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昭和五十六年五月二十一日提出
質問第三八号

 琵琶湖総合開発計画と琵琶湖の環境保全に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年五月二十一日

提出者  瀬崎博義

          衆議院議長 福田 一 殿




琵琶湖総合開発計画と琵琶湖の環境保全に関する質問主意書


 昭和四十七年に琵琶湖総合開発特別措置法が成立し、すでに十年が経過しようとしている。この間、琵琶湖総合開発事業が進められてきたが、事業量は四〇パーセント程度しか進捗しておらず、なかでも水質保全事業は大きく遅れている。そのため琵琶湖の水質汚濁は、南湖においては回復可能な限界点に達する状況であり、北湖においても水質の悪化が確実に進行している。近畿千三百万人の住民に飲み水を供給している琵琶湖にとつて、今や水質の回復と自然環境保全の措置をこれ以上放置することは許されない事態にあることは明らかである。
 こうした状況のなかで、滋賀県は琵琶湖富栄養化防止条例を制定、施行した。この条例実施が琵琶湖の水質問題解決に向けての第一歩を踏み出したに過ぎないものであることは、当の武村知事自身しばしば言明しているとおりである。しかし、第一歩を踏み出した段階で、滋賀県が財政負担の増大や中小企業の排水対策などの問題に直面していることを見るならば、根本的な保全問題の解決は、国において早急に取り組むべき時期にきていると言える。
 ところがこの時期に至つて、水資源開発公団による開発水量毎秒四十トン、水位変動幅プラスマイナス一・五メートルの利水事業の一環として、琵琶湖の湖岸堤、湖中堤建設や南湖しゆんせつの事業が具体化されはじめ、これが水質、自然環境保全に与える影響の問題として論議を呼んでいるのである。
 こうした状況を背景として、私は二月二十七日の建設委員会において、琵琶湖総合開発計画の見直しを中心に質問を行つたところであるが、このたび政府が「湖沼環境保全法案」の国会提出見送りを決めた新たな事態を踏まえ、改めて次の諸点について質問し、各項目についての具体的な答弁を求めるものである。

一 琵琶湖総合開発計画の見直しの現段階と問題点について質問する。
 1 今日、来年の三月末で期限の切れる琵琶湖総合開発計画の見直し作業が進められている。この点について、前記の委員会における私の質問に対して、原国土庁長官は「水質保全、水質の回復等を決して無視してやる考えはございません。」と答弁した。
   このことは政府部内において、琵琶湖総合開発事業は開発を優先するという方針から、今後は保全を優先するとの方針に変化してきたことを示すのか。
 2 また、同委員会で国土庁伊藤晴朗大都市圏整備局長は、県の見直し作業を待たないで、「各省連絡会の幹事会等におきまして、滋賀県のこの作業と並行して現在の計画の進捗状況等の点検、今後の方針等についての打ち合わせを開始した」と答弁したが、この各省連絡会の幹事会とは、法的にみてどういう性格と機能を持つのか。誰をその構成員としているか。これまで何回会議を開き、何を討議し決定したか。それはどういう効力を持つているのか。具体的に明らかにされたい。
 3 今回の見直し作業は、琵琶湖総合開発特別措置法にある計画変更を伴うものなのか。それとも軽微な行政措置程度のものなのか。前者であるならば、本来知事が見直し案を作成する段階から国においても並行して作業を行うことは、琵琶湖総合開発特別措置法上の知事の権限を超えた国の介入行為に当たらないか。後者だとするならば、見直しとは法律上の計画変更とは関係のない行為、すなわち、従来からの利水と開発優先の計画の基本を変えない範囲のものとならざるを得ない。現在行われている見直しはいつたいどちらなのか、見直しの目的は何なのか、明らかにされたい。
二 「湖沼環境保全法案」と琵琶湖総合開発計画との関係について質問する。
 1 「湖沼環境保全法案」の作成について、政府は、中央公害対策審議会から答申された「湖沼環境保全のための制度のあり方について」に基づいて法案の作業を行つている、と答弁している。答申によれば、制度の仕組みは、政府が「湖沼環境保全に関する基本方針」で湖沼の環境保全の意義や目的、基本的な構想、講じ得る施策、「他の法律に基づく関連諸制度との調整の指針等」を示し、それに基づいて知事が講じようとする施策をできる限り具体的に明記した当該湖沼の湖沼環境保全計画を策定、国がそれを承認するとなつている。また、政府は、前記建設委員会で、湖沼の環境を保全する措置は琵琶湖の特徴から見て当然必要なことだと答弁していることからも、琵琶湖は「答申」が示す湖沼環境保全計画策定の対象になるものと考える。従つて、「答申」が尊重されるとすれば、琵琶湖には、一方で琵琶湖総合開発特別措置法に基づく琵琶湖総合開発計画が適用され、一方で今後制定されるであろう湖沼環境保全法に基づく琵琶湖環境保全計画が適用されることとなる。
   この場合、両者の関係について、湖沼環境保全計画が琵琶湖総合開発計画を既定の事実としてこれと矛盾しないよう追認する形で作られるとすれば、そもそも湖沼環境保全法を制定する意義がなくなつてしまうのではないか。これがこの項の質問の第一点である。
   湖沼環境保全計画が「答申」の趣旨に沿つて独自性をもつて作られるとすれば、当然琵琶湖総合開発計画とは違つた内容のものとなると考えるのが順当ではないか。これがこの項の質問の第二点である。
   湖沼環境保全計画の内容が総合開発計画の内容と異なるケースを予想すれば、さらに、また、琵琶湖総合開発計画を保全優先に見直すというのであるならば、少なくとも「答申」に示された湖沼環境保全計画の項目にふれる琵琶湖総合開発計画の内容部分については見直し作業を留保すると共に、その関連事業を中止あるいは凍結し、「湖沼環境保全法案」の成り行きを見守るべきではないか。そして、「湖沼環境保全法案」の準備過程で当然考慮されるであろう琵琶湖総合開発計画と湖沼環境保全計画の調整手段との整合性を十分考慮して、琵琶湖総合開発計画見直しを進め、具体的な事業は湖沼環境保全計画を受けた琵琶湖総合開発計画に従つて実施すべきではないか。これがこの項の質問の第三点である。
 2 水資源開発公団の行う琵琶湖総合開発事業に湖岸堤・管理用道路や南湖のしゆんせつ等があるが、まず湖岸堤については、昨年十二月に同公団が滋賀県議会に対し発表した南湖東岸(守山市 ― 草津市)部分の湖岸堤・管理用道路は、延長十四キロメートル、うち六・七キロメートルが湖中堤となり、その結果、人造内湖が七つ造られることになつている。また、湖中堤は堤防の上部が幅十五メートル、底部が二十二・五メートル、前浜部分は三十〜百メートルとされている。
   この湖中堤は、前浜部分を含めてどれだけの面積を埋め立てることになるのか。この埋立てに用する土砂は何立方米か。その土砂はどこから調達しようとしているか。また、この湖中堤について、政府は環境保全に支障を及ばさないように配慮すると答弁してきた。加えて、「答申」は、「湖辺の環境保全のための措置」として「湖辺の自然的環境のもつ水質保全機能及び親水機能に着目した新たな地区指定の制度」を設け、開発行為を制限すること、「埋立、干拓、湖岸の改変等の工事の実施に当たつては、湖沼の水質及び湖辺の自然的環境の保全に十分配慮して行う必要がある」としている。このように湖辺の保全を図ることが最大の焦点になつている今日、湖中堤建設問題は「答申」に沿つて検討し直すべきであり、県民の合意が得られるまでは凍結すべきだと考えるが、政府の見解はどうか。
 3 南湖のしゆんせつについては、同公団の「琵琶湖開発事業に関する事業実施計画」(昭和四十八年二月)においてしゆんせつ量を四百四十万立方米としていた。ところが、最近同公団が発表したところによれば三地区八十万立方米に変更されている。一方、建設省の「湖沼における環境保全について」は「河床のしゆんせつは湖沼の治水・利水容量を増やすとともに、底泥からの汚染物質の溶出を防ぎ、水質保全にも役立つている」と述べ、「琵琶湖総合開発事業における環境への配慮」として「環境保全対策事業」に大量の「しゆんせつ(約四百四十万立方米)」を挙げている。
   こうしたいきさつの上に立つて聞くが、同公団が八十万立方米に縮小したのは、いつ、どういう事態の変化があつたからなのか。
   さらに、「答申」では、「湖沼環境保全計画」の中に盛り込むべきものとして「しゆんせつ、導水、抜気、水草の除去、緩衝緑地の設置その他湖沼の水質保全に資する事業に関すること」としている。そもそも同公団が予定しているしゆんせつ事業は、保全のための事業なのか、それとも新規利水のための事業なのか、その性格を明らかにされたい。
   公団のしゆんせつ事業がたとえ八十万立方米に縮小されたとしても、それが水質保全に資する事業とはなり得ないことも考えられる場合、この事業も「答申」に沿つて検討し直すべきであり、県民の合意が得られるまで凍結すべきだと考えるが、政府の見解はどうか。
三 「湖沼環境保全法案」の提出について質問する。
  当初三月中旬には提出すると言われていた「湖沼環境保全法案」は、今日に至つて提出されないこととなつた。
  二月二十七日の建設委員会での私の質問に、政府は、具体的な法律案については現在関係省庁と話合いを進めている段階と答えたが、この関係省庁とはどこであつたか。そのなかで最後まで調整ができなかつたのはどこの省庁なのか。その際、調整できなかつた最大の問題は何であつたか。明らかにされたい。
四 琵琶湖が近畿千三百万住民の“いのちの水がめ”であることは、万人の認めるところである。我々は、「下流の水需要にどうこたえるか」という観点から琵琶湖問題をとらえることを否定するものではないが、同時に、自然が人間に与えた水の宝庫を、ただ水需給の量的バランスをとればよいという利水拡大の観点からダムと同様の考え方で開発に取り組むなら、琵琶湖が“いのちの水がめ”でなく“汚水の水だめ”になる危険に対しても十分留意して置かなければならないと考える。琵琶湖の利水を考えるときには、必ず水質保全と子々孫々の時代のことをまずもつて念頭において置くべきではないだろうか。
  このもつとも基本的な問題について、私は、前記の建設委員会で、琵琶湖総合開発計画の前提となつている、昭和四十七年三月二十七日の「新規開発水量毎秒四十トン、利用水位変動幅プラスマイナス一・五メートル」を決めた、建設大臣、大蔵大臣、経企庁長官、自治大臣、大阪府知事、兵庫県知事、滋賀県知事、自民党政調会長間の「申し合せ」が、環境問題を対象にしておらず、機構上も環境庁を入れてなかつたことを指摘し、琵琶湖総合開発計画の見直し作業は「四十七年三月の申し合わせ時点に返つて、環境庁なども含めて、水質問題も含めて…申し合わせそのものの検討のし直しからやつていくべきではないか」とただした。これに対し、原国土庁長官は「結論的に先生がおつしやつたことは賛成でございまして…」と答弁、また、建設省小坂河川局長は「申し合せ」の性格について、「いわゆる法的には決まつたものではございませんので、ただ、行政的には意味があろうかと思います。」と答えているのである。原長官も「結論的に賛成」を表明した私の提案について、具体化をどう考えているのか、明らかにされたい。

 右質問する。





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