衆議院

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昭和五十九年十二月十一日提出
質問第六号

 自動車損害賠償責任保険の料率引上げに関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年十二月十一日

提出者  伊藤英成

          衆議院議長 (注)永健司 殿




自動車損害賠償責任保険の料率引上げに関する質問主意書


 政府は、昭和五十三年度以降の収支悪化を理由に自動車損害賠償責任保険の保険料を引き上げようとしている。政府の説明によれば、収支悪化の原因は交通事故の増加と給付内容の大幅改定とされている。しかし、この説明は事実を全く無視した一方的なもので信ずるに値しない。
 また、二年前政府は、自賠責保険の運用益の中から二千五百六十億円を保険契約者の了解を得ることなく一方的に流用し、一般会計の赤字穴埋めに充当した。自賠責保険の会計に余裕があるとして流用を行い、舌も乾かぬうちに料率を引き上げようとする政府の無節操さが保険契約者ひいては国民に与えた疑惑、不信ははかり知れないものがある。
 この問題について、国会審議の中で、私並びに同僚議員が何度も質問したが、政府から満足な回答が得られず、我々が納得できるような改善は認められなかつた。
 従つて、次の事項について質問する。

一 保険収支は昭和五十二年度までは黒字であつたが、昭和五十三年度から赤字になつたと政府は説明している。そして、交通事故の増加と給付内容の大幅改定が原因と述べている。しかし、我々の推計(資料I参照)によれば、こうした因果関係は認められない。つまり、昭和五十二年度の実績に、政府の説明する二つの要素を加味して推計すると、昭和五十八年度の収支は、約三百億円の黒字となるはずである。にもかかわらず政府は、昭和五十八年度の収支は実に二千六十三億円の赤字と説明している。この重大な差異の原因を伺いたい。
二 自賠責保険は、人身事故を対象にした制度である。しかし、政府の説明によれば保険金支払いに当たつて、人身事故証明によるものが八〇%、物損事故証明によるものが、一五%、全くないものが五%となつている。近年、物損事故証明、無証明による支払いが急増しているが、このような野方図な支払いが続く限り収支の抜本的改善は期待できない。その理由と政府の具体的な改善策を伺いたい。
三 自賠責保険には、積年の課題である医療費の支払い水準の問題がある。この問題について自賠責審議会は、既に昭和四十四年の答申において早急な適正化を訴えている。しかるに政府は、無策のまま看過し、現在の収支状況を惹起した。これは政府の怠慢以外のなにものでもない。
  現在、交通事故診療の八六%が自由診療扱いとなつている。そして、この診療単価は健保扱いの二倍以上という社会通念上逸脱したものとなつている。このギャップの妥当性について、明確な回答を伺いたい。
  もし政府が自賠責審議会の答申を尊重し、交通事故被害者、保険契約者の権利保護のため、適正な支払基準を設定する義務を感ずるならば、具体的な内容を示して頂きたい。
四 自賠責保険は、自動車保有者に強制加入を義務付けているにもかかわらず、政府はその収支内容、料率改定、限度額改定の根拠を保険契約者に明らかにしていない。一部は自賠責審議会の中で公表しているとか、一定期間の閲覧期間を設けているとの反論があるかもしれない。しかし、これにより保険契約者一人一人に理解を得るに十分とは考えられない。少なくとも我々には理解できない。細部にわたる収支状況を公開し、了解を得る必要がある。そのための具体的な方策を伺いたい。
五 自賠責保険の収支は、支払年度ベースの収支(リトン・ベーシス)によれば、昭和五十八年度末で一兆千億円の累積黒字(資料II参照)があると判断される。しかるに政府は契約年度ベースの収支(ポリシー・イヤー・べーシス)によれば、大幅赤字が発生していると説明している。このポリシー・イヤー・べーシスは、当該契約年度に対応する将来の支払いを予測して推計するため、予測根拠の精度によつては、しばしば見積り違いを惹起する。昭和四十四年の大幅料率引上げのあと、収支が急激に好転したにもかかわらず、保険契約者に不当に重い料率負担を課してきたのは、この見積り精度の悪さと政府の硬直的な料率政策に起因している。
  昭和四十四年の過ちを二度と招来しないよう、政府の考え方を明らかにするため、次に挙げる予測値並びに根拠を提示して頂きたい。なお、予測値は自賠責特別会計、損保会社引受分、農協分それぞれにわたつて明確に提示して頂きたい。
 1 昭和六十五年度までの交通事故発生件数の予測及び根拠
 2 昭和六十五年度までの死亡、傷害別交通事故発生件数の予測及び根拠
 3 昭和六十五年度までの車種別交通事故発生件数の予測及び根拠
 4 昭和六十五年度までの死亡、傷害、後遺障害それぞれの保険給付件数、支払単価並びに支払保険金額の予測及び根拠
 5 昭和六十五年度までの車種別収支、損害率の予測及び根拠
 6 昭和六十五年度までに実施されると考えられる交通安全対策、医療費適正化策、その他の具体的な収支改善策並びにそれぞれの収支改善に与える影響の予測及び根拠
7 昭和六十五年度までの自賠責保険収支の予測並びに根拠
  最後に、自賠責保険の問題は緊急かつ抜本的な解決を要求されている。政府の早急かつ誠意ある回答を期待する。

 右質問する。



資  料 I

1 交通事故発生状況
  昭 和 52 年 昭 和 58 年 増 減 率
死  者  数 8,945 9,520
負 傷 者 数 593,211   654,822   10  
  
2 最近の保険金限度額改定
  昭和50年 7 月 昭和53年 7 月 増 減 率
死    亡 1,500 万円 2,000 万円 33
障    害 100   120   20  
後 遺 障 害 56〜1,500   75〜2,000   34  

3 平均支払保険金
  昭和52 年 度 昭和58 年 度 増 減 率
死    亡 13,883 千円 17,207 千円 24
障    害 366     421     15  
後 遺 障 害 2,970     3,122      

4 上記による58年度支払保険金推計
  昭和52年度
実     績
× 事 故
増減率
× 平 均 支 払
保険金増減率
  百万円     百万円
死    亡 138,763         24   182,390  
障    害 202,796     10     15   256,537  
後 遺 障 害 137,737     10       159,086  
                     
  計 479,296               598,013  

5 58年度推計対実績比較
  昭和58年度実績 同   推   計  差          引
死    亡 189,404 百万円 182,390 百万円 7,014 百万円
傷    害 354,392   256,537   97,855  
後 遺 傷 害 286,120   159,086   127,034  
  計 829,916   598,013   231,903  
付 帯 費 用 94   94    
       
 合   計 830,010   598,107    

6 保険収支
  昭 和 58 年 度 同   推   計  
収入純保険料   6,237 億円 6,237 億円  
支払保険金   8,300   5,981    
当年度収支残 2,063   256    
 
昭和52年度(296億円)より40億円黒字減


資  料 II
     自賠責保険収支表(リトン・ベーシス)
資料II:自賠責保険収支表(リトン・ベーシス)


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