答弁本文情報
令和七年五月十六日受領答弁第一七五号
内閣衆質二一七第一七五号
令和七年五月十六日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員八幡愛君提出すべての職業の尊厳に対する政府の認識に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員八幡愛君提出すべての職業の尊厳に対する政府の認識に関する再質問に対する答弁書
一について
御指摘の「すべての合法的な職業」の具体的に意味するところが明らかではないが、一般論として申し上げれば、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号。以下「労働施策総合推進法」という。)においては、労働施策総合推進法第一条第一項等に基づき、全ての「労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上」等を図ることを目的として、各種施策を講ずることとされているところである。
二について
御指摘の「特定の合法的職業」及び「公的な場面において・・・評価」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、先の答弁書(令和七年四月二十五日内閣衆質二一七第一四三号)一についてでお答えしたとおり、政府としては、労働施策総合推進法第一条の目的規定において、「国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図る」、「労働者の職業選択の自由・・・についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない」等と規定されていることを踏まえ、労働関係法令に基づく各種施策を講じてきているところである。
三について
御指摘の「表現」については、政府として定義して用いているものではなく、また、御指摘のように「一般に、・・・解される」とは承知していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
四について
御指摘の「介護、・・・清掃等」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、「介護、保育、物流、小売、清掃」の「業務を担っている者」に関しては、厚生労働省の「令和六年賃金構造基本統計調査」によると、令和六年六月の「きまって支給する現金給与額」について、例えば、「老人福祉・介護事業」及び「児童福祉事業」を含む「社会保険・社会福祉・介護事業」では二十八万五千三百円、「道路貨物運送業」では三十四万二千五百円、「小売業」では三十一万千百円、「清掃事務所」を含む「廃棄物処理業」では三十二万五千八百円であり、いずれの「産業」においても、「産業計」での三十五万九千六百円と比べて低い状況であり、これらの「産業」に係る賃上げは課題であると認識している。
五について
御指摘の「エッセンシャルワーカー」の具体的に指し示す範囲が明らかではなく、また、御指摘の「職業の貴賤」については政府として定義して用いているものではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、四で御指摘の「介護、保育、物流、小売、清掃」の「業務を担っている者」も含め、賃上げに取り組んでいるところであり、例えば、「介護、保育」に関しては、令和七年一月二十八日の衆議院本会議において、石破内閣総理大臣が「介護、・・・保育分野における処遇改善についてでございます。これら対人支援を担われる方々の処遇改善について、賃金水準や賃上げに向けた費用負担の仕組みなどの状況は異なるものの、いずれも重要な課題であるということは認識をしておるところでございます。介護・・・分野につきましては、令和六年度の報酬改定で措置した処遇改善加算の更なる取得促進に向けた要件の弾力化や、先般の補正予算に盛り込みました生産性の向上や職場環境の改善など更なる賃上げに向けた支援を通じて、賃上げを進めてまいります。幼児教育、保育分野につきましては、令和七年度予算におきまして、幼稚園教諭、保育士などにつきまして、十パーセントを上回る大幅な処遇改善を行うことといたしており、引き続き、こども未来戦略に基づき、民間給与動向等を踏まえた更なる処遇改善に取り組んでまいります。」と答弁しているとおりである。また、四で御指摘の「物流」に関しては、同年四月九日の衆議院国土交通委員会において、中野国土交通大臣が「トラック運送業、・・・他の産業と比較して賃金が低い等、労働条件の改善というのは大変課題であります。その賃金の引上げの原資となる適正運賃を運送事業者が収受できる環境整備が重要でございます。・・・様々な取組を行ってきたところでございますが、トラックドライバーの賃金については、令和五年度の現金給与総額は、前年度から横ばいでございます。現在、政府全体で賃上げ支援を強力に推進をするとともに、構造的な価格転嫁の実現に鋭意取り組んでおります。昨日、私からも直接、トラック業界に対して、価格転嫁や賃上げについて要請を行ったところでございます。労働時間ということも申し上げますと、令和五年度から令和六年度にかけて、トラックドライバーの労働時間は約二パーセント減少をしておりますが、・・・荷待ちの時間や荷役の時間の合計は、四年前と比較してほぼ横ばいというのが現状でございます。この労働環境の改善には、荷主の理解と協力が不可欠だと考えております。引き続き、国土交通省として、標準的運賃の周知啓発や、トラック・物流Gメンによる荷主等への是正指導等に取り組むとともに、改正物流法は今月から施行となりましたので、これを活用して、荷主等による荷待ち時間の削減の取組等の運用をしっかり進めてまいりたいと考えております。」と答弁しているとおりである。さらに、四で御指摘の「小売、清掃」も含め、産業全体の賃上げについては、同年三月二十四日の参議院内閣委員会において、赤澤内閣府特命担当大臣(経済財政政策)が「中小・小規模企業の皆様方に、賃上げの原資となる稼ぐ力を継続的に高め、安心して賃上げしていただけるよう、適切な価格転嫁の推進や生産性向上に向けて、省力化・デジタル化投資の促進、人材、経営基盤を強化する事業承継やM&Aを後押しするなど、あらゆる施策を総動員して取り組んでまいりたいと思います。」と答弁しているとおりである。