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昭和二十五年十二月十一日提出
質問第一五号

 国税の滯納整理における人権及び財産権尊重に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十五年十二月十一日

提出者  米原 昶

          衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿




国税の滯納整理における人権及び財産権尊重に関する質問主意書


 徴税問題は、現下国民の重大関心事であり、特に中小商工業者にとつて、避けがたい事情から生ずる国税の滯納整理は、世上往々にして、物議をかもす問題であるが、ここに税務行政上現われた一つの事例を示して、政府の明確なる見解を質したい。
 東京都目黒区平町二十一番地写真材料商野村由二君(以下本人と記す。)は、昭和二十四年度において当初二十九万円の所得更正を受け、その後二十一万五千円と訂正されたが、次に述べる調査の実情から、再審査請求書を提出中、何ら決定なきまま、昭和二十五年九月二十二日、次のごとく財産差押処分を受けている。

 (差押調書抄録)

  一 滯 納 額 二十四年度所得仮更正 二七、四七七円   督促手数料 一〇円
    本更正 九、二七七円    
  一 差 押 物 件 箱形写真機 洋服ダンス 柱 時 計 扇 風 機
    写 真 機 書 だ な 茶だんす 手 文 庫
    花 び ん 卓 花 び ん テーブル   合計 十三點
  一 国税徴收官 大蔵事務官  河内  太(注)          

 なお、本人の主張する所得十七万円に対しては、差押えに先だち、完納済であつたことを特記しておく必要がある。
 本人は、その後再三所轄目黒税務署に出頭して再調査を促進する一方、差押物件の処分に関しては、同署総務次長小坂家松市、徴收二係主任名取(注)雄両氏立会のもとに「訂正の見込あるにつき、それまで処分を保留する。」旨の回答をえて、一日も早く解決を待つていた。しかるに十月十八日に至り、突然物件引上げのトラツクが来て、一切の陳情をも聞き入れず、「本日は特に署長の命令であるから。」(名取事務官の言)といつて、「これから署へ行つてきいて来るから、一時間程の猶予をおいてもらいたい。」という本人の最後の言葉も、考慮の余地なしとして、差押物件十三点をトラツクに積み込み、即日競売の手続をとつた。その後審査の結果についてはなんの音さたもなかつたが、十二月五日に至り、たまたま通り合せた同署(注)野事務官より「すでにほぼ君の主張通りで訂正通知が出ている。」といわれ、本人は事の意外に驚き、なんの通知もなき旨を告げたところ、十二月六日附で十七万六百十円に訂正通知書が到着した。
 前後の事情と(注)野主任の言明により、同人の所得については、減額訂正の見込みのもとに本人が相当額完納後、物件引上げを実施するまでの間に、訂正がなされていたものと思われる。
 右の事実に基き次の諸点について政府の責任ある見解を求める。

一 国税徴收法には、審査請求中といえども徴收を猶予しないとあるが、税務署の決定せる所得については、すでに完納済になつていたものにつき、差押処分のみならず、競売に附することは、社会通念上妥当を欠くのみならず、明らかに憲法第二十九條の個人の財産権を侵害した違憲行為ではないか。
二 前記の事情を知ると否とにかかわらず、且つ、納税者との一応の了解事項(前文記述した事実)をも無視して競売処分を強行したことに対し、所轄税務署長並びに当該徴收官は、公務員として、刑法第百九十三條の職権濫用の罪に該当すると思うが如何。
三 すでに競売処分に附された物件を、原状回復することができず、たとえ換価して現金を交附若しくは物件の一部又は全部を本人に還付するも、本人がこの間に受けた物質上の損失、更に十数年間築き上げた営業上並びに対社会的信用の失墜など有形無形の損害に対して、当局は、賠償の責に任ずべきであると考えるが如何。
  なお、本人は昭和二十四年十二月第七回国会で、課税の実情等について参議院で証人として陳述しておることを附記する。

 右質問する。





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