答弁本文情報
令和七年六月三日受領答弁第二〇〇号
内閣衆質二一七第二〇〇号
令和七年六月三日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員八幡愛君提出音訳事業の制度的整備および視覚障害者等の情報アクセス保障、ICT活用の整備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員八幡愛君提出音訳事業の制度的整備および視覚障害者等の情報アクセス保障、ICT活用の整備に関する質問に対する答弁書
一及び二について
御指摘の「音訳と商業的なオーディオブックおよび自動音声読み上げ技術による読み上げとの違い」及び「「情報保障インフラ」として再定義」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(令和四年法律第五十号)第一条の規定において、「全ての障害者が、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するためには、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができることが極めて重要である」とされ、同法第三条第一号の規定において、「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る手段について、可能な限り、その障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるようにすること」が基本理念の一つとされているところ、政府として、御指摘の「音訳」、「オーディオブック」及び「自動音声読み上げ技術による読み上げ」については、御指摘の「読字困難層」にとって、重要な役割を果たすものであると認識しており、こうした考えの下、同法等に基づき、各種施策を推進しているところである。
三について
政府としては、お尋ねのように「音訳活動がボランティアに依存し、人材の高齢化が進んでいる」とは認識していないため、「こうした現状が・・・要因となっていないか」とのお尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、「意思疎通支援従事者確保等事業実施要綱」(令和四年三月二十五日付け障発〇三二五第二号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知別紙)等に基づき、「意思疎通支援従事者確保等事業公募要領により採択された団体」における「主として若年層に対して意思疎通支援従事者への関心を高め、意思疎通支援事業等の分野への参入促進や意識変容を図るために工夫を凝らした広報・啓発活動を展開する」等の「意思疎通支援従事者の確保事業」に要する経費に対する補助を行っているところであり、当該事業を推進することにより、引き続き、「意思疎通支援従事者」の確保に取り組んでまいりたい。
四について
御指摘の「地域間での格差是正に向けた施策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「音訳サービス」に係る取組については、各地方自治体において、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第七十七条第一項第六号及び第七号の規定並びに第七十八条第一項の規定並びに「地域生活支援事業等の実施について」(平成十八年八月一日付け障発第〇八〇一〇〇二号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)に基づき、地域の特性や利用者の状況に応じて行われているものと承知しているところ、政府として当該取組に係る御指摘の「提供体制、人材確保状況、コンテンツ整備状況」の詳細を把握しておらず、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、令和五年度末時点で、百二の市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、「地域生活支援事業実施要綱」(平成十八年八月一日付け障発第〇八〇一〇〇二号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知別紙一。以下「地域生活支援事業実施要綱」という。)に定める「意思疎通支援事業」として、「意思疎通を図ることに支障がある障害者等とその他の者の意思疎通を支援する」ため、御指摘の「音訳」を行う者(以下「音訳者」という。)の派遣が実施されていると承知している。
五の1について
お尋ねの「音訳者の人材育成に関する研修制度」については、地域生活支援事業実施要綱等に基づき、市町村等における「奉仕員養成研修事業」及び「地域生活支援促進事業実施要綱」(平成十八年八月一日付け障発〇八〇一〇〇二号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知別紙二)等に基づき、都道府県、市町村等における「地域における読書バリアフリー体制強化事業」による御指摘の「音訳者の人材育成に関する研修」の実施に要する経費に対する補助を行っている。
五の2及び3について
お尋ねの「音訳の報酬化」及び「音訳ボランティアへの支援強化(機材提供、交通費助成等)」については、市町村において、地域生活支援事業実施要綱等に基づき、市町村における「意思疎通支援事業」による音訳者の派遣に要する経費に対する補助を行うとともに、「身体障害者保護費国庫負担金交付要綱」(平成十八年十二月二十八日付け厚生労働省発障第一二二八〇〇三号厚生労働事務次官通知別紙)及び「読書バリアフリー法を踏まえた障害福祉関連施策の推進について(通知)」(令和三年三月二十九日付け障企自発〇三二九第一号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長通知)に基づき、全国の「点字図書館」の設置主体における「音声図書を製作するために必要な環境整備に係る費用(パソコン、・・・録音機器等の購入費等)」、「音声図書の製作を担う人材の養成・育成や資質の向上に必要な費用(講習会開催経費や講習会出席に必要な旅費等)」、「音声図書の製作のための費用(・・・音訳を行う者への謝金や交通費等)」等の経費に対する補助を行っている。
また、お尋ねの「中間的就労との連携」については、その意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
五の4について
お尋ねの「音訳録音物の標準化・共有化に向けたICT基盤整備」については、「高度情報通信等福祉事業費補助金交付要綱」(平成十七年六月二十七日付け厚生労働省発障第〇六二七〇〇二号厚生労働事務次官通知別紙)に基づき、厚生労働省の補助金事業の補助事業者である特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会における「インターネットを活用した視覚障害者等用図書情報ネットワークを円滑に運営する事業」の実施による「音訳の実施方法の統一・質の向上のため、・・・音訳奉仕員向け研修やマニュアルの作成等を行うこと」等に要する経費に対する補助を行っている。
六について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、地域生活支援事業実施要綱において、市町村が実施する「意思疎通支援事業」の補助対象として、「音声訳・・・による支援事業など意思疎通を図ることに支障がある障害者等とその他の者の意思疎通を支援する」と定めているところである。
七及び八について
お尋ねの「教育・公共機関・地域図書館等におけるハイブリッドな情報提供体制(人による音訳とデジタル支援の併用)の実現」の意味するところが必ずしも明らかではないが、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律第十三条第一項の規定に基づき、「国及び地方公共団体は、医療、介護、保健、福祉、教育、労働、交通、電気通信、放送、文化芸術、スポーツ、レクリエーション、司法手続その他の障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野において、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにするため、障害者とその他の者の意思疎通の支援を行う者・・・の確保、養成及び資質の向上その他の必要な施策を講ずるものとする」とされているところ、政府としては、これに基づき、必要な施策を講ずることとしている。
その上で、お尋ねの「いわゆるインクルーシブ教育の情報保障政策を強化する」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、文部科学省においては、「公立学校情報機器整備事業費補助金交付要綱」(令和六年一月二十九日文部科学大臣決定)、「私立大学等研究設備整備費等補助金(私立高等学校等ICT教育設備整備推進事業費)交付要綱」(平成十四年四月五日文部科学大臣決定、令和七年四月一日改正)等に基づき、児童及び生徒が使用する「学習者用コンピュータ等の情報機器の整備」等に対する支援を行うとともに、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成二十年法律第八十一号)第三条の規定において「国は、児童及び生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず十分な教育を受けることができるよう、教科用特定図書等の供給の促進並びに児童及び生徒への給与その他教科用特定図書等の普及の促進等のために必要な措置を講じなければならない」とされているところ、これに基づき、御指摘の「音声教材」の作成に対する支援を行っているところである。また、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第四十九号)第七条の規定に基づき定めた「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(第二期)」(令和七年三月文部科学省及び厚生労働省策定)において、「公立図書館や学校図書館において、各館の特性や利用者のニーズ等に応じ、対面朗読や郵送貸出等の他、新たな技術を用いた障害者サービスの充実に努める」等と示すとともに、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)第十一条第一項の規定に基づき定めた「文部科学省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(平成二十七年十一月文部科学省作成、令和五年十二月改正)において、学校、社会教育施設等が適切に対応するために必要な事項について、「関係事業者は、・・・障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において・・・当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮・・・をしなければならない」等と示しているところであり、これらに基づき、必要な施策を講ずることとしている。
九について
御指摘の「ユニバーサル映画館」及び「ユニバーサル上映」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「文化政策」として、文化芸術の鑑賞については、「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第二期)」(令和五年三月文部科学省及び厚生労働省策定)において、「本来、誰もが参加できるものであり・・・合理的配慮の提供とそのための環境整備が求められる」とし、具体的には、「美術館、博物館、劇場、音楽堂等において、障害者が文化芸術を鑑賞する際の情報保障(日本語字幕、手話通訳、音声ガイド、ヒアリングループ等の整備)や多様な障害特性に応じたサービスの提供、施設の利用環境の整備等、職員の研修も含めて利用しやすい環境の向上を図る取組を推進する」等としており、これに沿って、例えば、「文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱」(平成二十三年四月一日独立行政法人日本芸術文化振興会理事長裁定)及び「文化芸術振興費補助金(国際共同製作映画支援事業)交付要綱」(平成二十三年六月一日文化庁長官決定)に基づき、「日本映画」及び「国際共同製作映画」への製作支援の一環として、「バリアフリー字幕・音声ガイド制作費」に対する支援を、また、「劇場・音楽堂等機能強化推進事業」(「文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱」に定める事業をいう。)の募集案内に基づき、「劇場・音楽堂等」が行う「実演芸術」への支援の一環として、「手話通訳、日本語字幕の制作」等のバリアフリー対応の取組への支援を、さらに、「Innovate MUSEUM事業国庫補助要項」(令和七年二月十三日文化庁長官決定)に基づき、博物館における「社会包摂やアクセス可能性を促進する取組」等への支援を行っているところである。また、放送については、放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第四条第二項の規定において、「放送事業者は、・・・静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組・・・をできる限り多く設けるようにしなければならない」とされているところ、「情報通信利用促進支援事業費補助金交付要綱」(令和六年十二月十七日付け総情作第九十三号総務大臣策定)に基づき、国立研究開発法人情報通信研究機構を通じて、「放送事業者」等に対し、「解説番組・・・の制作に必要な資金」について助成を行っているところである。
十について
御指摘の「音訳・録音図書サービスや学校教育における合理的配慮が制度化・支援されている」、「日本における支援制度との違い」及び「先進事例」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、「OECD諸国」における「音訳・録音図書サービス」に係る「事例」については把握していない。
十一について
御指摘の「音訳事業およびアクセシブル教材・文化コンテンツの高度化・持続化」に向けた取組については、三についてから九についてまでで述べたとおりであるところ、これらの取組を着実に推進することが重要であると考えており、現時点において、御指摘のような「実証モデル事業」を実施する予定はない。