衆議院

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昭和五十九年十二月四日提出
質問第四号

 ソ連抑留捕虜の労働賃金補償に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年十二月四日

提出者  渡部行雄

          衆議院議長 (注)永健司 殿




ソ連抑留捕虜の労働賃金補償に関する質問主意書


 政府の国会答弁によれば、戦時捕虜に対する給養の義務はすべて抑留国にあるとして、所属国たる我が国においては責任なきがごとき見解のように見受けられる。しかしながら、これは国際法の解釈において重大な疑義のあるところで、にわかに承知しがたいものがある。
 よつて次の点について質問する。

一 当時の国際法によれば、捕虜を給養すべき義務は抑留国にあるとせられている。しかし、この義務は経費負担の義務を伴うものではなく、実際の慣習は、所属国の負担に帰属するかまたは所属国の代償として捕虜の労働賃金から控除するものとされている。
  これは、内外の学説が一貫してとつている立場でもある。このように捕虜の給養負担については、所属国の責任をなしとしない。抑留国にすべての責任ありとする政府の法解釈は誤りではないか。
二 第二次大戦終了後の連合国における我が国捕虜に対する取扱いを見るにソ連は労働賃金から給養費を控除しており、このため帰国に際して捕虜の持ち帰る金品は皆無であつた。
  米英などにおいては捕虜の労働賃金を証明書で支払い帰国後日本政府がこれを落札することによつて給養費の実質負担を図る一方で捕虜はいずれも労働賃金を入手することができた。
  ソ連捕虜の給養費代償によつて日本政府は所属国として負担すべき負債を免れたが、半面、このことによつて捕虜は労働賃金を喪失したのである。
  かかる場合、ソ連捕虜に対しては米英捕虜と同様に労働賃金補償をなすベき国の義務があると思われるが、どうか。
三 当時有効であつた大東亜戦争陸軍給与令(昭和十八年七月二十八日、勅令第六百二十五号)第四十五条は、「戦地二在ル軍人軍属及諸生徒ノ糧食ハ総テ官給トシ現品ヲ以テ之ヲ給ス、但シ便宜二依リ代金ヲ以テ之ヲ給スルコトヲ得」とあり、我が国の兵士が捕虜として抑留中、給養費を自弁したため国が負担を免れた場合は、この規定が適用されると思われるが、どうか。
四 米英等から帰国の捕虜は、いずれも労働賃金を補償されているのに比べ、ソ連捕虜は全く除外されている。抑留国の政策にいかなる相違があろうとも、復員後国内での補償に際しては、憲法第十四条の規定よりみて米英ソの区別なく平等に措置すべきものと思われるが、どうか。
五 昭和二十二年三月十八日、政府は連合軍最高司令官総司令部に対し、終戦中央連絡局名をもつて、ソ連捕虜が抑留中、貯めた金銭でソ連側が没収したものは、受領書を持参すれば政府において代替支払いをなす旨の覚書(C・L・O(中央連絡局)NO.1857(RJ))を発しているが、ソ連側が没収した金額は一人月額四百六十五ルーブルであることがその後明らかとなり、政府資料中に公表されているのであるから、仮にソ連発行の受領書がなくとも、支払いをなすべきものと思うが、どうか。

 右質問する。



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