答弁本文情報
昭和二十五年十二月九日受領答弁第一六一号
(質問の 一六一)
内閣衆質第一六一号
昭和二十五年十二月九日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 ※(注)原喜重※(注) 殿
衆議院議員川上貫一君提出日本の貿易輸出市場確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員川上貫一君提出日本の貿易輸出市場確保に関する質問に対する答弁書
一 蘭領インド(インドネシヤ)及びインドが最近特に日本製品に対して関税引上げ価格制限等の措置をとり、そのために日本の纎維製品の輸出が総ボイコツトされているという事実はない。
インドネシヤは、輸入為替について持別の措置(公定レートの約三倍)をとつているが、これは同国の本年三月十三日公布された為替管理規則によりすべての輸入為替に適用されるもので、特に日本品のみに適用されるものでなく、従つてそのために日本綿布の輸出が阻害されていることはない。
またインド政府が、対日輸入スフに対し七月から十二月までの間特定価格のものの輸入禁止措置をとつたということについて在日印度ミツシヨンに紹介したところでは、かかる事実はないとの問答である。ただ同国向けのスフについては、昨年の下期以降より価格の折合がつかず、事実上輸出されていないが、このために日本のスフ輸出が打撃を受けているという現状ではない。
二 南アフリカについては、本年八月二十五日に同国産業の保護及びダンピング防止の理由のもとに綿製品及び羊毛製品について大幅の輸入関税引上げを実施した。しかし同国のこれらの製品の生産量は実に微々たるもので産業保護という理由とならず、またわが国製品の輸出価格は外国製品の価格に比較して廉価ではないので決してダンピングということはできない。従つてかかる処置はわが国に対して事実に即せざるものと思われる。政府は、関税引上げに関する情報を入手後直ちに総司令部を通じ、撤廃方交渉を依頼し盡力を懇請している。
貿易共済方式について輸入先行エスクロ決済方式を採用しているのは、国際情勢等により同国との貿易が必ずしも安定していないので取引を確実に実施するためであり、これが改善については検討中である。
右答弁する。