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昭和五十六年六月三日提出
質問第四三号

 在日外国人に対する人権侵犯事件に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年六月三日

提出者  上田卓三

          衆議院議長 福田 一 殿




在日外国人に対する人権侵犯事件に関する質問主意書


一 大阪府警察本部は、昭和五十五年十月十五日林銀(駒沢大学外国語学部講師)を外国為替管理法違反の被疑者として逮捕し、同月二十五日まで平野警察署に逮捕、勾留した。同人の被疑事実は、同人名義の第一勧業銀行東虎ノ門支店の預金口座が覚せい剤密輸代金の決済に利用され、同人が非居住者のためにする居住者からの支払を受領したというものである。
  しかしながら、右の逮捕、勾留は、その実質において、同人が覚せい剤密輸代金の決済に利用されることを知りながらその銀行口座を提供し、覚せい剤取引に関与したという本件被疑事実の捜査のために、軽微な形式犯に過ぎない非居住者のための居住者よりの支払の受領という別件被疑事実をもつて同人を逮捕、勾留したものであり、いわゆる別件逮捕に該当する。
  本件の場合、逮捕、勾留の被疑事実とされた別件について、同人は逮捕の際の事情聴取に際してすべて認め、裏付けのために必要な預金通帳等の証拠書類も既に押収されているのであるから、あえて同人の身柄を拘束する必要性は毫も存しない。また、本件とされた被疑事実についても、その後の捜査の結果、同人が覚せい剤取引に何ら関与していないことが明らかにされ、同人は同月二十五日、勾留期間の満了を待たずに身柄を釈放されたことからも、その嫌疑が極めて曖昧であつたことが明らかである。
  以上のような経緯に鑑み次のとおり質問する。
 1 本件の逮捕、勾留は、同人が銀行口座を覚せい剤取引の代金決済に利用させたという漠然とした疑いを捜査するために、外為法違反という軽微な形式犯の容疑により、その事実については何ら争つていない同人の身柄を拘束したものであり、逮捕、勾留の被疑事実そのものについてもその必要性が全く存しなかつたと解されるがどうか。
 2 一方、本件については、同人の弁明が認められ、同被疑事実については検察官に送致されることなく、勾留期間の途中において身柄釈放がされていることから考え、そもそも罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由さえ存しなかつたのではないか。
 3 以上の点から考えると、同人に対する逮捕、勾留は、捜査上の便宜のために、本来逮捕、勾留の必要のない被疑者を逮捕、勾留したものであり、捜査権の濫用ではないか。
二 読売新聞大阪版は、昭和五十五年十月二十三日付夕刊において、「駒沢大女性講師“地下銀行”の役割」「覚せい剤代金を決済、台湾から密輸、四か月間に一千万円」という大きな見出しの下に、社会面トップ七段抜きの記事で、右林銀の銀行口座が覚せい剤取引代金決済のための「地下銀行」の役割をしていたこと、振込金がいつたん同人の口座にプールされ、その後小切手にするか何らかの手段で台湾にいる密輸出元のところへ送金され、他にも密輸代金が決済されたと大阪府警生活課で見ている旨報道した。そして右記事の掲載が主たる原因となり、同人は後述のごとく大学講師の職を失つた。前述のごとく、同人が覚せい剤取引に何ら関係を有していないことは、同人が右容疑については送検もされぬまま身柄釈放されたことからも明らかであり、右記事の掲載により受けた多大な損害については、同人は既に東京法務局に人権侵犯事件として調査を求めるべく、本年四月十日、調査の申立を東京法務局人権擁護部に行つている。
  右に関連し、次のとおり質問する。
 1 大阪府警においては、被疑者として逮捕されたという一事をもつて社会的に犯罪者としての烙印を押される風潮の中で、被疑者である同人の人権、名誉にいかなる配慮をなしたか。
 2 本件の場合、右記事の内容のごとき発表が大阪府警生活課あるいは捜査担当者によつてなされた事実が存するか否か。
 3 仮に存在するとすれば、右発表の時点において、既に同人が覚せい剤取引については全く無関係であり、事情を知らぬまま口座を利用されていたに過ぎないことが判明していたのではないか。
 4 そうだとすれば、捜査の結果と異なる発表をなし、その結果、同人の社会的名誉に多大の損害を与えたことの責任をどのように考えるのか。
三 駒沢大学外国語学部教授会は、前記読売新聞大阪版記事の掲載により、大学の名誉を著しく傷つけたことを理由として同人を激しく非難し、同人を大学講師の地位にとどめることはできないとして、依願退職の形をもつて同人に教壇を去らしめた。教授会の構成メンバーでない同人は、真実と異なる右記事の掲載を主たる根拠として、何ら自己の立場を弁明する機会も与えられないまま教壇を追われた。
  右に関連し、次のとおり質問する。
 1 右教授会が、告知、聴聞の機会を与えないまま、同人の非常勤講師の職を失わしめた経過について、文部大臣は公正、妥当なものと考えるか。
 2 不安定な地位にある外国人非常勤講師の身分保障には特に配慮することが求められる。本人の被疑事実がすべて糾明され、本人の潔白が完全に実証された今日、本人の大学復職に文部省としても協力する必要があると考えるが、どうか。

 右質問する。





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