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答弁本文情報

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令和七年十二月十二日受領
答弁第一〇五号

  内閣衆質二一九第一〇五号
  令和七年十二月十二日
内閣総理大臣 高市早苗

       衆議院議長 額賀福志郎 殿

衆議院議員長妻昭君提出最高裁で違法とされた政府の生活保護大幅引下げに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長妻昭君提出最高裁で違法とされた政府の生活保護大幅引下げに関する質問に対する答弁書


一について
  
 平成二十五年の生活扶助基準(生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第八条第一項の基準のうち同法第十二条に規定する生活扶助に係るものをいう。以下同じ。)の改定に関する令和七年六月二十七日最高裁判所第三小法廷判決(以下「最高裁判決」という。)を踏まえた対応の在り方については、社会保障審議会生活保護基準部会の下に設置された最高裁判決への対応に関する専門委員会において、御指摘のような「発言」等も踏まえながら、同年十一月十八日に報告書が取りまとめられ、「新たな基準を制定する場合にも、原告等及び原告等以外の被保護者の区別なく適用することが基本と考えられるが、他方で、原告等については、判決による形成力が働いている者がいることや、特に高さ(水準)調整について、紛争の一回的解決の要請に特に留意が必要であり、こうした点を踏まえて適切に裁量権行使を行うことが必要」等とされたところである。
 その上で、厚生労働省において、当該報告書等を踏まえて、同月二十一日に「社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会報告書等を踏まえた対応の方向性」を公表しているとおり、「生活保護法に基づく保護費の追加給付について、生活保護法第八条第二項の規定・・・や第二条の規定による無差別平等原則・・・を踏まえ、原告・原告以外を区別せず、高さ調整マイナス二・四九パーセントの水準で一律に実施」するとともに、「原告については、これまでの争訟の経緯を踏まえた原告との紛争の一回的解決の要請を踏まえ、高さ調整を実施しない水準となるよう、予算措置により、保護費に代えて、これに相当する特別給付金を支給」することとしたところである。

二について
  
 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、先の答弁書(令和三年四月二十七日内閣衆質二〇四第一〇三号)一についてで述べた「生活扶助相当CPI」については、平成二十五年の生活扶助基準の改定において、物価変動率の指標として用いたものであるところ、御指摘の「計算方式」について「不適切」であったとは考えていないが、最高裁判決においては、「物価変動率は、生活扶助基準の改定の際の指標の一つとして勘案することが直ちに許容されないものとはいえないとしても、それだけでは消費実態を把握するためのものとして限界のある指標であるといわざるを得ない。(中略)物価変動率のみを直接の指標とすることが合理的であることにつき、物価と最低限度の消費水準との関係や、従来の水準均衡方式による改定との連続性、整合性の観点を含め、専門的知見に基づいた十分な説明がされる必要があるというべきである。(中略)基準部会等による審議検討が経られていないなど、その合理性を基礎付けるに足りる専門的知見があるとは認められない。・・・専門的知見との整合性を欠くところがあり、この点において、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったものというべきである」とされているところである。

三について
  
 お尋ねについては、例えば、令和七年十二月二日の閣議後記者会見において、上野厚生労働大臣が「これまで長きに渡って訴訟を継続された原告の皆様や、今回追加給付の対象となった被保護者の皆様も含めてお話させていただいているものであり、改めて真摯に反省してお詫び申し上げたいと考えています」と述べたとおりである。

四について
  
 最高裁判決においては、「保護基準は、最低限度の生活の需要を超えないものでなければならないのであり、仮に本件改定前の生活扶助基準が上記需要を超えたものとなっていたというのであれば、これを引き下げることは、生活保護法八条二項の規定に沿うところであるということができる・・・厚生労働大臣が、本件改定当時、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じていると判断したことにつき、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいい難」いとされているところ、平成二十五年の生活扶助基準の改定による御指摘の「引下げ」については、こうした「判断」に基づき、具体的には、令和七年四月二日の衆議院厚生労働委員会において、福岡厚生労働大臣(当時)が「平成二十五年の生活保護基準改定は、生活保護基準部会の検証結果を踏まえ、年齢、世帯人数、地域差のゆがみを直すとともに、デフレ傾向が続く中、当時の基準額が据え置かれていたことに鑑み、生活扶助基準の必要な適正化を図ったものでございます」と答弁しているとおり行ったものである。その上で、最高裁判決においては、「デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断には、その過程及び手続に過誤、欠落があったもの」であり、「本件改定は、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をすることとした点において、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法三条、八条二項に違反して違法」とされているが、御指摘の「憲法違反」であるか否かについては言及されておらず、政府として、お尋ねのように「憲法違反であると、または憲法違反の疑いがある」とは考えていない。
 御指摘の「再発防止策」については、同年十一月二十七日の参議院厚生労働委員会において、上野厚生労働大臣が「専門委員会の報告書におきまして、今後の改定手続において同様の問題が生じないよう、特にこれまでと異なる判断を行う場合には、厚生労働省において、専門的知見に基づく生活保護基準部会等における検討を経て適切な改定を行うよう特段の留意を求めると指摘されたことを重く受け止め、今後の改定等については十分・・・それに留意してまいりたいと考えています」と答弁しているところ、政府としては、御指摘のように「検証」を行う及び「検証委員会のような会議体を設置」するということではなく、同日の同委員会において、同大臣が「まずは、追加給付の支給事務など決定した対応方針に基づいて必要な対処を迅速に行うことを最優先として進めていきたいと考えております」と答弁しているとおり、必要な対応を進めてまいりたい。

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