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昭和五十九年五月三十一日提出
質問第一八号

 保育問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年五月三十一日

提出者  辻 第一

          衆議院議長 (注)永健司 殿




保育問題に関する質問主意書


 近年、働く婦人の増加の中で、保育、保育所に対する各種の要求が増加し、ますます切実化、多様化の一途をたどつている。厚生省は、「国連婦人の十年」国内行動計画後期重点目標にも「育児等に関する環境の整備」を掲げ、また、今国会における委員会答弁等でも予算や施策の改善を図つてきたとしている。
 しかしなお、父母からは高い保育料や保育時間、保育内容など、地方自治体からは低い保育単価、保母配置基準など、民間保育園関係者からは低い補助金、公私格差など、関係者それぞれから種々の問題点や要求が出されている。
 これらの諸要求はそれぞれの立場から出されているものであるが、この根底には、国の保育政策、保育行政、保育予算の不十分さが存在している。
 従つて次の事項について質問する。

一 保育所運営費について
 1 国の保育所運営に対する補助金について、市町村、保育園関係者、保護者等はこぞつてその単価が実態と大きく乖離していると指摘している。
   その最大のものは、措置費の八十数パーセントを占める人件費であり、「保育単価のうち特に人件費の基準が低いので市の超過負担の大きな要因となつている。よつて保育単価の大幅な引き上げをされたい」(大和高田市ほか)との要求が強い。
   措置費の中の人件費の等級号俸が、職員の勤続年数の増加の中で現状に適さなくなり、この格付の低さが、給与水準を国基準並みとした場合でさえ、措置費中の人件費で職員給与を賄い切れない状態となつていることが、乖離の一つの大きな要因となつている。政府はこのことについてどのように考えているのか。
 2 この現行の単価の定め方について、「勤続年数の増加に伴う昇給を事実上認めない一律の人件費算定はおかしい」との関係者の指摘がある。この点についての政府の考え方はどうか。
 3 その他の費目についても、例えば被服費は昭和二十八年以来改定がなく、一人月額五十円で据え置かれていること。また、通勤費は月額千九百三十三円であるが、バスや鉄道の一区間分にもならず、一例を挙げると、奈良市内の一民間保育園では通勤費が一人平均月額六千円であり、千九百三十三円ではあまりにも実態とかけ離れている。
   これらの是正が必要だと考えるが、政府に改善の意思があるかどうか。
 4 本年度についても政府は一定の是正措置を講じたとしているが、それでもなお実態との乖離が解消されていない。政府は引き続いて改善に取り組む意思があるか。
二 職員の配置基準について
 1 〇〜一歳児では子ども六人に保母一人など現行の職員配置基準について、児童の健全な成長、発育の向上ときめ細い保育を推進するためには改善が必要との意見は、関係者の一致した意見である。現に、奈良県では〇歳児について子ども五人に対し保母一人、東京都では〇歳児について子ども三人に保母一人、一歳児について子ども五人に保母一人など、地方自治体の負担で保母一人当たりの受け持ち児童数を緩和している。国においても職員配置基準の改善を図るべきであると思うがどうか。
 2 職員配置基準は、保育内容とともに職員の健康問題にも大きなかかわりがある。例えば、奈良市のある保育所の場合、十五人の保母中五人が頸肩腕症や腰痛を訴えた例があつた。ことに乳児の過大な受け持ち数が保母の健康を損なつている。現に厚生省においても乳児保育特例措置で一定の条件のもと三対一の配置を認めている。これを乳児全体に拡大する等、乳児に対する職員配置基準の改善は急務ではないか。
三 民間保育園対策について
 1 特に民間保育園ではその経営が極めて深刻な事態に直面しており、保育園長は、良い保育をしたいとの願いと園の経営で頭をいためているのが実情である。民間保育園では、保育所の運営に要する経費を措置費や自治体の補助金によつて賄つているが、措置児一人当たりの金額をみると、月額で民間保育園四万千五百九十三円、公立保育所六万九百二十五円(奈良市の昭和五十七年度決算)と大きな公私格差がある。民間保育園関係者はこぞつて公私格差是正を強く要求している。政府の見解及び改善策はどうか。
 2 保育内容をより良くするための研修は公私を問わず不可欠のものである。民間保育園においては特に運営経費を措置費に頼つていることはさきにも触れたとおりであるが、措置費に含まれる研修費の金額が重大問題である。措置費の中の研修費は三年間据え置かれたままの年一人三千四十円である。ある民間保育園長は「保母におおいに研修の機会を与え、良い保育をしてもらいたいが予算がなくて……」と述べている。研修を積極的にやつているある民間保育園では、「年平均一人の職員に約十回の研修の場を与えているが措置費の中の研修費では、実際にかかる費用の十分の一にしかならず、交通費でさえまかなえない」実態である。このような研修費の実態について政府はどう考えているのか。また、改善の意思があるか、どうか。
 3 民間保育園関係者に、民間保育園と市町村の間の措置委託契約を促進してほしいとの要望があるが、これについての政府の見解はどうか。
四 無認可保育園対策について
  事業所内保育所については事業所内保育施設等助成事業による補助金が出されているが、事業主が設置しているものに限られ、事業所内で父母が共同運営形式で設置している施設は補助対象となつていない。いわゆる無認可保育所については、地方公共団体が単費により補助金を出している例があるが、事業所内無認可保育所の場合、受益者との関係もあり、地方公共団体の補助金を受けるにも障害が少なくない。
  事業所内保育所の果たす役割からして、父母が共同で設置している事業所内保育所についても、その設置、運営形式にかかわらず、事業所内保育所として機能しているものについては補助対象とするよう制度を改善すべきではないか。
五 保育所施設設備費について
 1 「定員増を伴なわない施設の改築に補助金が出ないので改築の支障になつている」との自治体関係者の指摘があるが、保育内容の変化に対応して施設の整備を行うことは必要なことであり、これを補助対象とすることは当然のことである。政府の見解はどうか。
 2 老朽改築等について、関係自治体から点数制が厳しすぎるので、基準点数に達していなくてもケースバイケースで認めるべきとの要望がある。政府はこの点を十分考慮して対応すべきではないか。
六 保育料問題等について
 1 保育料問題については、今国会においても種々質疑がされてきたところであるが、国の保育料徴収基準が年々引き上げられ、かつ、この間の所得減税のみおくり等の中で保育料負担がますます重くなつている。この結果、保育所措置費に占める国の負担割合は昭和五十一年の五二パーセントをピークとして、昭和五十七年には四〇・八パーセントに低下する一方、父母負担は昭和五十一年の三五パーセントから昭和五十七年には四九パーセントと高まり、受益者負担率がますます高まる一方である。この結果、父母の所得に対する保育料支出は収入の一五〜一六パーセント(大和高田市での調査結果)にもなり、家計の圧迫要因となつている。こうした中で、父母の保育料負担を軽減してほしいとの切実な要求にもかかわらず、政府が毎年保育料徴収基準を引き上げているのは極めて遺憾である。政府は保育料負担軽減を求める国民の声に耳を傾けるべきではないか。
 2 昭和五十三年から昭和五十八年の五年間を見ると生活困難層ともいうべきC階層の保育料上昇率が五〇〜七五パーセントという大幅な上昇率となつている。このことは福祉の理念にも反するものである。こうした形の値上げは行うべきではないと思うがどうか。
 3 以上のような高額の保育料の一方で、〇歳児保育の問題、保育時間の問題等不十分な保育体制の改善が遅れている。このため、奈良県教職員組合婦人部の調査によると、子どもを平日は親もとにあずけつぱなしで、土、日だけ一緒に暮らすとか、保育所のある地域に居住を移さざるを得なかつたために通勤に片道二時間以上もかかるとか、乳児保育所のある自治体に転勤希望が集中した結果、学校によつては教員の平均年齢が二十七歳となつてしまつたなど深刻な状況さえ生まれている。親の労働実態に対応した保育体制の拡充が急務だが、政府の考えはどうか。

 右質問する。





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