答弁本文情報
平成三十年五月十八日受領答弁第二八三号
内閣衆質一九六第二八三号
平成三十年五月十八日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員山井和則君提出高度プロフェッショナル制度のリスクへの認識と辞退の手続きに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員山井和則君提出高度プロフェッショナル制度のリスクへの認識と辞退の手続きに関する質問に対する答弁書
一及び十二について
いわゆる高度プロフェッショナル制度については、労働者の同意を要件としているが、当該同意は撤回することができるものである。同意を撤回する際の手続等については、今後検討することとしている。
いわゆる高度プロフェッショナル制度の適用要件は、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」に従事し、「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額・・・の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上である」こと等としており、これらの要件に該当する場合に限り同制度を適用することができる。
お尋ねの「高所得者や年収千万円以上の労働者は過労死しにくい、という調査結果」及び「年収や給与と長時間労働や過労死のリスクにどのような相関関係がある」かについては承知していない。また、お尋ねの「年収や給与と長時間労働や過労死のリスクについての調査」については、厚生労働省においては行っておらず、「同種の調査」があることは承知していない。
なお、いわゆる高度プロフェッショナル制度の年収要件については、労働条件に関する一定の交渉力を有していると考えられる者として「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額・・・の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上である」こととしているところである。
いわゆる高度プロフェッショナル制度の年収要件については、「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額・・・の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上である」こととしている。具体的な年収額については、平成二十七年二月に労働政策審議会において取りまとめられた今後の労働時間法制等の在り方について(建議)において、「労働基準法第十四条に基づく告示の内容(千七十五万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である」とされているところであり、これを踏まえて労働政策審議会において議論していただき、厚生労働省令で定めることとしている。
いわゆる高度プロフェッショナル制度の検討過程において、研究職やコンサルタント等、専門的な職業に従事する様々な方からその御意見を伺ったところである。その御意見等の詳細については、公表を前提としたものではなく、お答えすることは差し控えたいが、いずれにしても、同制度については、労働政策審議会における公労使の議論を経て答申されたものである。
いわゆる高度プロフェッショナル制度についての労働政策審議会労働条件分科会における議論において、労働者側委員から、同制度について、長時間労働となるおそれがある旨の意見があり、そのような事態が生じないよう、同制度においては、「健康管理時間・・・を把握する措置・・・を・・・使用者が講ずること」、「一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を・・・使用者が与えること」、さらに、労働者の健康を確保するための措置を使用者が講ずることなど、労働者の健康を確保するための様々な措置を講ずることとしている。
お尋ねの「年収要件を引き下げて、対象者を拡大する改正」は、現時点では考えていない。
お尋ねについては、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)による保険給付の支給の決定に当たり、被災労働者の年収を確認していないため、把握していない。
個別の過労死等事案については個人情報保護の観点から公表しないこととしている。なお、いわゆる高度プロフェッショナル制度の対象労働者に係る過労死の件数の集計及び公表については、今後、検討していく考えである。
いわゆる高度プロフェッショナル制度においては、使用者は、「同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと」について決議(今国会に提出している働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案による改正後の労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第四十一条の二第一項の規定による決議をいう。以下同じ。)をし、当該決議を行政官庁に届け出なければならないこととしており、使用者が「同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱い」をした場合には、労働基準監督機関による監督指導の対象となる。
お尋ねの「実態」については、行政官庁が、決議が届け出られたときや事業場に対して監督を実施するとき等に把握することとなる。
また、「労働者の実態は、企業ごとに公表されますか」とのお尋ねについては、現時点では未定である。
「精神障害の業務起因性判断のための調査について、調査の復命日から支給決定までの平均的な期間は、どの程度ですか」とのお尋ねについては、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、東京労働局の管轄区域内の労働基準監督署において平成二十九年度に労働者災害補償保険法による保険給付の支給の決定を行った過労死等事案の平均的な期間について申し上げれば、八・一日である。