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昭和四十八年九月十一日提出
質問第一七号

 成田暫定パイプラインの安全問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年九月十一日

提出者  金瀬俊雄

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




成田暫定パイプラインの安全問題に関する質問主意書


 成田本格パイプラインの完成遅延の責任を、千葉市以外での事態を隠ぺいしたまま、千葉市住民の反対運動に転嫁し、パイプラインの安全性に対する千葉市住民の素朴な不安や疑問になんら論理的、技術的に対応しえないまま、当事者能力を失つたといわれている新東京国際空港公団は、「千葉がだめなら成田があるさ」とばかりに、なりふりかまわず成田暫定パイプラインの建設を今まさに強行せんとしている。千葉市住民との間でパイプラインの安全問題を未解決にしているがゆえに、成田市においてもパイプライン反対の住民運動が、安全性を課題として当然のことながら発生した。
 しかし、成田市のパイプラインの反対運動は、安全性を課題としながらも実際には、これを本質的に解決するという形ではなく、政治的取り引きによりその決着がつけられようとしている。この中にあつて、パイプラインの安全性をあくまでも追求し、日本国憲法のもと、自らの生命・生活を守ろうとしているのは、パイプラインの沿線地域の住民たちである。しかし、このパイプラインの安全保持のためには、パイプラインによる災害防止を目的とする石油パイプライン事業法は作用しない。
 成田暫定パイプラインの安全確保に寄与すべき法律は、消防法である。しかるに、これだけその安全性が社会的問題となつているにもかかわらず、パイプラインに関する具体的な規定は消防法にはないのである。消防法第十条に危険物の規制についての規定があり、その技術上の基準は、政令(危険物の規制に関する政令)により定められるとあるが、このいずれにもパイプラインという言葉すらでていない。
 その成立以来、福祉優先を号乎してきた田中内閣としては、住民生活の安全を守る、基本的人権を守るのはなおさらのこと憲法上の義務でもあろう。そこで、私は、成田暫定パイプラインの安全問題にかかわる諸点について、自らの良心に誠実に従い、社会正義を追求するという立場から、次に若干の質問を提起する。

一 成田暫定パイプラインの安全を保証する法的根拠について
  成田市では、危険物一般取扱所に関する規定を準用して消防法第十一条に基づき、空港公団に対し、パイプライン送油施設の設置の許可を発出した。しかし、この一般取扱所に関する規定は、パイプラインの存在を前提としたものではなかろう。田中通産相(当時)は、石油パイプライン事業法の審議に際して、パイプラインのもつ危険性に対して法制を整備して国民の生活を守るのは政府の責任であると主張している。
 (1) 田中首相は、現在石油パイプライン事業法の適用にならないパイプラインのもつ危険性に対して、国民の生活を守るに足る法制が整備されていると考えるか。もし整備されているとするならばその根拠、とくに危険性に対する技術的な安全保証の具体的な内容を明らかにされたい。
 (2) 災害防止のため石油パイプライン事業法を制定したにもかかわらず消防法を整備する必要がないとするならば、その理由は何か。
 (3) 消防法を整備する必要があるならば、現在に至るも整備されていない理由は何か。責任の所在を含めてこの間の経過と事情を明らかにされたい。
 (4) 消防法第十一条第二項による許可において、成田市では、パイプライン送油施設にかかわる件につき、危険物一般取扱所の規定を準用しているが、パイプラインの安全保持の面からいつて適当であると考えるか。根拠をそえて明らかにされたい。
 (5) 適当であるとするならば、例えば、石油パイプライン事業法にかかわる技術基準が告示されても、とりわけ消防法令の規定を変える必要がないということなのか。
 (6) 適当でないとするならば、成田市へはどのような行政指導がなされたのか。この件に関して成田市から照会があつたのか。各々の内容を具体的に明らかにされたい。
 (7) 道路法による道路占用許可は道路管理者の自由裁量であるのに、消防法による許可は覊束裁量である。成田市へなされた行政指導の内容の根拠及び責任の所在を明らかにされたい。とりわけ、政府の責任と成田市長の責任との関係を明示されたい。
 (8) 成田市が空港公団との間でかわされたパイプラインの安全性にかかわる協定書は、あくまでも、成田市と空港公団との私的な関係であつて、国民の生活を守るための政府の法制整備の義務の一環とは考えられないと思うがどうか。逆に、政府がその責務を十分果たしていないがゆえにかかる協定書が存在するとは考えないのか。各々理由をつけて明らかにされたい。
 (9) パイプラインを敷設するには技術基準が必要である。石油パイプライン事業法にも定められている。あらゆる面からの技術批判に耐えうる技術基準、しかもその安全性に対する配慮が完全であつて、世界にも範たりうるような立派な技術基準ができるまで空港公団による成田暫定パイプラインの着工を中止させる考えはないのか。もし中止させないとしたら、先の国会での田中通産相(当時)の発言(パイプラインによる災害から法制を整備して国民の生活を守るのは政府の責任である。)と成田暫定パイプラインの周辺に居住する日本国民の守られるべき生活との関係はどのように説明されるのか。
二 地元との合意のとりつけ方及びそのための条件についての疑義
  暫定パイプラインを敷設するに当たつて、空港公団による成田市及び同市沿線地区との合意のとりつけ方及びそのための条件について、次の諸点につき具体的に明らかにされたい。
 (1) 成田市寺台区との合意の条件として、イ 街路灯の設置(旧道) ロ 寺台付近の道路の整備(四地点) ハ 公民館の設置及び成田市吉倉区との合意の条件として、共同利用施設(鉄筋コンクリート造五十坪)の設置がとりきめられた。このような処分を空港公団が行える法的根拠及びその限度額について。
 (2) (1)の処分にかかわる必要経費のそれぞれの概算値について。
 (3) パイプラインの安全性が問題とされているのに、このような条件により、パイプライン埋設の合意がとりつけられたが、このことを適当であるとするならばその理由について。
 (4) 例えば、寺台区(区長及び評議員)との合意をもつて、寺台区内の暫定パイプライン沿線住民の合意としたが、このことを適当とするならばその根拠について。
 (5) 寺台区の住民は、暫定パイプラインの危険性に関してそれぞれ同程度の発言権(保全権)を有すると考えるか。もし考えるならその根拠について。
 (6) 寺台区の住民は、暫定パイプラインに関して同程度の危険性にさらされていると考えるか。もし考えるならその根拠について。
 (7) 同程度の危険性にさらされるものが、その危険性に関して同程度の保全権を有すると考えるのは誤りであるか。誤りとするならその理由について。
 (8) 成田市が暫定パイプライン敷設のために、市道占用許可を出した四日後に、空港公団から一億百万円ほどが成田市へ空港関連成田市道整備事業費として支払われたが、この支払いの法的根拠について。
 (9) この支払いが、新空港建設資材輸送に伴う道路維持補修費であるとするならば各道路ごとの算定根拠について。
 (10) 資材輸送により維持補修を必要とされた市道に対してのみ算出されているとしてよいか。
 (11) 例えば、成田市道の久米吉倉線で吉倉、久米野地区で、およそ二キロメートルの工事が行われているが、この道路は、遠山小学校、同中学校への児童の通学路と聞く。この道路を用いて、いかなる資材が、いかなる形で輸送され、その結果、道路にどのような維持補修を必要とさせたのか。
 (12) 空港公団による市道整備事業と、成田市長の意見も反映しているはずの空港周辺整備計画に基づく市道整備事業との関係を述べよ。
三 成田市の水源について
  成田市水道の水源は、地下水を用いており、この地下水源の上を暫定パイプラインは通過する。又、暫定パイプライン周辺の地区では、浅井戸が各戸別に水源として用いられている。次の諸点につき具体的に明らかにされたい。
 (1) 空港公団と成田市との協定書では、無過失責任のようなことがうたわれているが、万一パイプラインからの漏油により、成田市の地下水源が汚染された場合、地下水源を放棄して、あくまでも金銭的に処理させるつもりなのか。
 (2) 水資源に赤信号の出ている南関東地域、その一部である千葉県の水資源を考えてみても、この北総台地の地下水源を放棄することを適当であると考えた上でのことであるのか。
 (3) パイプラインによる給油方式を前提とした成田空港の位置を決定するとき、この水資源問題は、どの程度真剣に考慮されたのか。
四 タンクローリーによる輸送について
  暫定輸送用として、土屋及び空港に設置される給油施設には、タンクローリーとのジェット燃料油の授受装置も計画され、その一部が着工されているようである。これはタンクローリーにより空港ヘジェット燃料油(又は、ジェットBだけとか)を土屋、京浜地区あるいは京葉地区から輸送することが、場合によつてはありうるとの前提のために、用意されるものか、又は単に、血税の浪費に麻痺した空港公団の趣味的な作意にすぎないのか、その他その理由を明らかにされたい。

 右質問する。





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