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昭和二十三年四月二十日提出
質問第六号

 林政一般に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十三年四月二十日

提出者  井出一太(注)




林政一般に関する質問主意書


 森林資源の枯渇による國土の荒廃が極めて著しいことは、昨年発表の「経済実相報告書」にも指摘せられており、政府自らの認めるところである。しかも昨夏の東北水害、昨秋の関東水害と相次ぎ、その惨禍は正に目を蔽わしめるものがあつた。さらに本年と雖も風水害を未然に回避することは保し難く、このままに放置するときは、國破れて僅かに残つた山河さえもが失われんとする事態にある。
 これ戰時中の山林に対する濫伐、過伐が大いなる原因をなしているのであるが、今後林産物需要の増加は林木成長率を遙かに超えて、いわゆる植伐の不均衡に一層の拍車をかけるのであろう。一方現下の経済事情にあつては、造林に対する幾多の障害が存在し、殊に濫過伐の烈しかつた民有林において造林意欲の沈滞せる点は憂慮に堪えない。
 さきに三党政策協定は、その一項に治山治水対策を掲げ、政府又これを実行する責務を有するのであるが、今や植樹の季節を迎えて、國土拷サの声は澎湃として起り、國民運動の展開にまで高まりつつある。
 しかしながら幾多困難なる條件に遮られ、政府自らこれが打開につとめない限りは掛声だけに終る懸念が充分である。よつて取りあえず左記各項について、速かに政府の所信を明かにせられ、以て民間林業人の不安と困難の打開につとめられたい、ここに政府の決意と善処とを要望して、本質問書を提出せんとする次第である。


     記

一、三党政策協定はその重要項目の一として、農地改革の徹底的推進を掲げ、世上これを第三次農地改革と受け取り、山林に対しても農地同様これを開放の対象として考えられる懸念よりして、造林意欲の低下は固より幼齢林の伐採が相次いで行われる現状である。前内閣以來農林当局はこれを打ち消し、根拠なきことを声明しているが、まだ全く解消されたというには至つておらない。この際改めて政府の見解を積極的に発表して載きたい。
二、杭木、薪炭等の原材確保のため、林野の全面的國家管理説が流布されている向もあり、ために立木の賣急ぎの現象もなしとしない。これがため林地の所有に不安を來しているが、この点についての所信如何。
三、林業の経営適正規模は農業とは自らその性格を異にするものであり、大面積経営の優越性は欧米においても立証済である上、わが國にあつても大経営が優れていることはあまねく認められている。林地を徒らに分割零細化することは、決して生産力の発展にならないと思料するが、政府の見解如何。
四、林業は林産物の收穫を目的とする経済性のかたわら、國土保安、治山治水という公共目的を有することは論をまたない。從つて單なる経済合理主義にのみ委ねる訳にゆかず、國家の保護助成が要請されるゆえんである。いわんや戰時中経済外的強制力を以て供出せしめられた伐採跡地に対し、インフレ高進の今日、長年月にわたる資本投下は困難であり、民間の力にのみ造林を期待することは不可能に近いと考えられる。政府はこれに対して如何なる助成対策を有せられるか。
五、今日造林を困難ならしめている一つの理由として樹苗の不足がある。これは苗圃が食糧作付と競合関係にある上、戰時中縮小したままで、これを拡張する場合は農地調整法によつて拘束を受けるのである。苗圃に対しては旧墾地と雖も食糧供出の対象たることを免じて可及的拡張の余地を認められたいが如何。また國営圃場を設置して苗木の増産に当られる意図ありや、さらに竿頭一歩を進めて苗木の國による無償交付にまでも及ぶ用意ありやを伺いたい。
六、林木伐採に当つては必ず造林を前提とする意味において伐採跡地の造林について法的強制力を持たしめる考えはないか、これがため造林法ともいうべき單行法の制定を準備せられる意思ありやを伺いたい。もちろんこのためには國家よりする相当額の財的裏付乃至金融的措置を必要とすると思うが如何。
七、森林による所得に対する現行所得税は、既往に要した必要経費をのみ控除する建前となつているが、インフレ高進の現下にあつてはその控除額は僅少に失し、伐採跡地の再造林を不可能ならしめている。森林所得税において再造林費を考慮に入れた特別な方式を採用されたいと思うが、この点所見如何。
八、農家の自家用薪炭林、放牧地、採草地については、使用権の復活乃至開放の途が開かれているが、使用希望者と森林所有者との協議を前提としている。しかしてこの際森林組合や薪炭林等委員会に諮問することになつているが、実際は農地委員会の行き過ぎが多く、随所に問題を惹起している。政府はこの点末端に徹底せしめ、無用の摩擦をなくするよう善処ありたいが、所見を問う。
九、緊急開拓計画に基く未墾地開拓事業は買上げをめぐつて至るところ森林所有者と入植者若しくは増反希望者との間に紛爭を起している、開墾適地の選定に当つては科学的、技術的観点に立つて、絶対的林地と相対的林地の区別を明確にすべきである。防風林を開墾したため既耕地の收穫が減少したり、上流傾斜地の開墾が下流美田を流失せしめたような例は枚挙に暇がない。又單に所有権だけを目的に開墾に便乘しようとする奸策もなしとしない。かかる土地利用区分に当つては、綜合的國土計画の見地からすべきであり、農地委員会の攻勢による林地不安に対しては、是正を要望するものであるが、政府の考を問う。
十、政府は昨年國有林野の統一を完成多年の懸案を一挙に解決したが、その結果國有林はある一地方に偏在し、必ずしも全國的分布において均衡を得ていない。由來國有林制度は明治維新草創の際、地方民の利害を度外視して設定せられた例が極めて多い。特殊な歴史的沿革的事情を有し、且つ経済的にも理由を持つ地方においては、これが開放の要望に應えてしかるべしと考えるが政府にその用意があるか。
十一、奥地林分の開発には林道網の整備が絶対に必要であり、これによつて未利用林木に経済的價値を生ぜしめる。しかも林道工事は労力が主であつて、資材を多く要しないので、失業対策事業としても極めて適切である。公共事業費等を思い切つてこの方面に活用して欲しいが本年度の予算的見透し如何。
十二、民有林の保続経営に当つては施業案に基く計画施業が絶対に必要である。しかしてわが國の民有林の所有形態は極めて小規模なるを以て、これを協同化した森林組合をもつて経営の任に当らしめるの外ない。森林組合の育成強化に対し政府の所信を問う。又そのため森林法の改正を企図せられるか。
十三、林業の特殊性に鑑み、長期低利の金融が絶対に必要である。農林復興金庫の設置はこの点からも要望せられるのであるが、その用意があるか。
十四、第九十議会において制定せられた林業会法は、今日死文に等しい状態に置かれ、本法に拠る日本林業会はすでに解体一歩手前にある。地方林業会又帰趨に迷つている現状であるが、政府は本法を廃止する意思であるか、又その時期如何。さらに本法に代るべき何らかの立法を用意しておられるかを伺いたい。

 右質問する。





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