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昭和四十九年六月三日提出
質問第三六号

 政府の財政状況報告に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年六月三日

提出者  北山愛郎

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




政府の財政状況報告に関する質問主意書


一 憲法は第九十一条において、財政状況の報告について「内閣は、国会及び国民に対し定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。」と規定している。これは直接に憲法のなかで政府に特別な報告を義務づけている唯一の規定であり、憲法が財政民主主義と財政公開の原則を重視していることを示すものである。
  しかるに、政府は年に約二十五種に上る白書を作成し、そのうち法律の規定に基づく農業、漁業、林業、中小企業など八件の報告書については、正式に国会への報告として、本会議において質疑が行われており、その他経済白書をはじめ十七件の各種報告も広く印刷公開されているにもかかわらず、憲法に明定されている重要な報告書である財政状況報告のみが国会にも提出されず、国民にも提示されていないのは、憲法に規定された内閣の義務を怠るものであり、明らかな憲法違反であると思われるが、政府の見解を聞きたい。
二 財政法第四十六条には、予算が成立したときの国民に対する財政状況報告及び毎四半期ごとの予算使用や国庫の状況などを国会及び国民に報告することが定められているが、これらの報告は概略的な説明や部分的な資料にとどまり、国の財政状況の全容を伝えその実態を分析解明するものとはなつていない。地方財政白書はあつても、国の財政白書がないということはまことに奇怪であり、地方財政白書については、国会の本会議において、質疑案件の取扱いをうけているのに、国の財政については、四半期ごとの予算使用や国庫状況の簡単な資料が議員に配付されるにとどまるなどは全く権衡を失するものといわなければならない。いうまでもなく、近代国家の財政の役割と機能は複雑化し、資源配分の調整、国民所得の再配分、経済の安定と成長などの政策手段として運営されており、従つて国の財政状況の報告もまた、単に収支の均衡や財政健全化の角度からだけでなく、これらの財政機能の実態と効果を分析説明する内容を備えたものとならなければならない。
  政府は、財政法第四十六条の報告をもつて足れりとすることなく、改めて憲法第九十一条の規定に基づき毎年一回、以上のような詳細な内容をもつた国の財政状況報告(財政白書)を作成し、国会及び国民に提示することが必要であると思うが、政府はその実現につき検討する意思ありや否やを明らかにせられたい。
三 国の財政のなかでも、国民の負担とくに租税の実態について、国会及び国民に対する公式の状況報告がなされていないのは重大な欠陥である。
  国税通則法をはじめ諸税法は、国民の納税義務の履行や租税収入の確保については精細に規定されているが、徴税者たる国の守るべき諸原則や義務についてはほとんど規定されていない。とくに租税負担の実態を公開する規定は一部の高額所得者の申告公示以外にはほとんど見当たらないのである。それゆえ納税者たる国民は租税の実態について知らされないままに一方的な納税義務履行を強制され、これが納税に対する国民の不信を高めていることは否定できないのである。とくに租税特別措置など公平の原則に対する例外的な税の減免措置については、それが特定の政策目的のために行われるものだけに、個々の特別措置による租税減免の実績はもちろん、その目的とする政策効果の有無についても詳細な報告が必要であるのに、政府は毎年の予算案審議の際に、極めて不十分な減収見積りを提出するにとどまるなどは全く不当といわなければならない。
  例えば昭和四十四年度に始められた土地譲渡所得の低率分離課税の特別措置などは、多数の土地成金を発生させ、不労所得に対してばく大な減税を行いながら、一方では法人会社の土地投機を刺激し、地価を高騰させる結果を招いた疑いが十分であるにもかかわらず、政府はその実態について報告を怠つていることは納得できない。
  政府は、速やかに土地譲渡所得課税についての特別措置の実績と効果について国民に公表すべきであると思うがどうか、見解を承りたい。また、政府の作成する行政白書は二十五種に及ぶが、そのなかに国民の重大な関心事である国の租税については正規の報告書が一つも提出されていないことは、租税に関する秘密主義、権力主義を感ぜしめる。
  政府は、毎年租税実態報告書(租税白書)を国会及び国民に提出公開して、税制民主化を図るべきであると思うが、これを実施するかどうか見解を明らかにせられたい。

 右質問する。





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