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昭和四十四年八月四日提出
質問第一六号

 在日米軍及び自衛隊における化学・細菌作戦に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十四年八月四日

提出者  (注)崎弥之助

          衆議院議長 松田竹千代 殿




在日米軍及び自衛隊における化学・細菌作戦に関する質問主意書


 政府は沖繩における米軍毒ガス事故に関連し、今後一切の化学・生物兵器(CBW)の実験、製造、貯蔵、使用禁止に対する積極的意向を表明するとともに、現在、開かれているジユネーブ二十箇国軍縮委員会において国際的な協力を宣言した。
 しかし、わが国の国際的説得力は、日本自らが、まず行動の面において厳然たる態度を示すことによつて生れる。
 沖繩における米軍毒ガス事故について、レアード米国防長官は七月二十八日、米政府研修生として勤務している大学生との「化学・生物兵器(CB兵器)能力の維持」について討論し、「米国は他の国からの同種の攻撃に対する抑止力としても、CB兵器を保持しなければならない。これらのガス兵器その他がわれわれの時代に使用されないことを望むならば、この抑止力は重要である。この分野で米国は研究や開発をやめるといいたいところだが、この種の計画をやめるとしたら、米国民および同盟諸国に公正であるとはいえない」と答えて、米国は今後もCB兵器を保持、開発してゆく決意を明らかにした。
 沖繩からのC兵器撤去言明も、そのすべての撤去なのか、また撤去の時期、方法はどうなるのか、現在のCB部隊編成及びその施設はどうなるのか、一切は不明のままである。
 さらに米国は日本本土にはCB兵器はおいていない。B兵器については他国に配置していないというが、それを立証するものは何もない。むしろその反対の可能性の方が強いのである。
 一方、日米安保条約によつて日米共同作戦の義務を負う日本の自衛隊は、米国がCB兵器使用の可能性を残す限り、共同作戦の必要上、当然、CB作戦に関する連動を要求されるはずであるし、自衛隊自身も自主防衛を目指す以上、独自のCB作戦展開の装備と訓練を行なつていると推定せざるをえない。
 以下、わたくしはそれらの事実を裏付けると思われる数々の事故、及びCB兵器の研究、開発、実験、訓練の実態を明らかにし、政府の所信と見解をただしたい。

一 米軍は日本本土にもCB兵器を持込んでいるのではないか。
  CB兵器の持込みは安保条約第六条の事前協議の対象にされてはおらず、米軍が日本本土にそれらを持込んでいないという保証はどこにもない。
 1 日本における米軍CB兵器関係施設の代表的なものは、神奈川県相模原市にある米陸軍医療本部第四〇六部隊医学研究所と埼玉県朝霞基地にある米陸軍技術本部化学課である。
   それら日本における米軍のCB兵器関係機関、及び施設の全面撤去を求めるべきではないか。
 2 以下の問題について事実関係を明らかにされたい。
 (イ) 相模原市宮下地区における農作物被害事件
     昭和三十九年八月、同市宮下地区の農作物が「有毒ガス」による被害をうけ、関係者は米軍より補償金をもらつたはずである。この事件について
    a 被害発生の明確な日時について
    b 被害補償の実態について
    c 原因は何か
      米軍相模原市補給廠の某所に貯蔵されていた一トン・ボンベいりの窒息性ガス(塩素ガス)がろうえいしたためといわれるが事実関係はどうか。
 (ロ) 横浜港内における清掃船乗組員被害事件
     昭和三十八年九月一日、横浜港内において作業中の清掃船「新和丸」(新和海運所有)の乗組員六名が百メートルほど離れた米軍施設から流れ出したと思われる「有毒ガス」で卒倒し、直ちに六人は米軍の手で病院に収容され、うち四人は一週間入院するという事故が発生したはずである。右につき
    a 「有毒ガス」の種類及び、それを保管していた米軍施設は何か。
    b 被害補償及び事件の事後処理はどうなつているか。
 (ハ) 日本における米軍CB兵器の廃棄処分はどうされているか。
     次の二つの事実は米軍CB兵器の廃棄処分を意味するのか。
     それとも在日米軍射爆場はCB兵器の実験訓練に使われているのか。
    a 岩国基地沖合の姫小島における事実
      昭和四十三年七月十二日、午後四時から約二十分にわたり岩国市内に白い霧のようなガス体がひろがり、のど鼻などを刺激した。目撃者の話及び県議会の質疑によれば、米軍基地沖の約四キロの地点にある姫小島附近から白い煙が上つたという。姫小島附近では米軍の爆弾処理をしているが、この事実は毒ガス性の爆弾を処理した疑いが濃厚である。
    b 三沢基地天ケ森米軍射爆場における事実
      昭和四十年六月二八日午前十一時ごろ、三沢市天ケ森射爆場で、米軍が演習中、異状な爆発音ののち、南東の風にあおられて幅四百メートルにわたつて煙と異臭がひろがり、約三キロ四方の広さに被害を与えた。平沼部落では約五十ヘクタールの野菜畑と約二十ヘクタールの水田が被害をうけ、豚や鶏が死に、のどを痛め、吐き気、頭痛を訴える人もでたという。
      米軍はこの事件を「水道消毒用の塩素ガスボンベがもれたため射爆場で処理した」と説明したようだが、塩素ガスボンベを爆破によつて処理するなど常識では考えられず、それにしては被害範囲が大きすぎるし、「毒ガスの演習をしているのではないか」という疑いが濃厚である。
 (ニ) かつて朝鮮戦争で、そして現在はベトナム戦争で米軍はCB兵器を使用しているし、また沖繩にも持込まれている事実からみて、日本の米軍基地がCB兵器運搬の中継基地として使われたり、一時貯蔵が行なわれている事実はないか。
二 自衛隊はCB兵器の研究開発を行ない、またその実験訓練をしているのではないか。
 1 自衛隊は、いかなるCB兵器をもち、いかなるときにそれを使用するのか。
   特に、今度の沖繩毒ガス事件の原因となつたGBガス(神経性ガス)をすでに持つているのではないか。あるいは実験用と称して米軍よりGBガスを貸与されている事実はないか。「野外における化学剤の作用」教範はC兵器使用を前提としているし、「化学学校記事」では実際にGBガスを使つた想定演習を行なつている事実が記載されている。
   (註)
   ※ 「野外における化学剤の作用」(陸上自衛隊教範一四 ― 三 ― 一)摘出
 2 本教範の目的は化学科隊員に次に関する知識を授けるにある
  (1) 化学戦に関連した気象の基礎原理
  (2) 局地気象予知と化学剤を用いる作戦におけるその効用
  (3) 化学剤運用計画に利用するための気象班の予報
  (4) 化学剤の使用、及び野外作用に及ぼす影響
 ※ 「化学学校記事」第十一号(一九六七年陸上自衛隊)摘出
  想   定
  (1) 目標地域 〇・八キロ×〇・五キロ
  (2) 気温傾度 中立
  (3) 風速・風向 約九キロ/時、概ね目標地域〇・八キロの辺に直角
  (4) 使用弾種 一五五ミリGB弾 六〇発
      問  題 危険を無視しうる風下危険距離を求めよ
      解  答 六キロ
 2 自衛隊はCB兵器の研究開発を計画しているのではないか。
   三次防技術研究開発計画によれば
  (イ) 無傷化学剤研究開発計画
  T用ガス(催涙ガス) 四三年度 二〇万円
  精神ガス(GBなど神経性ガス、LSD25など幻覚ガス、あるいはBZなどマヒガスか)
    四四年度 二〇万円
  (ロ) エロゾル噴霧器(化学剤噴霧器)
      四二年(部試)、四三年(技試)、四四・四五年(技試、実試)
  (ハ) Gガス(神経性ガス)関係器材の研究開発 ― 器材研究開発にはGガスが必要のはず。
      G用新皮膚防護剤 ― 四三年(委託)、四四年(試作)、四五・四六年(委託)
      G剤予防治療セツト ― 四一年〜四三年(委託)、四三・四四年(試作技試)
      精神障害予防治療剤 ― 四三年(委託)、四四年(試作)、四五・四六年(委託)
 3 CBR作戦に関する防衛庁の専門研究員、上級技官の増員、特訓計画はどうなつているか。
   三次防技術研究開発計画によれば、四六年度末の専門別研究員八五〇人のうち、CBR作戦に関係のある物理、化学(薬学、農芸化学を含む)数学、医学の専門研究員は二一六人にのぼり、上級技官に対する特訓は、軍事学、軍事技術の必修や、採用後、五〜七年の幹部クラスに対する兵器別専門分野についての特修、さらにこの中から選択して大学、研究機関への派遣の制度が設けられている。
 4 自衛隊は細菌(生物)戦にそなえ、人体実験を行なつているのではないか。(別紙)(一)
 5 自衛隊は公害調査に名をかり、化学・細菌戦の実験、演習を行なつているのではないか。(別紙)(二)
 6 昭和六年「関作命第三九八号其一」によつて(旧)ハルピン郊外の平房につくられた第七三一部隊、いわゆる石井部隊(部隊長、石井四郎)関係者は現在、防衛庁、自衛隊関係機関に何人就職しているか。
三 大久野島=旧陸軍造兵廠火工廠忠海兵器製造所=患者の救済は国賠法の対称になぜならないのか。


別紙(一)

            『自衛隊は細菌戦にそなえ集団人体実験をしているのではないか』

研究論文 「集団赤痢発生防止の研究」について    
  研 究 者 陸上自衛隊衛生学校副校長 陸 将 補 園  口  忠  男
      〃   研究部第二研究室長 二等陸佐 時 岡 正 十 郎
  指  導 陸上自衛隊衛生学校校長 陸   将 中 黒
  支  援   〃   勝田施設学校校長 陸 将 補 吉 武
  論文記載 「研究年報」(昭和四二年度)第一分冊  昭和四三年九月、陸上自衛隊衛生学校

 1 研究内容概略
  (イ) 目  的 成人集団人体実験による赤痢及び食中毒予防効果の追跡
  (ロ) 被 験 者 陸上自衛隊 勝田部隊々員 約一六〇〇名の成人集団
  (ハ) 期  間 昭和四二・六・一〜昭和四二・七・三一
  (ニ) 試験材料 「株式会社ミドリ十字」で開発した乳酸菌製剤「ポリラクトン」
      (プラセボ ― 外見的に同一の剤型であつて、カプセル内容に乳酸菌を加えな
      かつたもの)
  (ホ) 試験要領  
    a 部隊被検者約一六〇〇名をほぼ二分し、一群に真正カプセル(ポリラクトン)を、他群にプラセボを昭和四二年六月一日より七月三十一日にいたる二箇月間連続投与、(日曜日は除く)
    b 服用方法は、両群とも一日二回、一回一カプセルを朝夕に服用(隊員中には服用を怠つたものあり)
    c 総員に対する赤痢菌検便(培養検索はSS培地)直接採便法
  第一回 服用開始前 (一、四一六名)五月二五日、二六日、二九日
  第二回 服用後約一箇月 (一、四四六名)七月三日、五日、六日
  第三回 服用終了後 (一、二〇五名)八月一日、二日
  (ヘ) 研究成績  
    ※ 観察所見(以下原文通り)
      薬剤服用における副作用と赤痢予防効果を見ることを期待したところ、偶然投与コースの途中で赤痢患者若干の発生があり、さらに投薬終了直後、集団食中毒(細菌性)の発生があつて、効果判定の好機会をえた。薬剤投与(プラセボ投与を含む)の期間と、事件発生の関係は左表のとおり。

薬剤投与(プラセボ投与を含む)の期間と事件発生の関係
     ※細菌性食中毒((註)参照)

  (ト) 総括(原文通り)
   (1) 約一、六〇〇名の成人集団(陸上自衛隊)を対象としてその約半数にポリラクトン、他の半数にプラセボを二ケ月連続投与して赤痢及び食中毒予防効果の追跡を試みた。(この種の多数の人に対する投与試験では被験者に確実に服用させることに統制上困難が伴うものである。本試験でも最初の三〜四週間までは、ほゞ計画どおり服用したものが多かつたが、二ケ月連続服用を続けた者は六三名にすぎなかつた。)
   (2) 服用後一ケ月後、二ケ月後に総員の検便を行つたところ、ポリラクトン服用者群及び非服用者群のいづれからも赤痢菌は検出されなかつた。すなわち、これらの総員検便によつては赤痢の予防効果を確かめることができなかつた。
   (3) ポリラクトン投与ほぼ四週間後に、たまたま二八名の者が集団として赤痢感染の機会に暴露し、非服用者群の五名中一名の患者と二名の保菌者の発生を見たが、ポリラクトン服用者群二三名からは患者も保菌者も出なかつた。本剤の赤痢感染、発病予防効果について多少の期待をもたらすものと思われた。

     ………………………………(省  略)…………………………………………

   (8) 要するに本剤は、赤痢予防及び赤痢保菌者治療を目標として、今後試用検討を続ける価値があるものと認めた。

(註) 細菌性食中毒発生
    本剤の試験服用期間の終了した直後、八月三日午前、たまたま集団食中毒が発生した。即ち八月二日昼食(副食イカの塩焼)実喫食者隊員一、〇八九名のうち、五七七名が八月三日午前から四日午前にかけて急性の食中毒病状を訴えた。
    患者の発生は、きわめて短時間(五〜六時間)で爆発的に多発し、その後は散発的となり二四時間で患者の新生発生はなくなつた。
    これらの患者の症状は、下痢を訴えた者四九八名、嘔吐を訴えたもの一〇七名ほとんど全員が腹痛を訴え、頭痛を訴えた者、三八九名に及んだ。

二 問題点 ― 質問事項
 1 乳酸菌製剤ポリラクトンの人体実験ではないか。
  (イ) 論文緒言によれば「この製剤は、あるいは赤痢ないし食中毒予防の目的を達するかもしれないとの希望がもたれた。よつて、この製剤の集団投与による効果判定試験を実施した。」とある。すなわち、効果は不明で希望的観測で人体実験をしていることに問題はないか。
  (ロ) 2研究方法(ウ)「無害性はすでに四〇〇名の臨床試験によつて確認されている」とあるが、この確認もまた人体実験によつてではないか。
  (ハ) ポリラクトンは市販されているか。
 2 研究は赤痢発生を前提としなければ成立しない。
   赤痢発生をなぜ予見されるのか、赤痢菌を投与したのではないか。
   それとも当時、勝田市には赤痢患者が発生していたので(患者六名、保菌者十一名)その赤痢菌に曝露するため、わざわざ二十八名の隊員は野外生活をさせられたのではないか。また半分にポリラクトン、半分にプラセボを与えたことは、当然、赤痢菌の存在(発生)を前提としなければ意味をなさないではないか。(当然赤痢発生を予想してのことである)
 3 四十二年五月に二名、六月に三名赤痢患者と保菌者が出ているのに、勝田市衛生部(保健所)に届出がしてないのはなぜか。(法定伝染病届出義務)
 4 八月三日突如として集団食中毒が発生したことにも疑問がもたれる。
   細菌戦では食中毒菌ポリスチヌ菌をどう使うかが世界的課題となつているからだ。ポリラクトンで食中毒予防効果の人体実験をしたとすれば、食中毒が偶然おこつたということにも疑問がもたれる。
 5 大牟田市の集団赤痢事件の教訓 ― かつて昭和十二年九月、大牟田市で集団赤痢発生事件がおこつた。(患者総数一万二千三百三十二人、死者七百十二人)
   当時、この事件の調査団(内務省、予防局防疫課、県衛生課、医学陣、陸軍省医務局のほか久留米十二師団軍医部が参加)は約五十日間にわたつて調査し、「水道の汚水以外にはとうてい考えられない」と原因を推論した。このため大牟田市の当時の水道課長、(注)本久光氏は引責辞職をしいられた。
   しかし、(1)水道から赤痢菌は検出できなかつたこと。(2)水道汚染説の決め手となつた水源井の番人の幼児、田中広稔ちやん(昭和十一年二月生れ)は赤痢でなく、消化不良であつたことが診療医師の署名押印した診断書、カルテに明記されていること。(3)水道水を飲用している全家庭から患者が発生しておらず、三井三池染料工業所(七月二十三日、衆院外務委員会で、わたくしが指摘したベトナム戦争枯葉剤二四五TCPを製造している三井東圧化学の前身)の周辺の住宅街に患者が集中していること。
   以上から水源汚染説には今でも疑問をもつ人々が多い。(注)本課長の当時のメモによれば、「真相は赤痢爆弾の爆発によるものではないか」と疑問をなげかけている。
   (注)本メモは憲兵隊や陸軍小倉工廠の情報として、九月二十二日、二十五日、二十六日の三日間に三井三池染料の秘密工場、N工場(硫化染料工場)で爆発事故がおこつており、負傷者は羽犬(注)伝染病院に運ばれたらしいことを指摘し、メモ用紙の余白には「特に秘」と記入して「十月二十五日、憲兵ノ言ニヨレバ、赤痢菌弾ヲ三井染料工業所ニオイテ、目下、海軍関係八割、陸軍二割、製作シツツアリ。戦地ニ使用中ナルコト。ナオ赤痢菌弾ノ件ハ小倉工廠調査ノ結果ナル旨聴取セリ」(メモ原文のまま)と添えられており、当時の彼の疑惑の目がここにむけられていたことがわかる。
   以上の事実は細菌戦用としてすでに赤痢菌弾が日本で製造されて日支事変で使用されていたことを立証するものであり、細菌研究部隊第七三一石井部隊の活動といい、C(化学)兵器開発の元祖はドイツであるが、B(細菌、生物)兵器開発の元祖は日本であつたことが明らかである。この大牟田市における集団赤痢発生事件と、この園田、時岡研究論文とは果たして無縁のものであろうか。
   また後で取上げる瀬戸内海沿岸における公害調査に名をかりた自衛隊の大気汚染調査訓練とあわせ考えるとき、これらの事実は敵に向かつて赤痢菌を撒布した地区に侵攻する作戦のための研究ではないと断言できる反証があるであろうか。

別紙(二)

   「自衛隊は公害調査に名をかり、化学・細菌戦の実験、演習を行なつているのではないか」
一 エロゾル散布によるCB作戦とスモッグの大気汚染研究方法は同一のものである。
  エロゾル散布を主体にした化学、細菌戦の研究、演習は、最近方々で問題になりはじめたスモッグに関する研究と結びつく可能性は十分である。
  スモッグがどういう気象条件のなかで生れたか、その発生を防ぐにはどうしたらよいか。という研究が、毒ガス、毒薬或は病源体をばらまいた場合、どうすれば、これがこまかい霧状で長時間、目的地域の上にとどまり、より効果的に兵器としての威力を発揮するかという方法の開発にそのまま役立つのである。
  穀物のより豊かな「みのり」をこいねがつておこなつた除草剤、殺虫剤の研究が、また人々を伝染病から救うためにおこなつた微生物の研究が、いつの間にか毒薬、毒ガスなどの化学兵器、病源体をばらまく生物兵器にそつくり利用され、人殺しの兇器となるのである。このようにわたくしたちのごく身近かにある研究や産業、人間に幸せをもたらすための研究や産業が、「みな殺し兵器」の研究開発、製造とは紙一重の隣り合わせの関係、うらおもての関係にあるという事実をわたくしたちははつきりと認識し、問題がアイマイになり易いだけに厳重な監視と観察が必要なのである。
  CB兵器とは、まさにそういう種類の恐るべき兵器である。
  ここに実例としてあげる通産省が最近行なつている一連の公害調査も、そのような意味で、公害調査に名をかりた自衛隊の化学、細菌戦実験、演習とみなさざるをえない。
二 陸上自衛隊機関紙「朝雲」七月三日付によれば、山口県の瀬戸内海を中心とした宇部、小野田地区(昭四三年九月〜四四年三月)、岩国、大竹地区(昭四四年六月〜四五年三月)、徳山、南陽地区(昭四四年六月〜四五年三月)六箇所の通産省による産業公害綜合事前調査に陸上自衛隊十七普通科(歩兵)連隊が全面協力をし、調査要領としては、けい光粒子「エアートレーサ」の拡散状況を、一・五キロ、三キロ、五キロ、七・五キロの地上四地区四〇箇所に設置された捕集器と、高さ二五〇メートルにまであげた気球の捕集器で捕え、汚染分布の基礎資料にするというものである。
  しかし、少しでも軍事知識のあるものからみれば、この調査が明らかに自衛隊の化学、細菌CB作戦の攻撃、及び防護訓練であることが分るであろう。
  とくに「適度の湿気」を有する気象条件(梅雨時期が最適)をえらび、サンプリングと収集を容易にするため、紫外線のもとで螢光を発する性質をもつ直径二ミクロンの亜鉛化カドミユムの粒子(エアートレーサ)を発射していることは、CB兵器、とくにB(細菌)兵器の発射、及び汚染区域の実験、訓練特有のものだからである。
  このことは米陸軍生物戦争研究所顧問リロイ・D・フオースギル氏の「生物兵器」に関する発表を読めば、全く同じ方法で「炭疽菌(無害化されたもの)」及び「直径二ミクロンの亜鉛化カドミユムの粒子」の風下汚染地域の実験結果を報告している。
  また前掲「化学学校記事」第十一号掲載「新しい化学剤及び生物剤の用法」(阿達憲、三佐)ではG剤(神経性ガス)風下危険見積(友軍の攻撃によるGB(神経性ガス)危険)の算定法を説明しているが、やはり同じ方法である。(左図参照)

風下危険状況図(オーバーレイ)の作成方法

三 生物兵器の攻撃方法は、兵器の技術開発の中でも一番秘密が守られ、攻撃目標も、人間、動物、植物など多様である。使用される細菌も多種多様である。
四 問題点 ― 質問事項
 1 山口県の公害事前調査のプランメーカーは誰か、調査責任者は誰か。
 2 自衛隊の協力理由は何か。
 3 協力部隊の編成、指揮系統を明らかにせよ。
 4 エアートレーサの種類、成分を明らかにせよ。
 5 三次防で創設予定の化学隊の全貌を明らかにせよ。

 右質問する。





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