衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
昭和四十五年十二月十六日提出
質問第二号

 タクシー労働者の労働条件の改善処置等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十五年十二月十六日

提出者  田代文久

          衆議院議長 (注)田 中 殿




タクシー労働者の労働条件の改善処置等に関する質問主意書


 三月十日及び七月十日に私が運輸委員会において行なつた、福岡県下のタクシー労働者の労働条件等の改善についての政府答弁は、その後の経緯等をみてもなお、事態の改善がみられないところがあるので質問する。
 また、政府の許認可に係る鉄道事業者が、車両の不規則運行と運行制限等を行ない、そのため、通常の利用者に対して著しい不利益と損害を与えている事実があるので、この件についても、質問する。

一(イ) 福岡県北九州市の自動車運送事業者は、表1及び表2に示すがごとき賃金表をもつて、労働組合との協議を一方的に打切り、労働組合の再三の申入れを拒否し、一方的な「賃金」の支払いを行なつている。これらの事実は、昭和四十五年一月以降のタクシー料金の値上げの条件とされた、昭和四十四年十一月二十一日付物価対策閣僚協議会及び交通関係閣僚協議会の決定及び昭和四十四年十一月十二日付労働省の通達及び昭和四十二年二月九日付労働省通達に著しく違背したものと思うがどうか。
 (ロ) また、「足切り額」の引上げや、いわゆる「応量カット」及び高度に刺激的な長時間労働にかりたてる累進歩合制又は変則積算制による賃金体系は、前記の閣僚協議会決定及び労働省通達に違背するばかりか、自動車運送事業の今日の社会的役割並びに政府の許認可業務に係る事業として看過しがたいのみならず、正常なる労使慣行の確立にとつて著しく逆行していると思うがどうか。
 (ハ) 更に、(1)事業者側が労働組合との団体交渉に応ぜず、協議の整う間は現在有効な協定に従うことを拒否して、一方的な賃金を支給することは、労働基準法第二条第一項、第二項、同法第七条及び同法第十四条に違反していると思うがどうか。(2)北九州市の自動車運送事業者の中には、一旦は、福岡県地方労働委員会に対して調停を申請しながら、当該事業者が雇用している労働者の他の労働組合との協議が整つたことを理由にこの申請を辞退し、労使交渉を拒否し、地方労働委員会への調停を停止している事実がある。このような行為は、労働組合法第七条第三号、昭和二十六年二月一日東京地裁における判決(社内に二つの労働組合が存在するときの事業者側の中立性)及び昭和三十年三月十四日高松地裁における判決(社内に二つの労働組合が存在するときの一方の労働組合と締約した協約は、他の労働組合には効力を及ぼさない)に違反すると思うがどうか。
 (ニ) こうした事実は、自動車運送事業者が運賃改訂を申請した後許可を受ける際、関係行政当局が前述の閣僚協議会の決定及び労働省通達を遵守せず、もしくは、指導、監督の基準をあいまいにし、労使双方の確認書、労働省通達による「適合した就業規則及び賃金規程の提出を条件」としなかつたことによる事態であると思うがどうか。
 (ホ) (イ)に指摘した場合のような事業者に対しては、行政当局は、(1)早急に、労使による団体交渉を再開するように指示すること、(2)地方労働委員会への調停を復活するよう指導し、(3)賃金の改善についての適切な勧告を行ない、(4)法令の遵守を命令すること、(5)なおこれに服しない事業者に対しては、営業停止命令を執行するか、もしくは法令に基づく処罰を行なうこと、などの処置をとるべきであると考えるがどうか。

 (表1)Sタクシーの場合の新旧賃金比較表

(表1)Sタクシーの場合の新旧賃金比較表

 (表2)K交通の場合の新旧賃金比較表

(表2)K交通の場合の新旧賃金比較表

二(イ) 道路運送法第百二十五条によつて設立され、認可を受けた社団法人は、その事業内容として、労働組合又は労働組合連合会の活動方針に対抗することを理由とするいかなる事業も行なうことはできないと考えるがどうか。
 (ロ) 前項に基づく社団法人が、構成する事業者に対して、労働組合との団体交渉を抑制させるためのゆえをもつて金員の担保もしくは、社団法人への金員の拠出、もしくはその社団法人による拠出された金員の没収などを義務づけることとした場合には、関係行政機関は、このような協定と義務は違法かつ無効であることを明示するとともに、排除命令等の処分を行なうべきであると考えるがどうか。

三 陸運事務所がその権限において行なう自動車運送事業者の申請に係る増車等の認可に際し、その認可の基準をあらかじめ定める場合、自動車運送事業者が道路運送法第百二十五条によつて設立された社団法人が行なう事業への寄与の度合を考慮するなどと定めることは、抽象的にすぎるばかりか、社団法人の役職者によるある種の好ましくない影響を当該事業者に与えるおそれがあるため適切でなく、行政執行者が、事業者団体の評価のみを受け入れる点でも適切な基準ではないと考えるがどうか。

四(イ) 西日本鉄道株式会社は、北九州市内における路線電車で運転乗務員一名のいわゆるワンマン電車の運行を開始し、このため、電車の走行が著しく不規則となり、通常の利用者において、「電車のこない時間が長くつづくかと思うと、四、五台もつづく」「同方面行きだけがつづいてくるときが多い」などと、つよい不満が出されている。一方、同社の労働者からは、「勤務体制が整わないまま、ワンマン電車にきりかえられ、操車場が無人化または廃止させられるなどの理由で、運行調整が行ないがたい」などの声も出されている。こうした事実は、同社電車事業が公共的使命を負つた事業にもかかわらずその使命を果たしておらず、著しく不当な行為といわなければならないと思うがどうか。また、同社の北九州市内を走行するこうした電車の不規則運転、事実上の「間引き運転」は、関係行政当局の認可に基づくものであるかどうか。
 (ロ) 同社は、社内のダイヤ編成の協議において、(1)現行走行キロを更に二千九百キロ削減する(2)電車の運転間隔を延長し、走行車両を削減する(3)早朝及び深夜の営業時間を短縮する(4)ワンマン電車を全線に導入する、などの計画をもつたとされている。同社はすでに昭和四十五年四月、走行キロにおいて二千三百キロを廃止している事実があり、こうした計画はきわめて一方的な、公共的交通事業としての認識を欠いた計画であり、利用者の利便を無視したものであると思うがどうか。また、関係行政当局は、こうした計画を察知しておるかどうか。
 (ハ) 昭和四十五年十月、運輸大臣は、同社の申請に係る運賃の値上げについて、平均十九・三パーセントの運賃の値上げを認め、「都市における通勤、通学を主とした輸送力の整備増強及び運転保安の確保を早急に行なわせる」と、条件を附したが、同社のこうした態度は、政府の方針とも反すると思うがどうか。
 (ニ) また、こうした不誠実な同社の運転変更の申請が行なわれた場合、不許可とすべきだと考えるがどうか。更に、行政当局は、同社の電車事業の公共的役割からみて、(1)走行キロ二千九百キロの削減を中止し、昭和四十五年九月一日現在の運行を維持すべきこと、(2)運行の不規則を解消するため、その原因となつているワンマン電車の増車をやめ、ワンマン電車は、比較的利用者の閑散な時間帯に限定すること、(3)操車場に職員を再配置するとともに、車両間隔を正常に保たしめること、などの正常運転に必要な最低基準を遵守すべきことを強力に指導、監督すべきであると考えるがどうか。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.