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昭和二十五年十二月二日提出
質問第一六一号

 日本の貿易輸出市場確保に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十五年十二月二日

提出者  川上貫一

          衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿




日本の貿易輸出市場確保に関する質問主意書


 日本向輸入品総額のうち外線原料が最大で、四四%を占めると伝えられるが、日本よりの輸出纖維製品が東南アジヤの主要な市場、蘭領インド、インド及び南アフリカ連邦諸国よりダンピング税の賦課、特別レートの設定、最高価格の設定等の措置をもつて総ボイコツトされる結果となり、既契約品のキヤンセルが続出し、関係業者に大恐慌を来していることが報ぜられている。
 このような措置がとられるにいたつた原因について、政府はどのように考えているか。又、これに対する今後における貿易対策はどのようにたてられているか。
 この例を示せば、さる八月二十五日以来、南アフリカ連邦政府は、日本からの輸入綿、スフ、毛織物製品に対し五〇%のダンピング税を課したと伝えられ、その後の報道によれば、綿、スフ製品に対して最高価格制が適用され、これによると、最高価格はスフ一〇〇%の纖維品八シリング、スフ五〇%以上の製品十二シリング、綿一〇〇%の纖維品八シリング、綿五〇%以上の製品十シリング六で、関税は右製品価格に対して三五%が課せられ、毛織製品には最高価格制を適用せず、五〇%の関税のみ課せられる。この結果南アフリカ諸国の各商社は、八月二十五日著荷以後の契約は、すべてキヤンセルしており、毛織物は戰前(一九三九年)五〇〇万ヤードの輸出実績を持つ大市場を失うばかりでなく、戰後はもちろん本年の契約もすでに百万ヤードに達するとみられたものが、この措置により今後の輸出を絶望的にするとともに既契約品で未積出の商品が約六〇万ヤードあるとみられている。
 又蘭領インド向綿布の輸出は、同国政府が対日輸入綿布に対しては公定レート(一ドル=三・八一ギルダー)に対し、その三倍に当る一ドル=十一・四三ギルダー)の特別レートを実施していると伝えられ、このために引合もほとんど止つたと報ぜられている。
 さらにインド政府は、対日輸入スフ綿に対し七月から十二月までの輸入綿スフのうちポンド当りCIF二五ペンス(二九セント四分の一)以上のものは輸入禁止の措置をとつた模様であると報ぜられる。
 これについて商社筋では、現在の綿スフ輸出価格は、六〇から六五セント(FOB)という高価を示しているため、ここ当分の間インド向輸出はまつたく望みなしとみられている。
 他方中華人民共和国では、本年六月六日の三中全大会で、毛沢東主席が明確に指適した経済好転の三大條件(一)土地改革の徹底的遂行(二)現存商工業の調整(三)国家財政支出の大幅削減を成切りに遂行しつつあり、すでにその成果は中国農村の工業化への発展に現われ、農作物の大増産となり(昨年に比べ五〇〇万トン増し、これは日本の全産米供出先に相当する)農村の購買力の急上昇となり(国営公社合作社を通じて農村へ供給せる農具は昨年のみで七百万個、綿布の需要のみをみても一九四七年八〇万巻(單位四〇ヤード)に比べ一九五〇年は十倍(九〇〇万巻))
 この結果都市と農村との物資の交流は活発化し、農村副業の発展がもたらされ、中国の特産物たる茶、桐油、豚毛の増産となり、これが貿易面に活発な引合増加となつて現われている。
 一方鉄道の復興は昨年一月一二、七六八キロメートルより本年六月二六、九二二キロメートルと開通し、三箇年計画の目標が二〇万キロメートルと伝えられ、レールをはじめ鉄道建設資材の需要は無限といつてよい。
 また紡績機の増加目標は二千万錘というぼう大なもので、このプラント輸出が要望されている。
 他方日本への工業原料の輸入は、国際価格の高騰と輸入難のおりから外炭輸入の昨年度計画をみても中国よりの石炭が開らん炭を中心に過半数を占め、これら中国よりの引合は日本にとつて好條件であることはすべてが認めるところであり、またあらゆる国との間における互惠平等の利益を保障する通商上、経済上の関係の拡大こそが世界平和の基礎であると新中国は主要な政策に掲げている。
 この中国に対し犯罪的戰争を犯し中国人民に多大な被害を與え、国際的審判のもとにある日本が貿易決済においては輸入優先のヱスクロ方式を取り、各種の制限がこの公正な貿易を阻害し、日本の対外信用は日に失われつつある、かくのごとき措置をもつて新中国にむかうのはいかなる理由に基くものであるか。
 又中国、ソ同盟以外の諸国との貿易において取引価格、取引條件、決済方法等についてどのような互惠平等の利益が保障されているか、具体的に示されたい。又貿易市場としての安定性と有望さは右の具体的事実が示す以上のものであるが、新中国に関し、英帝国との関連におけるチベツト問題等を控え、複雑な態度を示しているインド首相ネール氏の言葉をもつてしても「もうそろそろすべての人口がこのことを理解してよいときである。偉大なアジアの一国 ―― これまでの歴史の上で最も統一され ―― 最も中央集権化された ―― の明白な事実を承認することを拒むのはまことに驚くべき事態である。 ―― 」このように偉大な発展を遂げつつある中国に対し、中国よりは、日本人民との公正な取引を中心政策に日本の平和的発展には暖い援助の手を差しのべている中国に対する現在の日本の取つている態度、ことに過去の犯罪的侵略を行い、中国人民に多大な被害を與えた日本の態度が公正であると考えるか如何。

 右質問する。





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