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答弁本文情報

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令和四年六月二十四日受領
答弁第一五〇号

  内閣衆質二〇八第一五〇号
  令和四年六月二十四日
内閣総理大臣 岸田文雄

       衆議院議長 細田博之 殿

衆議院議員足立康史君提出憲法第九条の解釈に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員足立康史君提出憲法第九条の解釈に関する質問に対する答弁書


一について

 お尋ねの「いわゆる芦田修正論」については、平成二十六年五月二十九日の参議院外交防衛委員会において、安倍内閣総理大臣(当時)が「確立された定義があるわけではないというふうに承知をしておりますが、一般に、憲法第九条第一項はいわゆる侵略戦争を放棄していると解釈した上で、第二項は、「前項の目的を達するため、」、すなわち侵略戦争を放棄するために戦力の不保持を定めているとし、侵略戦争ではない自衛のための、あるいは集団安全保障のための実力の保持や武力の行使には制限はないとする考え方である」と述べたとおりである。

二について

 お尋ねについては、平成二十七年八月二十五日の参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、安倍内閣総理大臣(当時)が「昨年五月十五日に提出をされました安保法制懇の報告書では、二つの異なる考え方を示していただきました。一つは、芦田修正の経緯に着目し、個別的か集団的かを問わず自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないとする考え方であります。しかし、この考え方はこれまでの政府の憲法解釈と論理的に整合しないわけでありまして、私は、憲法がこうした活動の全てを許しているとは考えていません。したがって、この考え方、いわゆる芦田修正論は政府としては採用できないと判断いたしました。報告書のもう一つの考え方は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方であります。この考え方は、従来の政府の基本的な立場を踏まえたものであります。このため、私は、報告書の提出後直ちに、前者の芦田修正を踏まえた考え方は採用せず、後者の従来の憲法解釈との整合性を踏まえた考え方について今後更に研究を進めていくという基本的な方針を指示しました。」と述べたとおりである。

三及び四について

 従来からの憲法第九条に関する政府の解釈は、御指摘の「基本的な論理」で示されているように、憲法第九条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第十三条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されず、一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される、というものである。
 その上で、同条第二項の「前項の目的を達するため」という言葉は、同条第一項全体の趣旨、すなわち、同項では国際紛争を解決する手段としての戦争、武力による威嚇、武力の行使を放棄しているが、自衛権は否定されておらず、自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められているということを受けていると解している。したがって、同条第二項は「戦力」の保持を禁止しているが、このことは、自衛のための必要最小限度の実力を保持することまで禁止する趣旨のものではなく、これを超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであると解している。
 このような政府の憲法解釈と、一についてで述べた「侵略戦争ではない自衛のための、あるいは集団安全保障のための実力の保持や武力の行使には制限はない」とする「いわゆる芦田修正論」は論理的に整合しないことから、政府として「いわゆる芦田修正論」を採用することはできないと考えている。

五について

 一般論として、憲法をはじめとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。
 その上で、御指摘の「基本的な論理」については、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)において「この基本的な論理は、憲法第九条の下では今後とも維持されなければならない。」としているところである。

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