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昭和五十年七月一日提出
質問第二六号

 不動産登記法第百五条に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十年七月一日

提出者  大出 俊

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




不動産登記法第百五条に関する質問主意書


 さきに、昭和五十年三月十一日に提出した不動産登記法第百五条についての法務省民事局長通達に関する質問に対する答弁は、「本件民事局長通達は不動産登記法第百五条の解釈そのままを示したものである。」から、同条及び同通達に従う不動産登記法の運用には、違法の点が考えられないから、何等改善の必要がないとの答弁である。
 しかしながら、私は、本件民事局長通達による第百五条の運用には、前回の質問のとおりの違法があると考えるので、その根拠規定である第百五条を改正し、所有権移転仮登記に基づく本登記申請を、登記権利者及び登記義務者の共同申請により、本件民事局長通達に従う利害関係人の承諾書の添付を要することなく、これを受理し、直ちに本登記をするのが相当であると考えるが、疑問の点があるので、主題の件につき改めて政府の見解を伺いたい。

第一点 不動産登記法第百五条の条項は、これを廃止すると、所有権移転仮登記に基づく本登記申請は、昭和三十五年の同条創設前の昔の手続に戻り、本登記の手続は改善されて、Bは本件不動産所有権を、次のとおり完全に行使することができると考えるが、どうか。
 一 実体的所有権を取得した登記権利者Bは、登記義務者Aと共同申請による所有権移転本登記申請を受理されるので、昭和三十五年以前の昔のように、直ちに第三者対抗要件を具備することができる。
 二 Bは、所有権者として、直ちに本件不動産を賃貸し、抵当権を設定し、売却することができる。
 三 Bは、民事訴訟法の執行方法に関する異議によつて、C及びDの各仮差押の登記を簡単に抹消することができる。
 四 Bは、X´と任意競売の取下げにつき和解をして、本件不動産を任意にかつ高価に売却して、抵当権者W、X及びYを競売手続によるよりも多額の弁済で満足させ、Aの債務を減少させることができる。
 五 Bは、Zの賃借権設定登記につき和解をなし、又はその抹消請求の訴において容易に勝訴することができる。
 六 従つて、Bは、世田谷登記官に対する本登記申請却下処分取消訴訟に敗訴したり、C及びDに対する本登記承諾請求訴訟において、未だ訴訟係属中というような不利益及び本件不動産を未だ売却することができないため、W、X及びYに弁済することができないという不利益を受けることがないことになる。
第二点 仮登記における順位保全の効力は絶対的効力であるから、内閣は、右効力を尊重しなければならないと考えるが、どうか。
 一 登記官は、Bの所有権移転仮登記をなすと同時に、将来なさるべき本登記の順位を保全するため余白を準備した。この余白は、仮登記の順位保全の効力が絶対的なものであることを手続上具体的に表現したものであると考えるが、どうか。
 二 ところが、内閣は、本件民事局長通達によつて仮登記の順位保全の効力を否定したのである。従つて第百五条は無効な条項として廃止されなければならないと考えるが、どうか。
 三 登記官がこの余白を準備したことにより、Bは順位保全の原則に従つて、その後に、いかなる登記がなされても、その余白に本登記をすることができるという予約権を取得したことであると考えるが、どうか。
 四 この余白は、登記官が職権で準備したものであるから、Bがこの予約権に基づきAと共同で本登記申請をしたならば、登記官は必ずこれを受理して、この余白に記入しなければならない職責があるものと考えるが、どうか。
第三点 第百五条の条項の廃止と共に、F、B´及びBの三者の所有名義が併存して、公示上の混乱が生ずる場合の措置として、同条を次の第一項のとおり改正するのが相当であると考えるが、どうか。
 一 登記官は、Bの所有権移転本登記をなすと同時に、職権をもつて、弐番所有権移転登記に附記登記をなして、「Bが同日から所有者になつた。」旨の公示をすれば、所有権者についての現在の権利関係を明確に公示することができると考えるが、どうか。
 二 内閣は、Bが所有権移転本登記を受けた場合には「B、B´及びFは、ともにAから所有権の移転を受けたものとして三者の登記名義が併存することになる。このような状態を放置した場合、これらの者の権利の優劣を登記簿に記載された受付番号のみによつて判断することは不可能であり、所有名義人が二人以上存在することになり、第三者から見ていずれが真正な所有者か不明になる等の公示上の混乱を生じ、不動産に関する権利関係を明確に公示するという登記制度の趣旨に反するから、B´、F及びEの三者の所有名義を、この三者の承諾書によつて職権抹消するのが、第百五条の解釈である。」と答弁しているが、右は次のとおり、誠におかしな解釈であると考えるが、どうか。
  (一) 排他的な不動産所有権には、登記名義人が二人以上併存することはない。
  (二) 所有権の優劣は、実体法及び登記簿に記載された受付番号のみによつて決定されるものであつて、この決定が不可能なことはない。
  (三) 第三者からみて、いずれが真正な所有者か不明になると考えられる場合の措置としては、第一項どおりの附記登記をすれば、公示上の混乱は完全に防止できる。
  (四) 登記における所有権の優劣は、実体法上明確であり、登記官が心配する権限事項ではない。従つて登記官が職権抹消権を濫用して、ここに介入することは許されない。
  (五) 内閣は、Bが本登記をするためには、「Bは第百五条に従つてB´、F及びEの三者の承諾書の添付を要する。」と答弁しているが、内閣によつて右のように解釈されている同条は、明白におかしな規定であるから、直ちに廃止されなければならない。
  (六) 所有権の移転は、登記簿上の歴史的事実であるから、答弁のように、Bの本登記の際に、A、B間に実在したE、F及びB´の三者の各所有権移転登記を職権で抹消することは、右A、B間を連結しなければならない右三者がそれぞれ所有権を取得していた歴史的事実に空白を生ぜしめることであつて、誠におかしい。
  (七) 不動産登記法第百四十六条第一項の規定は、その登記名義人の所有権が無効であるために抹消するものであるから、右抹消登記権利者である復帰者の所有権が、当然に連続していたことになるので、所有権移転登記とは本質的に相違する登記手続である。従つて、右のように本質的に相違する第百四十六条第一項の抹消登記手続の規定を、第百五条で所有権移転登記手続に準用することは、右第百五条が本質的におかしな規定であると考える。
  (八) ところが、内閣は、第百五条の右規定の欠点を意識しない結果、登記官をしてC、D、X´及びZの四者の承諾書の添付を強要して、国民の不動産所有権を違法に侵害して、これを苦しめ、最高裁判所の判決を混乱に陥れ、前回の大法廷判決をもつてしても、なお、収拾することのできない混乱に陥れたのであると考える。
第四点 第百五条を第一点及び第三点第一項のとおり改正することによつて、不動産登記法、民法及び民事訴訟法における基本原則は、昔のように適法かつ正当に実施されて、登記行政は円滑に運用され、国民の権利は保護されることになると考えるが、どうか。
 一 Bは、実体法上の所有権を取得したときには、直ちに本登記をすることができる結果、B、Aは、共同申請の原則、登記と実体法上の権利関係の符合の原則、登記が所有権移転の効力発生要件ではなく第三者対抗要件であるとの原則、仮登記に第三者対抗力なしとの原則及び仮登記の順位保全の原則によつて保護されることになる。
 二 仮差押及び任意競売申立の登記は、単に競売手続が開始したことを公示するものであるから、Bは、仮登記のままで、右各登記を本登記前に抹消することができないし、また昔のように、登記官が職権で抹消する必要もないのである。
第五点 不動産登記法は、前記大法廷判決により、次の点において混乱したことが認められるが、これは第百五条のおかしな解釈による登記行政の運用によつて発生したものと考えるが、どうか。
 一 同判決は「仮登記担保権」という法定外の担保権を創設して、Bのように実体法上の所有権を取得し、かつ、引渡しを受けた所有権者が、本件民事局長通達によつて、本登記をすることができない窮状を救済する目的で創出されたものであると考えるが、どうか。
 二 仮登記担保権は、所有権移転仮登記に実質的に第三者対抗力を付与したもので、仮登記の基本原則に反するものであると考えるが、どうか。
 三 仮登記担保権は、仮登記の順位保全の原則を否定したものである。よつて、昔のように先づ所有者に本登記をさせて、所有権に基づいて権利を行使させれば、より強く保護されるものと考えるが、どうか。
 四 競売申立の登記がなされると本登記ができない旨の判示もおかしいと考えるが、どうか。
 五 大法廷判決は、一号仮登記及び二号仮登記につき各別に判示することまでは、できなかつたので、今後の仮登記につき新たな問題が発生したものと考えるが、どうか。
 六 大法廷判決については、その他不動産登記法上の種々の問題点がにぎやかに論争されているが、右は第百五条の改正によつて相当に解決できるものと考えるが、どうか。

 右質問する。





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