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平成三十年七月二十七日受領
答弁第四七三号

  内閣衆質一九六第四七三号
  平成三十年七月二十七日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員井出庸生君提出我が国の平和主義と自衛隊の国連PKOへの派遣に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員井出庸生君提出我が国の平和主義と自衛隊の国連PKOへの派遣に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘の平成二十八年五月十八日の国家基本政策委員会合同審査会における安倍内閣総理大臣の発言は、自由民主党の憲法改正草案についてのものであり、政府として当該発言に関するお尋ねにお答えする立場にないが、憲法の基本原則の一つである平和主義については、憲法前文第一段における「日本国民は・・・政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」の部分並びに憲法前文第二段における「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」及び「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」の部分がその立場に立つことを宣明したものであり、憲法第九条がその理念を具体化した規定であると解している。また、御指摘の平成二十七年八月十四日に閣議決定された内閣総理大臣談話については、当該談話全体としてのメッセージが重要であり、その一部分だけを切り取って議論することは適切ではないと考える。

二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号。以下「法」という。)に基づく武器の使用の要件等については、法第二十五条及び第二十六条に定めるとおりである。なお、御指摘の「駆け付け警護」は、法第三条第五号に規定する国際平和協力業務であって同号ラに掲げるものを指すものと理解しているが、当該業務を行うに際しての武器の使用について、法第二十六条第二項において「第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務であって第三条第五号ラに掲げるものに従事する自衛官は、その業務を行うに際し、自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第六条第二項第二号ホ(2)及び第四項の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる」と規定し、同条第三項において同条第二項の規定による「武器の使用に際しては、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない」と規定しているのは、当該武器の使用がいわゆる警察比例の原則に基づくものであることを明らかにしたものである。

三について

 法上、「武力紛争」を定義した規定はないが、政府としては、国家又は国家に準ずる組織の間に生ずる武力を用いた争いが法上の「武力紛争」に当たると解しており、一般に、実力を用いた争いが法上の「武力紛争」に該当するか否かについては、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断すべきものであると考えている。
 その上で、「我が国政府は、自衛隊の活動を基本的には続行させるものと考えるが、この理解で良いか」とのお尋ねについては、一般論としては、法第六条第十三項第一号から第八号までに掲げる場合に該当することとなった場合には、法第八条第一項(第六号)の規定に基づき作成した実施要領に従って国際平和協力業務を中断することとなり、さらに、当該業務に従事する者の海外への派遣の終了に係る実施計画の変更をすることが必要であると認めるとき、又は適当であると認めるときは、法第六条第十三項の規定に基づき実施計画の変更を閣議により決定し、当該派遣を終了することとなる。
 また、我が国として国際連合平和維持隊に参加するに際しての基本的な五つの原則が満たされなくなったことを理由とするものではなくても、現地の情勢悪化等を受け、政府として我が国要員の安全を確保しつつ意義のある活動を行うことが困難であるとの認識に至った場合には、国際連合等との調整を経て、我が国要員の派遣を終了することもある。

四の1について

 法第三条第五号に規定する国際平和協力業務であって同号ラに掲げるものは、同号ヲからネまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとして同号ナの政令で定める業務を行う場合であって、国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者(以下「活動関係者」という。)の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護を目的として実施するものであると考えている。
 また、御指摘の「宿営地の共同防護」は、法第二十五条第七項の規定に基づき行われる同条第三項の規定による武器の使用を指すものと理解しているが、当該武器の使用が可能となることにより、平素から他国と共に訓練を行うことができ、緊急の場合の他国との意思疎通や協力も円滑になることから、宿営地(法第二十五条第七項に規定する宿営地をいう。)全体としての安全性を高めることになり、自衛隊の部隊に対するリスクの低減に資すると考えている。

四の2について

 お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにせよ、法第三条第五号ラ及び第二十五条第七項の規定を設けた趣旨は、四の1についてでお答えしたとおりである。

四の3について

 政府部内の検討過程における詳細についてお答えすることは差し控えたいが、四の1についてでお答えしたとおり、法第三条第五号に規定する国際平和協力業務であって同号ラに掲げるものは、同号ヲからネまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとして同号ナの政令で定める業務を行う場合であって、活動関係者の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護を内容とするものであるところ、南スーダン国際平和協力業務において同号ツに掲げる業務等を行っていた陸上自衛隊の南スーダン派遣施設部隊に同号ラに掲げる業務も行わせることとしたものである。

五について

 一般に、過失により人を死亡させた場合には、刑法(明治四十年法律第四十五号)の過失致死罪又は業務上の過失致死罪の成立が考えられるが、これらの罪については、同法上国外犯処罰規定が設けられていないところであり、「法の空白」との御指摘は当たらない。自衛官による武器の使用については、法令を遵守して適切に実施されることとなるよう、厳しい教育訓練を行っていることから、お尋ねのような「現地で民間人を誤射、死亡させてしまうような事態」は、極めて想定しにくいものと考えている。
 その上で、それ以上の仮定を前提としたお尋ねについてお答えすることは差し控えたいが、いずれにせよ、政府としては、個別具体的な事案の状況に応じ、適切に対応する考えである。

六の1及び3並びに七の2について

 一般に、国際連合平和維持活動等への我が国の参加の検討に当たっては、憲法及び法の枠内で行われるべきこと、我が国国内の支持を受けるものであり、また、国際社会からも評価されるものであること、現地の事情に合わせて要員の派遣が効果的かつ安全に行われるため万全の支援体制を整え得ること、我が国が適切に対応することが可能な分野であること等の観点から、現地調査の結果、国際連合や関係国際機関等の意向等を十分踏まえ、総合的に判断することとしている。
 政府としては、今後とも、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、国際社会において、これまでの国際連合平和維持活動等への協力の実績の上に立ち、我が国の強みを生かし、能力構築支援の強化、部隊及び個人の派遣など、国際平和協力分野において一層積極的に貢献していく考えである。

六の2について

 御指摘の「憲法第九条の平和主義との乖離が法的に拡大し」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにせよ、国際連合平和維持活動等への我が国の参加については、憲法及び法の枠内で行うものである。

七の1について

 御指摘の「国連PKO予算」に対する米国政府の姿勢等について、政府として認識を述べる立場にない。



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