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答弁本文情報

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平成三十年六月十九日受領
答弁第三七四号

  内閣衆質一九六第三七四号
  平成三十年六月十九日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員長島昭久君提出国際法上の交戦者の権利・義務に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長島昭久君提出国際法上の交戦者の権利・義務に関する質問に対する答弁書



一及び三について

 一般国際法上、「交戦権」については、確立した定義があるとは承知していないが、一般に、戦争自体が国家政策の遂行手段の一つとして認められていた伝統的な戦時国際法の下において、国家が「交戦国」として有する国際法上の諸権利を指すと考えられている。しかしながら、武力の行使が原則的に禁止され、国際法上戦争が違法化された国連憲章の下においては、戦争が違法ではないことを前提とした伝統的な意味での「交戦権」をそのままの形で適用することはできないと考えている。その上で、各紛争当事国は、個別の事例ごとにおける国際法上の根拠に基づき、その認める範囲内で、従来であれば「交戦権」の行使として認められていた措置をとることが可能であるが、当該措置の態様がいかなるものになるかについては、具体的な状況に応じて異なると考えられるため、一概に述べることは困難である。

二について

 お尋ねの「交戦状態の権利(rights of belligerency)」及び「交戦者の権利(belligerent's right)」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般国際法上の「交戦権」については、一及び三についてでお答えしたとおりである。

四の1について

 お尋ねは、戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約(昭和二十八年条約第二十三号、第二十四号、第二十五号及び第二十六号。以下「ジュネーヴ諸条約」という。)及び千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(平成十六年条約第十二号。以下「第一追加議定書」という。)における捕虜に関する規定に関するものであると考えられるところ、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)に基づく我が国の国際連合平和維持活動への参加は、同法第三条第一号イ、ロ又はハに規定する場合に行われるものであり、かつ、同法第六条第十三項第一号、第二号又は第三号に掲げる場合には国際平和協力業務を中断し、又は国際平和協力隊の派遣を終了することとしていることから、国際連合平和維持活動のために実施される国際平和協力業務を行っている自衛隊の部隊等又は自衛隊派遣隊員が当該活動が行われる地域の属する国又は紛争当事者から国際的な武力紛争の一環として行われる攻撃等を受けて、当該部隊等に所属する自衛隊員又は当該自衛隊派遣隊員が捕らえられ、ジュネーヴ諸条約及び第一追加議定書上の捕虜となる事態は想定されない。
 万が一、自衛隊員が外国等に不法に身柄を拘束された場合には、政府としては、当該自衛隊員の即時解放を強く求めていくこととなる。また、解放されるまでの間は、その身柄は、少なくとも、普遍的に認められている人権に関する基準並びに国際人道法の原則及び精神に従って取り扱われるべきであることは当然であると考えている。

四の2について

 お尋ねの「交戦権がないことを理由に、捕虜を適正に待遇していないと見られる恐れ」の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国は、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(昭和二十八年条約第二十五号)その他の捕虜等の取扱いに係る国際人道法の的確な実施を確保するため、武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律(平成十六年法律第百十七号)を定めており、捕虜等の取扱いに当たっては同法に基づき適切に対応することとしている。

五について

 お尋ねの「合法的交戦者の権利(right of lawful belligerent)」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
 いずれにせよ、我が国は、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)第十一条により、極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しており、国と国との関係において、同裁判について異議を述べる立場にない。

六について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、憲法第九条の規定の趣旨については、諸外国に対して、様々な機会を捉えて、説明してきている。

七について

 お尋ねの「交戦者」及び「戦闘員」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

八について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、仮に「交戦国」に対して一定の義務を負う国家としての「中立国」の義務についてのお尋ねであれば、当該「中立国」という概念は、戦争自体が国家政策の遂行手段の一つとして認められていた伝統的な戦時国際法の下で発達したものであり、武力の行使が原則的に禁止され、国際法上戦争が違法化された国連憲章の下においては、戦争が違法ではないことを前提としたこのような概念は、現在では用いられなくなっている。

九について

 お尋ねの「わが国のこのような解釈に拘束されない他国」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国内法による制約を別として、国際法上の観点からは、一及び三についてでお答えしたとおり、各紛争当事国は、個別の事例ごとにおける国際法上の根拠に基づき、その認める範囲内で、従来であれば「交戦権」の行使として認められていた措置をとることが可能であると考えている。



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