答弁本文情報
令和七年六月三日受領答弁第二〇二号
内閣衆質二一七第二〇二号
令和七年六月三日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員杉村慎治君提出著作権法第三十条の四等のベルヌ条約との適合性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員杉村慎治君提出著作権法第三十条の四等のベルヌ条約との適合性に関する質問に対する答弁書
一について
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十条の四の規定については、「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方(著作権法第三十条の四、第四十七条の四及び第四十七条の五関係)」(令和元年十月二十四日文化庁公表。以下「基本的な考え方」という。)において、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為については、著作物の表現の価値を享受して自己の知的又は精神的欲求を満たすという効用を得ようとする者からの対価回収の機会を損なうものではなく、著作権法が保護しようとしている著作権者の利益を通常害するものではないと考えられるため、・・・著作物は、当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、利用することができることとし」たとしているとおりであり、また、同条ただし書において、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」としていることから、千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(昭和五十年条約第四号。以下「ベルヌ条約」という。)第九条(2)の規定と整合していると考えている。
二について
お尋ねの趣旨及び「商業的プラットフォームにおける広告収益を伴うキャッシュ保存やサムネイル生成等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、著作権法第四十七条の四の規定については、基本的な考え方において、「著作物の知覚を伴うが、権利者に対価回収の機会が用意されている「主たる著作物の利用行為」の補助的・補完的な行為にすぎないような行為・・・については、著作権法が保護しようとしている権利者の利益を通常害するものではないと評価できるものと考えられる。このため、・・・電子計算機における利用に供される著作物について、当該利用を円滑又は効率的に行うための付随的な利用に供することを目的とする場合(第一項)や、電子計算機における利用を行うことができる状態を維持し、又は当該状態に回復することを目的とする場合(第二項)には、その必要と認められる限度において、利用することができることとし」たとしているとおりであり、また、同条第一項ただし書及び第二項ただし書において、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」としている。また、同法第四十七条の五の規定については、基本的な考え方において「サービス利用者が自己の関心に合致する著作物等の書誌情報や所在に関する情報を提供するサービス(所在検索サービス)や情報解析によって新たな知見や情報を生み出すサービス(情報解析サービス)」「で行われる著作物の利用は、サービスの主目的である新たな知見又は情報の提供に付随して行われるものであり、著作物の利用を軽微な範囲にとどめれば、基本的に著作権者が当該著作物を通じて対価の獲得を期待している本来的な販売市場等に影響を与えず、ライセンス使用料に係る不利益についても、その度合いは小さなものに留まるものと考えられる。」「このため、・・・電子計算機を用いて、新たな知見や情報を創出する所在検索や情報解析等の情報処理を行い、及びその結果を提供する者(政省令で定める基準に従う者に限る。)は、その行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、著作物を軽微な範囲で提供する行為を行うことができることとする(第一項)とともに、当該行為の準備を行う者が、準備のために複製等を行うことができることとした(第二項)。」としているとおりであり、また、同条第一項ただし書において「著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」と、同条第二項ただし書において「著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」としている。したがって、同法第四十七条の四及び第四十七条の五の規定は、ベルヌ条約第九条(2)の規定と整合していると考えている。
三について
お尋ねの「AI学習その他の技術的処理により、・・・機械的に複製・表示されることが・・・どのように適合する」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
四及び五について
お尋ねの趣旨並びに「AI事業者やプラットフォーム事業者による大規模な複製行為」、「補償制度や非営利限定、オプトアウト等による制度的調整」及び「ベルヌ条約の求める国際的な適合性」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、著作権法第三十条の四、第四十七条の四及び第四十七条の五の規定については、一について及び二についてでお答えしたとおり、ベルヌ条約第九条(2)の規定と整合していると考えている。