、東日本大震災の被災者等については、返還の期限の猶予に係る申請手続の簡素化を図るなど、債務者の負担軽減に取り組んでいるところである。