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昭和五十六年四月一日提出
質問第二四号

 沖繩の米軍基地用地の強制使用手続等に関する関係法律の解釈と適用に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年四月一日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 福田 一 殿




沖繩の米軍基地用地の強制使用手続等に関する関係法律の解釈と適用に関する質問主意書


 沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律(以下「公用地暫定使用法」という。)及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(以下「米軍用地特措法」という。)に関する私の三度にわたる質問主意書に対する政府答弁書は、政府方針の矛盾の露呈を覆うに汲々とするのみで、事態の解明を避けたものと断ぜざるを得ない。
 政府が進めようとしている米軍の銃剣とブルドーザーによつての問答無用の土地強奪に端を発する三十余年にわたる土地取上げの実質的固定化が、国民の財産権の擁護を厳正に保障した憲法体系の下で許されるか否かという事の本質に鑑み、このような政府の態度は遺憾の極みと言わなければならない。
 政府が不法不当な米軍用地特措法の手続を直ちに撤回すると共に、早急に土地所有者の権利の回復を図ることを要求して以下に質問する。

一 渡邊伊助防衛施設庁長官(以下「渡辺長官」という。)は、三月三日の本院予算委員会第一分科会(以下「分科会」という。)において、「私どもは、境界明確化法が立法されて以来、鋭意この法律のたてまえに基づいて膨大な作業を実施してまいりまして、現地の土地を特定するだけのいろいろな資料、地図その他がございますので、私どもはそれに基づいて位置が特定できるというふうに考えておるわけでございます(以下略)」(第九十四回国会衆議院予算委員会第一分科会議録第四号。以下の分科会に係る引用はすべて同会議録による。)と答弁している。
  これは、政府が米軍用地特措法によつて使用しようとする土地(以下「使用対象土地」という。)の位置境界を確定するに足るだけの資料を所持しているということを述べているのか、それとも土地収用法第三十六条に規定する土地調書の満たすべき要件としては、対象土地の位置さえ特定できればよいと考えていることを示すものか。
二 沖繩県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法(以下「位置境界明確化法」という。)のたてまえに立てば、実施機関の長が入手した物証等の所在を示す資料はすべて同法第五条第一項の地図(以下「五条一項の地図」という。)に記載しなければならないものと考えるが、渡辺長官の前記答弁は、使用対象土地に係る五条一項の地図に記載したものの外に使用対象土地を特定するに足る資料を政府が所持していることを示すものか。
三 位置境界明確化法によれば、同法第十二条第四項の地図の作成の外には実施機関の長に対し、各筆の土地の位置境界を明らかにした地図を作成する権限を与えてはいないと考えるが、政府の見解はどうか。
  また、たとえ関係所有者といえども、同法第十条にいう全員の協議によるものでない限り、各筆の土地の位置境界を明らかにすることはできないと考えるが、どうか。
四 第二、第三問に関し、政府の所持している資料はつまるところ五条一項の地図につきるものと考えるが、物証又は物証の所在した位置を記載した地図から各筆の土地の位置境界を明らかにする権限のない那覇防衛施設局長は、どのようにして各筆の土地の位置境界を明らかにし、使用対象土地を特定したのか。
五 前問に関し、渡辺長官は分科会において、「周囲の地主の方々はすべて了承しているということであれば、おのずからその土地は特定されるということでございます。」と述べているが、これは周囲の土地所有者の一方的主張によつて一筆地の位置境界が確定するという許し難い暴論であり、我が党をはじめとする社会、公明三党が提出した、沖繩県の区域内における位置境界不明地域内の土地の位置境界及び地籍の明確化に関する特別措置法案の採択を拒否した際に、政府・自民党などが主張した「民事訴訟体系に反する」という論にすら矛盾するものと言わざるを得ないと考えるがどうか。
六 那覇防衛施設局当局者が、「私は位置境界明確化作業については全面的に協力致しますが施設の返還時期が明示され自由に個人で使用できる状態であれば押印します。」などと書いた理由書なるものへ土地所有者の署名、押印を要求している事実がある。
  位置境界明確化法の規定によれば、土地所有者が実施機関の長に対し協力しなければならないのは五条一項の地図の作成に関してのみであり、位置境界明確化作業一般への協力を義務付けるような規定はない。
  この文書はつまるところ、位置境界明確化作業の主体はあくまでも土地所有者であるということを忘れ、あたかも実施機関の長が主役であるかのごときの錯覚を抱かせ、土地所有者に対し那覇防衛施設局長が区割りしたとおりの位置境界の設定を承認するか、さもなくば集団和解を拒否するかと二者択一を迫るものであり、土地所有者間の協議に混乱を持ち込み、集団和解を破綻に導く許し難い民事への行政の不当介入であると言わざるを得ないと考えるが、政府の見解を求める。
七 渡辺長官は分科会において、「なおいま押印を拒否されている方々の主張は、位置境界そのものについての争いではなくて、ある方々は主義主張によつて反対をしておる、ある方はその土地を返還してくれれば判こを押してもいいというようなことを言つておられるということから考えますれば、私どもとしては位置境界というものはおのずから特定されているというふうに考えております」と述べている。
  “押印を拒否されている方々の主張は、位置境界そのものについての争いではなくて、主義主張によつて反対をしておる”と渡辺長官は断定しているが、戦争への反対の立場から軍事施設への土地提供を拒否するということは当然のこととしても、自己の所有権を確定するための作業である地籍明確化に反対する主義主張などというものについては理解に苦しむところであり、しかもそのような主張が位置境界明確化法第十条の協議の場でなされることなどおよそ考えられるところではない。前問で引用した理由書なるものにさえそのような記述は一切ない。
  これまたつまるところは、基地への土地提供拒否を集団和解拒否にすりかえることによつて集団和解を頓挫させようとする防衛施設庁当局のためにする発言と断ぜざるを得ない。
  このような集団和解への介入は直ちにやめるべきであると考えるが、政府の見解を求める。
八 分科会において渡辺長官は、「必要によりまして隣接地主等の立ち会いを求めたり、当該土地を実測するということは技術的には可能でございます。」と述べている。
  確かに、ある一定の土地を地積に応じて切り割りすることは可能と言えなくもないが、いわゆる“入り込み”を変更することなどは、土地所有者間の合意ぬきの単なる技術上の処理などによつては絶対許されない民事上の重大問題であると考えるが、政府はどう考えているか。
九 分科会において渡辺長官は、「位置境界について特定されてない、あるいははつきりしないという、一部の方々にそういう御意見があることは承知しておりますけれども、(中略)現地の土地を特定するだけのいろいろな資料、地図その他がございますので、私どもはそれに基づいて位置が特定できるというふうに考えておるわけでございますので、もしそれらの方々が特定できないということであれば、具体的な資料をもつて御提示をいただきたいというふうに考えております。」と開き直つている。このような態度は、憲法によつて保障された国民の権利の問題に関与する行政当局者のあるべき姿から見て、断じて容認し難いものであることを指摘して以下に質問する。
 1 土地調書作成のための現地確認の中で、那覇防衛施設局長が沖繩市安慶田の真栄城玄徳さんの所有する土地であるとして特定した嘉手納飛行場内の場所は、現に所在する同氏の旧居の屋敷跡とは明確に異なり、土地の形も細長い、とても宅地とは考えられないようなものであるという事が判明し、現場で同氏から異議申立てがなされているが、政府はこの事実を承知しているか。
 2 当該土地に係る五条一項の地図には当該屋敷跡が記載されているのか。
 3 当該土地の特定については根本からやり直さなければならないと考えるが、政府はどのような措置を講ずる所存か。
 4 政府当局者が反証資料を挙げよと大上段に振りかぶつて公言する以上、政府には関係土地所有者による物証の発堀調査を含む位置境界の確定のための調査を完全に保障する用意が当然なければならないと考えるがどうか。
 5 前問に関し、政府が土地所有者による反証資料収集のための調査を保障できないのであれば、渡辺長官の発言は、威かくによつて集団和解への介入をたくらむものか、さもなければ居丈高の空文句によつて那覇防衛施設局長による土地特定の根拠のなさを覆い隠さんがための言語道断の放言と断ぜざるを得ない。
   渡辺長官のこの反証を挙げよという答弁態度は直ちに改めるべきだと考えるがどうか。
十 那覇防衛施設局長は、日限の迫つた公用地暫定使用法の期限終了後の土地取上げ手続を強行するため、集団和解を意図的に暗礁に乗り上げさせると共に、集団和解の一方の当事者の主張(実態は自身の主張以外の何ものでもないと言わざるを得ない。)に仮借して、「地籍不明土地に関しては使用対象土地が特定できない」とするかつての政府見解を投げ捨て、土地の特定はできたとして地籍不明土地への米軍用地特措法の発動に踏み切つた。
  これはまさに、位置境界明確化法の実施機関の長の事務取扱者としての職務を逸脱し、職責を放棄するものと断ぜざるを得ない。
  質問第五から第九に引用した渡辺長官をはじめとする防衛施設庁当局者の言行は、この重大極まる不当行為を隠ぺいし、正当化せんがための強弁と言わざるを得ない。
  政府は、このような那覇防衛施設局長の不当行為によつて土地所有者の協議が破綻をきたしている事態にどう責任をとる考えか。
十一 内閣総理大臣による米軍用地特措法に基づく事業認定処分に関する以下の質問に答えられたい。
 1 内閣総理大臣は、事業認定処分に際し、位置境界明確化法の手続未了の使用対象土地の特定の当否について、米軍用地特措法第六条第一項の規定による関係行政機関の長若しくは学識経験者の意見を求めたか。
   意見を求めたのであればその意見の概要を、意見を求めていないのであればその理由を明らかにされたい。
 2 法務大臣及び建設大臣並びに国土庁長官は、それぞれ法務行政及び土地収用行政並びに国土調査行政の責任者として、沖繩県の位置境界不明地域内の土地の地籍明確化にどのような行政上の配慮を払つているか。さらに米軍用地特措法第六条第二項の規定により、位置境界明確化法の手続未了の土地に関する那覇防衛施設局長の土地特定に基づく内閣総理大臣による土地使用認定処分に際し意見を述べたか。述べたのであればその意見の概要を、述べていないのであればその理由を明らかにされたい。
十二 位置境界の明確化を専ら関係土地所有者のいわゆる集団和解に立脚せしめている位置境界明確化法の体系及びその根拠となつている「民事法体系から地籍確定は行政裁定になじまない」とする政府見解に立つ限り、沖繩県土地収用委員会には、位置境界不明地域内に所在する各筆の土地の位置境界を明確化する権限はないと考えるが、政府の見解はどうか。
  もし権限ありとするならば、これまでの政府見解との矛盾を明確に説明されたい。
  さらに、もし政府が、位置境界明確化法による権限はなくとも、土地収用委員会は土地収用法によつて使用対象土地の位置境界を明らかにする権能を有するという見解を主張するのであれば、立入禁止区域を含む米軍施設内における沖繩県土地収用委員会の全面的な権限行使を政府は保障しなければならないと考えるが、政府にその用意があるか否かを明らかにされたい。
十三 沖繩県土地収用委員会は自ら対象土地の位置境界を判示できない状態にある。
  かかる事態の下で、那覇防衛施設局長が前記のような不当かつ恣意的に「特定」した土地を使用対象土地とするに至るとすれば、国民の所有権への著しい侵害とならざるを得ない。
  位置境界明確化法の手続が完了しない限り沖繩県土地収用委員会は裁決を下せないことにならざるを得ないと考えるが、政府の見解を求める。
十四 公用地暫定使用法を適用している自衛隊用地については、土地収用法の適用はせず所有者に返還すると政府は言明している。政府がこの方針を決定した期日及び機関について明らかにされたい。
  また、再三返還の手順を明らかにするよう求めたにもかかわらず、これを明らかにしないのはあくまでも居座りを策しているのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。居座るつもりがないのであれば、現在着手している返還のための措置を明らかにされたい。

 右質問する。





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