答弁本文情報
令和七年三月二十五日受領答弁第一〇七号
内閣衆質二一七第一〇七号
令和七年三月二十五日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員原口一博君提出レプリコンワクチン開発における政府の対応等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員原口一博君提出レプリコンワクチン開発における政府の対応等に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「メーカー」に対しては、「ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領」(令和二年六月二十九日付け健発〇六二九第二十六号厚生労働省健康局長通知別添)で定める「ワクチン生産体制等緊急整備事業」による、「令和四年度ワクチン生産体制等緊急整備事業【第四次公募】公募要項」(令和四年十月厚生労働省健康局作成)に基づき、「レプリコンワクチン」に係る「有効性を検証する大規模臨床試験等の実証的な研究を行うために必要な経費」に対して、二で御指摘の「ワクチン生産体制等緊急整備基金」(以下「基金」という。)から、令和四年度及び令和五年度に、それぞれ、二十二・五億円及び三十九・八億円の助成金が交付されている。
二について
令和六年度の新型コロナウイルス感染症に係る予防接種に使用するワクチン(以下「新型コロナワクチン」という。)の予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第五条第一項の規定による定期の予防接種(以下「定期の予防接種」という。)におけるワクチンの確保に対する基金から市町村への助成金については、令和七年二月二十八日の衆議院財務金融委員会において、仁木厚生労働副大臣が「新型コロナワクチン定期接種の自治体助成事業は、国民の保健衛生の向上に寄与するという基金の要綱等の事業目的の範囲内で実施しているもの」と答弁しているとおりであり、基金で実施する事業については、「自治体助成事業」より前から、「令和二年度新型コロナウイルスワクチン等生産体制整備臨時特例交付金交付要綱」(令和二年六月二十九日付け厚生労働省発健〇六二九第五号厚生労働事務次官通知別紙)や「ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領」等に基づき、「新型コロナウイルスワクチン等の生産体制を整備し、・・・国民の保健衛生の向上に寄与する」との基金の目的や趣旨を踏まえ、新型コロナワクチンの「生産体制整備」に係る事業や「治療薬確保等事業」等のほか、新型コロナワクチンを安定的に確保し、その接種が実施されるよう、令和五年度末までの感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(令和四年法律第九十六号)による改正前の予防接種法附則第七条第一項の規定による新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に当たり、「国との間で国内供給計画・・・について協議が整った法人を対象とする」「国内外のワクチンの確保及び安定的な国内供給に向けた環境整備事業」として、助成金が交付されてきたところ、令和六年度から、新型コロナワクチンの予防接種が、市町村が自らワクチンを確保し実施する定期の予防接種となることに伴い、引き続き、新型コロナワクチンを安定的に確保し、その接種を希望する方が安心して接種を受けられるよう、市町村を支援することとし、ワクチンの確保に対する助成金を交付する事業として、市町村を対象とする「自治体助成事業」を追加したものである。このため、基金からの当該助成金の交付は、御指摘のように「基金の目的外使用」ではなく、適正かつ正当なものであると考えている。
三について
お尋ねについては、厚生労働省において、令和六年九月二日に開催した厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会において示した資料「新型コロナワクチンの見込み供給量(二千二十四年八月三十日時点)」の作成に当たり、令和六年「九月五週」から令和七年「三月四週」までの「見込み供給量」について、一般社団法人日本ワクチン産業協会を通じて、同協会の会員企業に対し、同省に報告するよう依頼し、各会員企業から同省に対し、報告がされたところである。
四について
お尋ねの「当事者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「ワクチン代」の「一万千六百円」は、令和六年二月に、新型コロナワクチンの各製造販売業者から、御指摘の「令和六年度の定期接種に供給するワクチンの希望小売価格」を聴取した上で、医薬品の流通取引の状況等を加味して設定した金額であるが、お尋ねの「ワクチンの製造会社各社の意見、議論の内容」については、各製造販売業者から、その内容を非公開とすることを前提として聴取を行い、議論したものであることから、お答えを差し控えたい。
五及び六について
御指摘の「通常の承認手続とは異なる特別な措置で早期承認された事実」の意味するところが必ずしも明らかではないが、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第十四条第十項においては、「厚生労働大臣は、第一項の承認の申請に係る医薬品が・・・医療上特にその必要性が高いと認められるものであるときは、当該医薬品についての・・・審査・・・を、他の医薬品の審査・・・に優先して行うことができる」と規定されており、御指摘の「レプリコンワクチン」の「承認」に当たっては、「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う当面の医薬品、医療機器、体外診断用医薬品及び再生医療等製品の承認審査に関する取扱いについて」(令和二年四月十三日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課及び医療機器審査管理課事務連絡)において、ワクチンを含む医薬品等について「優先審査等に関する取扱い」を示していたところであり、また、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う薬事手続の見直しについて」(令和五年四月二十八日付け薬生薬審発〇四二八第四号・薬生機審発〇四二八第一号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長及び医療機器審査管理課長連名通知)において、「令和五年五月七日以前に申請、届出、申込み等のあった個々の手続きについては、従前のとおり取り扱う。また、特に新型コロナワクチンについては、ワクチンの供給に関連するもの等、保健衛生上の必要性がある場合には、五月八日以降の手続きも優先的な取り扱いを行う場合がある。」と示しているところ、御指摘の「メーカーのレプリコンワクチン」については、これらに基づき優先して審査を行い、その過程においては、他の医薬品と同様に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)の審査報告書を踏まえ、令和五年十一月二十七日に開催した薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会等において審議等が行われ、その結果を踏まえて医薬品医療機器等法第十四条第一項の規定による承認又は同条第十五項の規定による承認事項の一部変更承認(以下単に「承認」という。)を行ったものであり、御指摘のように「他の製薬会社と比べて公平性を損なう措置があった」とは考えていない。
七及び八について
御指摘の「承認後のワクチン買上げに関する保証(事実上これと同等の効果を有する一切の合意を含む。)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、承認を受けたワクチンの購入契約や購入に係る事前合意を指すと解すれば、これらが「なされていた事実」はなく、御指摘の「他の製薬会社との比較において不公平性が認められる」とは考えていない。
九について
御指摘の「レプリコンワクチンの承認及び供給に関する政策決定プロセス」、「関与」及び「透明性確保のために」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「承認」に関しては例えば五及び六についてで、「供給」に関しては三についてでお答えしたとおりであり、適切に「政策決定」をしながら、施策を実施しているものと考えている。
十について
御指摘の「メーカーのレプリコンワクチンに関する・・・判断」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「早期承認」に関しては五及び六についてで、「買上げ保証(事実上のものを含む。)」に関しては七及び八についてでお答えしたとおりであり、いずれにせよ、今後とも「公平性と透明性」にも留意しつつ、施策を推進してまいりたい。
十一について
御指摘の「レプリコンワクチンのベトナムにおける治験」を当該ワクチンに係る機構の審査報告書に記載された「ARCT−一五四−〇一試験」と解すれば、当該試験の方法は、ICH−E九(日米EU医薬品規制調和国際会議が作成した臨床試験のための統計的原則をいう。)に記載されている「Crossover Design」に該当する実施方法であり、ワクチンの臨床試験において通常用いられる試験の方法の一つであると承知していることから、御指摘の「緊急避難的な臨床試験」には当たらず、当該「臨床試験の結果を用いて承認することは不適切である」との御指摘は当たらないものと考えている。
十二について
御指摘の「レプリコンワクチン」の「ルシフェラーゼ(発光酵素)のmRNAを用い」た「実験結果」については、機構の審査報告書において、「薬物動態の参考資料として、マウスに、レプリカーゼとルシフェラーゼをコードするmRNA(LUC−samRNA)及びルシフェラーゼのみをコードするmRNA(LUC−mRNA)をLNPに封入して投与した際の残存性を評価した非臨床薬物動態試験が提出され」、「投与八日目以降は両RNAともに筋肉内濃度は減少し、十五〜三十日目はわずかに検出されるのみとなった」等と記載されており、当該審査報告書等を踏まえ、令和五年十一月二十七日に開催した薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会等において審議等が行われ、その結果を踏まえて承認を行ったものである。また、その後、令和六年九月十九日に開催した厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会における審議を踏まえて、定期の予防接種において、令和六年度に使用する新型コロナワクチンとすることとしたところ、これらの審議等において疑義は提示されていない。
十三について
御指摘の「個体間伝播を否定する」「根拠」の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「レプリコンワクチン」については、令和六年十月四日の閣議後記者会見において、福岡厚生労働大臣が「薬事承認においてその安全性及び有効性を確認しているほか、定期接種で用いるか否かを判断する際に、改めて関係審議会において、その安全性及び有効性が確認された上で了承されたものです。また、ワクチン成分が他者に伝播し健康被害が生じるという科学的知見はなく、こうした内容について厚生労働省のホームページなどで周知を行っているところです。」と述べているとおりであり、厚生労働省として「レプリコンワクチン」の製造販売業者に御指摘のような「データ」を「請求すること」は現時点では考えていない。
十四について
御指摘の「ベトナムの死亡率と比べて半分程度であり、高齢者や基礎疾患者を含む治験とはいえ、多過ぎる可能性がある」及び「死亡率が通常と比べて高いかどうか」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「ベトナムの治験」を「レプリコンワクチン」に係る機構の審査報告書に記載された「ARCT−一五四−〇一試験」の「パート三b」試験と解すれば、当該試験におけるお尋ねの「死亡者の年齢区分・基礎疾患区分による死亡数」については把握しているものの、当該報告書において「いずれも治験薬との因果関係は否定された」とされており、「治験薬」との関係において御指摘の「死亡数」が問題であるとは考えていない。