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昭利五十四年三月二十二日提出
質問第一四号

 社会保険診療報酬支払基金における男女賃金差別の早期是正に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭利五十四年三月二十二日

提出者  田中美智子

          衆議院議長 (注)尾弘吉 殿




社会保険診療報酬支払基金における男女賃金差別の早期是正に関する質問主意書


 社会保険診療報酬支払基金(以下「基金」という。)は、政府関係の特殊法人で厚生大臣の監督を受け、全国に四十八事務所を配し、現在従業員約五千四百名を有している(うち、女子職員は二千七百名余)。基金には、全国社会保険診療報酬支払基金労働組合(以下「全基労」と称す。)が存在しており、この外に第二組合(以下「基金労組」と称す。)が存在する。
 基金は、これまで多くの不当労働行為、人権侵害を行つてきたなかで、中央労働委員会関与の下に、昭和五十三年一月二十五日全基労と和解協定に調印した。(以下一・二五協定」という。)
 右協定書のなかで、従来存在した全基労組合員であることを理由として昇格が著しく遅らされていた男子組合員については賃金差別の是正が行われたが、女子については是正が行われず、全基労の強い要求にもかかわらず、継続交渉に持ち込むこととなつた。
 しかし基金は、協定書で明文化されている労使交渉も行わないまま、その直後である二月二十八日に基金労組と「二・二八確認」を締結し、男女差別を一層拡大し固定化するという暴挙を行つた。
 すなわち、右「二・二八確認」は、勤務成績にかかわりなく一定の勤続年数のみを基準として、男子全員をその年数に応じ一律に五ないし三等級に昇格させたものである。しかし一方女子は、基金の業務上、男子と同一労働に従事しているにもかかわらず、右の「二・二八確認」の昇格基準となつた勤務年数に達していた者も一名として昇格させられなかつたのである。
 この結果、例えば大泉十三子さんの場合、同一勤続年数の男子と比べ年収で約六十万円以上の差が生じる状態となり、この差別をそのまま放置するならば彼女の場合、退職時までには実に千二百万円もの差が生ずることとなる。基金の場合、五ないし三等級への昇格という形をとつているが、即賃金昇給であつて、これが今までに出された是正勧告書や、国会答弁でも明らかなとおり労働基準法第四条に違反することは明白である。
 第七十五回国会は、衆参両院の本会議において、「国際婦人年にあたり、婦人の社会的地位の向上をはかる決議」を全会一致で採択している。この決議は「婦人に対する差別は、基本的に不正であり、人間の尊厳に対する侵犯である」という国連の差別撤廃宣言を確認し、政府が婦人に対する差別撤廃に全力を挙げるよう求めたことは周知のとおりである。政府の直接の監督指導を受ける基金が、労基法や、国会決議を率先して遵守すべきであることは言うまでもない。
 しかるに、基金が全基労との協定も無視し、一切の団交を拒否し、「差別は存在しない」として今なお男女差別を是正しないのは、政府の怠慢行政のそしりを免れないものである。しかも全基労は、昭和五十三年八月二十四日、三田労働基準監督署に対し早急な是正と救済を求め申告を行つたにもかかわらず、七カ月も経つた現在、このような明白な男女差別事件について労働省はいまだに結論を出していないのである。
 労働省は結論が遅れている最大の理由として、最近になつて『「一・二五協定」の労使交渉が存続しているかどうか確認する必要がある』などと言い出している。しかし、これは事実の経過を全く無視したものである。それは第一に、基金は「一・二五協定」で差別是正のため交渉を継続すると約束しながら、一カ月後に全く逆の差別を拡大する「二・二八確認」を結び、その意思のないことを事実で示した。第二に、その後も数回にわたつて抗議と是正を要求したにもかかわらず、基金は「差別は存在せず、是正について話し合う余地はない」という態度をとり、交渉による解決の道を自ら断つたため全基労はやむなく申告に及んだのである。第三に、基金は三田労基署による行政権限に基づく調査の開始に当たつて、一度も「労使交渉の存続中であること」を理由として、調査を拒否していないばかりか聴取・資料の提出などに応じている。このことは基金側も労使交渉が死文化していることを認めているものである。第四に、労働行政の大原則である「労使自治への不介入」という立場から考えると、労使交渉が存続していたとするならば、その自主的な進展を阻害するような労働省の調査はあり得なかつたはずである。最後に何よりも今回の申告は「二・二八確認」が労基法違反であるとして申告したものであり、それ以前の「一・二五協定」とは無関係なのである。
 従つて労働省の言い分は、時間の経過を超越した論理であり、悪質なスリカエであるばかりか行政の責任を回避しようとする以外の何ものでもない。
 そこで以下の点について質問する。

一 前述のように、同一労働に従事していながら、女子を除外して男子のみを勤続年数で一律に五ないし三等級に昇格させたことは、明白な性別による賃金差別であり労基法第四条に違反すると思うが、どうか。
二 労働省のいう「労使交渉の存続」云々という理由は、前述したようにすでに破綻しているのは明らかである。申告以来七カ月が経過しようとしている現在、政府は本件について男女差別であると確認しているのかどうか。
三 男女差別であると確認し得ない又は、結論がでないとすれば、現在までに申告者・被申告者に対しどのような調査を行つたかなどを含め、その理由を具体的に明らかにされたい。

 右質問する。





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