衆議院

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昭和六十年六月二十四日提出
質問第四〇号

 大韓航空機の領空侵犯及び撃墜事件の全貌を解明することを政府に要求した国会決議に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年六月二十四日

提出者  大出 俊

          衆議院議長 坂田道太 殿




大韓航空機の領空侵犯及び撃墜事件の全貌を解明することを政府に要求した国会決議に関する質問主意書


 大韓航空〇〇七便が昭和五十八年九月一日、大幅な航路逸脱をした結果、カムチャツカ半島及びサハリンのソ連領空を侵犯し、ソ連軍戦闘機のミサイル攻撃を受け、乗客・乗員二百六十九名とともに撃墜された事件は国際的大事件であり、私は事件直後から、何度も真相解明を目的とする質問を行つてきたところである。
 政府は、衆参両院全会一致による真相究明要求決議を受けながら、何ひとつ実効ある調査活動をしようとせず、ICAO(国際民間航空機関)に対する形式的で内容のない資料提供をもつて、事件の真相解明活動にすりかえようとしているが、到底容認できない。
 そこで、次の質問をする。

一 政府が大韓機事件に関する真相解明のための調査・研究を、事件後今日に至る間、具体的に委嘱した航空技術専門家はいるか。
  いるとすれば、それは具体的に誰々か。その者らの職、氏名を示せ。
  いないとすれば、なぜ専門家に調査させないのか、その理由を示せ。
二 政府は、衆参両院全会一致の国会決議を受けて後、今日に至る間、大韓機事件の真相解明を目的として、いかなる予算措置をし、概ね内訳でどのような支出をしたか。仮に予算措置をしていないとすると、なぜしないのか理由を示せ。
三 政府は、日本政府としての調査結果をいつ公表することを予定しているか。
  来る九月一日までに政府として責任ある「中間報告」をする意思はないか。
四 大韓機の航跡は航空自衛隊の稚内、網走、根室の三レーダーサイトのレーダーが捕捉していたと認識しているが、捕捉できなかつたレーダーはあつたか。仮にあつたとすればそれはどこか。
五 大韓機のトランスポンダーからの応答電波は稚内、網走、根室の三レーダーサイトのSSR(二次監視レーダー)が受信していたと認識しているが、受信できなかつたレーダーはあつたか。仮にあつたとすればそれはどこか。
六 航空自衛隊のレーダーが大韓機をはじめて捕捉したとき及びその後捕捉できなくなつたときの各正確な時刻、そのときの同機の正確な位置(緯度、経度)、その地点までの網走、根室、稚内の各レーダーサイトからの正確な水平距離(キロメートル)を示せ。
七 航空自衛隊のレーダーが大韓機から「1300」なる応答電波をはじめて受信したとき及びその後その応答電波を受信できなくなつたときの各正確な時刻、そのときの同機の正確な位置(緯度、経度)、その地点までの網走、根室、稚内の各レーダーサイトからの正確な水平距離(キロメートル)を示せ。
八 事件当時、網走、根室、稚内の各レーダーサイトに整備されていた航空自衛隊の三次元レーダーは、それぞれ誰がその本体を製造し、誰が、いつ(年月日)、本体価格いくらで、国と売買契約をしたものであるか(本体価格だけを特定し難いときはそれに近いものを示せ)。また、それぞれの三次元レーダー一基の整備に要した一式費用の金額とその概ねの内訳を示せ。
九 事件当時、稚内基地内で移動警戒隊が整備していた三次元レーダーは誰がその本体を製造し、誰が、いつ(年月日)、本体価格いくらで、国と売買契約をしたものであるか(本体価格だけを特定し難いときはそれに近いものを示せ)。
十 事件当時の網走、根室、稚内の各三次元レーダーの設置場所は、すべて基地外の上空、海上から容易に目撃可能で、内外の専門家には周知の事実である。また、その写真その他の映像も市販の刊行物(例えば「世界週報」)やテレビ放送(例えば「NHKテレビ」)で広く公表されている。
  事件当時の右三レーダーの各設置場所の正確な海抜高度(メートル)を示せ。
十一 中曽根康弘内閣総理大臣は自衛隊法第七条による自衛隊の最高の指揮監督権者として、国民の疑惑が政府・防衛当局による「レーダー情報隠し」に集中しつつある今日、国民の信頼を失つてまで一体何のために、誰に対して、既に歴史に属する大韓機事件当時の「レーダーの性能」を秘密にしたいのであるか。
十二 政府は既に、稚内レーダーサイトから約二百九十六キロメートル以遠の大韓機の機影は捕捉できなかつたと公表しているが、仮に右の公表が事実とすれば、政府自ら、自衛隊の「レーダーの性能」を公表したことにはならないのか。
十三 昭和四十三年七月一日現在及び昭和五十八年九月一日現在、左の職にあつた者の正式な職名、階級、氏名を示せ。
 (1)陸幕長 (2)陸幕調査部長 (3)陸幕調査部第二課長 (4)陸幕調査部第二課別室長 (5)陸幕・東千歳通信所の長たる職 (6)同通信所稚内分遣隊の長たる職 (7)同通信所根室分遣隊の長たる職 (8)陸幕・米子通信所の長たる職 (9)空幕長 (10)航空自衛隊航空作戦管制所(府中)を直接運用する者らの長たる職 (11)北部防空管制指令所(三沢)を直接運用する者らの長たる職 (12)稚内の防空監視所を直接運用する者らの長たる職 (13)網走の防空監視所を直接運用する者らの長たる職 (14)根室の防空監視所を直接運用する者らの長たる職
十四 事件当日の朝、千歳、三沢の航空自衛隊要員に対し、非常呼集を発令した最高位の指揮官の職、氏名を示せ。
十五 事件当日の朝、航空自衛隊の部隊で、非常呼集の対象となつた部隊名及び各部隊の概ねの対象人員を示せ。
十六 事件当日の朝、大韓機の救難を目的として、P ― 2J対潜哨戒機二機に対し、出動を命じた最高位の指揮官及び出動命令を受けたP ― 2J対潜哨戒機二機が所属する飛行隊の長及び各機の機長の各職、氏名を示せ。
十七 空幕及び海幕において、第一線自衛隊要員に対する各非常呼集は、事件当日の朝、午前四時以前に出されていたと認識してよいか。
  仮に、そうでないとすると、千歳、三沢の各飛行隊要員及び大湊、八戸の各艦艇、P ― 2J対潜哨戒機要員に対し、非常呼集又は出動命令を発した正確な時刻を示せ。
十八 事件当日午前三時頃、左の職にあつた者の正式職名、階級、氏名を示せ。
 (1)陸幕・東千歳通信所の夜間当直者の長たる職 (2)同通信所稚内分遣隊の夜間当直者の長たる職 (3)陸幕・米子通信所の夜間当直者の長たる職 (4)航空自衛隊航空作戦管制所(府中)の夜間当直者の長たる職 (5)北部防空管制指令所(三沢)の夜間当直者の長たる職 (6)稚内、網走、根室の各防空監視所の各夜間当直者の長たる職 (7)北部航空警戒管制団の北部警戒資料隊の長たる職 (8)同資料隊稚内分遣隊の長たる職
十九 事件当時、東千歳通信所に整備されていた「象のおり」と通称されている巨大アンテナは一式概ねいくらで整備されていたものか。また同通信所全体の整備費として、概算いくら支出していたか。
二十 事件当時、米子通信所に整備されていた「象のおり」と通称されている巨大アンテナは一式概ねいくらで整備されていたものか。また同通信所全体の整備費として概算いくら支出していたか。
二十一 事件当時、陸幕調査部二課別室に所属した全通信傍受施設の所在地を示せ。
二十二 昭和五十七年度末現在までに、国民は陸幕調査部二課別室に所属する全通信傍受システムの整備費として、総額で、概ねいくら負担させられていたか。
二十三 事件当時、航空自衛隊に所属した全通信傍受施設の所在地を示せ。
二十四 昭和五十七年度末現在までに、国民は航空自衛隊の通信傍受施設の整備費として、総合計額で、概ねいくら負担させられていたか。
二十五 運輸省の上品山航空路監視レーダー及び横津岳航空路監視レーダーは、それぞれ、誰がレーダー本体を製造し、誰がいつ(年月日)、いくらで国に売渡したレーダーか。
  また、その最大覆域は、気象条件等最良の条件下で、目標が高度三万二千フィートのボーイング747型機の場合、技術的には最大限何キロメートル先まで捕捉可能か。
二十六 政府は、航空自衛隊が公表した大韓機の航跡をそのまま北東方向に延長すると、日米両国政府が事件直後の国連安保理事会の議場のテレビで公表した同機のニーバ点北方の航跡には絶対に接続しないという事実を明確に認識しているか。
二十七 政府は、大韓機が事件当日午前3時02分頃右方向に、同09分頃左方向に、それぞれ大きく旋回した事実を認識しているか。
  特に後者については政府が公表したソ連機の交信傍受記録にも出ているが、政府の認識はどうか。
二十八 政府は、大韓機が我が国の航空管制当局に対し、一貫して高度三万三千フィートで飛行している旨の虚偽報告をしていたとき、同機は午前3時12分頃から同15分頃にかけて、実際には高度を約三千フィート下げて、同15分現在は高度約二万九千フィート(東京国際対空通信局への同機からの報告とは約四千フィート差がある高度)で飛行していたが、このような下降は同機乗員の人為的操作なしには絶対に起こり得ない現象であることを明確に認識しているか。
  仮に同機乗員の人為的操作なしに、同機が三千フィート乃至四千フィート下降する場合があり得るとしたら、それは当時の高層気象データなどに照らして、具体的にはいかなる場合かを示せ。
二十九 政府は、大韓機が我が国の管制当局に対し、午前3時20分20秒に「三万三千フィートを今離脱します」と通信したときの、同機の実際の高度は約二万九千フィート(やや高気圧である当該地域の高層気象データから判断すると、標準気圧にセットされた大韓機の機内の高度計は概ね二万八千八百フィート程度を同機乗員に示していた)であつたという事実はその前の約三千フィート乃至約四千フィートの管制当局の許可を受けていない無断下降の事実と考えあわせると、同機乗員は同機の高度計の数字を無視して管制当局に対し、故意に虚偽の報告をしたものであると明確に認識しているか。
  仮に同機乗員が同機の大幅な下降の事実に全く気がつかない場合があり得るとしたら、それはいかなる場合か具体的に示せ。
三十 政府は、大韓機が我が国の管制当局に対し、午前3時23分05秒に「三万五千フィートに達しました」と通信したときの同機の実際の高度は約三万二千フィート(報告とは約三千フィートの差)であり、しかも二千フィート幅の上昇しか認められていないロメオ20のルートで三千フィートも一挙に上昇している事実は、同機の乗員が我が国管制当局の指示を全く無視して、勝手に同機を操作していたことを示していると、明確に認識しているか。
  仮に、同機乗員がその前の大幅な下降にも気がつかず、また、一挙に三千フィート上昇した事実にも気がつかない場合があり得るとしたら、それはいかなる場合か具体的に示せ。
三十一 政府は、大韓機からの最後の微弱通信を解析した結果、最後のONE TWO DELTAのONE TWOの部分から「音声の周波数がやや高くなつており、心理状態に変化があつたものと推定される」と公表しているが、音声の周波数はその前後で具体的にいくつからいくつに変化しているのか。
三十二 政府は、事件直後から今日まで大韓航空〇〇七便及び大韓航空〇一五便が米国及び我が国の航空管制当局に対し、大韓航空〇〇七便の実際の位置、高度、速度等について、故意に虚偽報告をしていた疑いが明確に存在したのに、なぜ大韓航空側の通話者が誰であるのか、特定明確化する程度の、真相解明のための初歩的努力をしなかつたのか、その理由を示せ。
三十三 政府は、事件後満二年目を迎える来る九月一日までに、少なくとも左の事項について、解析結果を公表するべきであると思うが、政府にはその意思があるか。
 (1) 大韓航空〇〇七便及び大韓航空〇一五便が米国及び我が国の航空管制当局との間で行つたすべての交信について、その録音テープを解析して、各通信ごとの航空機側の通話者の職、氏名を特定明示する件(仮に通話者の氏名を割り出すまでにいたらないものについては、通話者X、通話者Yのごとく表現して、通話者が別人であることを明示すること)。
 (2) 大韓航空〇〇七便がGMT12時50分12秒に米国管制当局との間で行つた通信及び同機がGMT18時23分05秒、GMT18時27分00秒、GMT18時27分10秒の各時刻に我が国の管制当局との間で行つた通信について、各英単語ごとの周波数を特定明示する件。
     (右二件は、航空機側の通信の音声を信頼する以外に管制の手段のない、遠隔地点の洋上飛行において、航空機側が故意に虚偽報告をしていた疑いが濃厚になつているので、いわゆる「替え玉」説の検証、ミサイル被弾の影響発生時刻の特定、その他本事件の真相解明のため、最も基礎的な資料の一つになるものである。)
三十四 政府は、「午前3時12分以前の大韓機を捕捉できなかつた」という「見えないレーダー」の装備及び運用責任者、及びアマチュア無線家が数百万円以下の費用で整備した通信傍受施設でも、十分明瞭に聴取できる「サハリン南部のソ連地上局から上空のソ連要撃機への通信」さえも「全く傍受できなかつた」という、「きこえない通信傍受施設」の装備及び運用責任者に対し、今日まで、いかなる処分をしたか。処分対象者の職、氏名を示せ。
三十五 最後に中曽根首相に問う。
  戦前、戦中の政府や軍当局は、いわゆる「大本営発表」などにより、国民に対して全く事実に反する戦況等を公表し、当時諸外国の有識者なら当然知つている程度の事実についてまで、自国の国民の耳目をふさぎ、その判断を誤らせた。
  主権者である国民に対し、常に豊富で公正な情報を敏速に提供し、高度な判断力に裏付けられた国民の自発的な支持、協力を得ることが戦後民主政治の第一の課題ではなかつたか。国民に対して、真実の情報を公開しないで、国民の真の協力が得られるわけがない。
  右は国政全般について言えることであるが、防衛力の整備に関しても決して例外ではない。
  大韓機事件に関する政府・防衛当局の「情報隠し」「情報操作」をこの際、根本的に改める考えはないか。

 右質問する。



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