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昭和六十年六月二十五日提出
質問第四三号

 東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する再質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年六月二十五日

提出者  矢山有作

          衆議院議長 坂田道太 殿




東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する再質問主意書


 東大農学部・生物環境制御システムセンター(以下「CERES」と略す。)において、一九八二年四月、年間約二千八百万円のレンタル契約によつて日本電気株式会社(以下「NEC」と略す。)から導入した研究用中型コンピューターが、「NEC」の社員等によつて「ソフト開発」等自社業務のために、納入後長期間にわたつて不正使用されていた疑いが新聞報道されて以後、この問題に対する納税者国民の関心は高まつている。
 そこで、それら国民の意を代弁すべく、さきに「東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する質問主意書」(昭和六十年五月二十二日提出・質問第三四号)を提出したところ、それに対する答弁書(内閣衆質一〇二第三四号)は、答弁内容の欠落(質問三、四、五、六、七、八等)をはじめ、事実に反するものなど、極めて不十分といわざるを得ないものであつた。そのため、衆議院文教委員会(昭和六十年六月五日)の質疑並びに綿密な資料要求によつて、更に追及を重ねたが、依然として事実を隠そうとする不明確な答弁と、事実を歪曲した不誠意きわまる資料しか得ることができなかつた。
 東京大学は、学問・研究の府における頂点の座にあり、国民の税負担に由来する国費によつて運営される研究・教育機関である。従つて、その運営は公明正大であり、機能は直接国民に対する責任を負担して発揮されるべきで、いやしくも民間企業との癒着を懸念される如き不明朗はいうに及ばず、国費の濫用、公務員の背任を疑わせる如き行為が許されないのは当然である。
 そのような視点からすれば、「CERES」における「NEC」による中型コンピューターの不正使用問題は看過し得ない重要性をもち、その解明は緊急を要するものと考えられる。
 従つて、次の事項について質問する。

一 機種選定の経緯について
 (一) 昭和五十六年十月十三日のCERES運営委員会において、システムの構成は詳細に決まつていたはずであり、第一回要求資料@に示された、「機種決定について容量および付属機器の選定はセンター長に委ねる」は、考えられないことである。当日の出席者一人一人から会議の状況を聴取して回答されたい。
 (二) 導入機種は「チャンバーと結合させる」、「昭和五十七年四月から導入する」等を条件として、昭和五十六年十月十三日の運営委員会で決定されていたにもかかわらず、同年十二月二十五日に至つて、ようやく具体的に「チャンバーとの結合(制御処理)」が「NEC」と打ち合わされている。この異常というべき遅延の理由は何か。
 (三) 右昭和五十六年十二月二十五日の打ち合わせで、チャンバー制御処理を理由として、ACOS350のディスク(1270MB)、MT(6250BPI二台)、MS50のディスク(80MB)等を削除している。このため、ACOS350はMS50で入力した画像データの処理にも不向きとなり、報告書七ページに指摘されるように、研究者は大型計算機センターを利用することになつたのではないのか。
 (四) 昭和五十七年一月二十日、「NEC」と打ち合わせた際の工程表(第一回要求資料D)によれば、ACOS350は昭和五十七年十月まで「次機種ACOS350のセンタバッチ」を運用、MS50は三月末までに搬入するものの、稼動は十月から、更にMS30に至つては、搬入は五月中旬で、稼動は十月からとなつている。実際のシステムの運用が、ほぼこの工程表のとおりであつたことは、昭和五十七年八月十日付「NEC」の「八月、九月スケジュール報告」、同年五月七日付「NEC」の「現況報告書」、昭和六十年一月十六日付「NEC」回答書を見ても明らかである。
     このこと自体、「五十七年四月からの導入」を決定した五十六年十月十三日の運営委員会の意向に反しているが、こうした経緯にもかかわらず、レンタル料は五十七年四月七日から支払われている。本来、支払われるべきでない五十七年十月までの半年間のレンタル料が支払われたことは、既に五十七年一月二十日、工程表作成の時点で、東大側と「NEC」側との間で事前了解されていたものと判断せざるを得ないが、事実はどうか。然りとすれば、これは明らかに背任行為であり、弁明の余地はないと考えるがどうか。
 (五) 更に、右に関連して、実態としてシステムの納期が六ヵ月遅れたことは、五十七年四月の納期を条件とした同業他社との「提案書」による競争において公平を欠き、結果として、東大は「NEC」一社にのみ便宜を与えたこととなる。ちなみに、「NEC」機を決定した「機種選定理由書」には、「ACOS350を選定したのは、同システムのみがチャンバーと直接結合できる」と述べているが、五十六年十月十三日までの段階では、「NEC」機は他社機と同様、チャンバーに結合できるという提案になつていないのである。
     これらのことに照らして、東大側が何らかの理由で、「NEC」にのみ格別の便宜を供与したものと断ぜざるを得ない。釈明を求める。
 (六) 「NEC」が東大に提供するシステムの見積価格は、当初の月額レンタル料千百六万四千六百二十円から「NEC」のみと相対で折衝した五十七年一月二十日見積の間に、百八万七千百二十円も減額されている。この減額は標準価格にすれば約四千万円(三十六ヵ月相当分として計算)である。この事実はいかなる理由によるものか。
 (七) 五十七年一月二十日、「NEC」との打ち合わせの議事録はないとの回答であるが、然らば、契約の内容はどうであつたのか。ACOS350、MS50、MS30それぞれに如何なる機能をもたせ、相互の有機的結合はどのようにしていたのか等、契約書以外の了解事項の詳細を明示されたい。
 (八) 右一連の経緯をみると、機種選定から契約に至る過程に多大の疑惑をもたざるを得ない。
     導入システムの検収は、いつ、誰がどのようにして行つたのか、明確に答えられたい。また、五十七年四月七日からレンタル料を支払うこととした理由は何か。
二 「報告書」における電算機整備の経過について
 (一) 「ACOS350は、五十七年四月七日より前機種のサービス内容と同等の機能に加え、TSSが稼動した」となつているが、五十七年五月七日時点で稼動していたのは、センターバッチとセンター内TSSの二機能のみで、これらは前機種でもサービスされていたものである。しかも、前記一 ― (四)の如くACOS350の重要な機能である図形処理システムは稼動しておらず、第二回要求資料Mのとおり、四月〜六月はシステム構築中で、この二機能について学内に公開されたのは六月十一日からである。従つて、「報告書」の記載は事実に反するのではないか。
 (二) MS50の「画像処理標準機能は五十七年四月より稼動した」とする「報告書」の記述は事実に反する。五十七年一月二十日の工程表では「五十七年四月より稼動」とはなつておらず、MS50の単体テストが始まつたのは五十七年八月からで、稼動は十月からと予定されていた。弁明されたい。
 (三) MS30は「六月頃までにチャンバー配線作業が完了し稼動を開始した」となつているが、前記工程表や「NEC」の八月十日付スケジュール表によると搬入が五月中旬で、チャンバーとの結合テストは九月から、そして稼動は十月からと予定されていた。「報告書」の記載は事実に反するのではないか。
 (四) MS30について、更に「五十七年十月〜十一月に故障を含めて多数のトラブルが発生し、修理が行われた」との記載があるが、第一回要求資料G等によれば、これは当初からの不備で、五十八年十月七日は「NEC」議事録でも「信頼性がないので使われていない」と記されている。さらに五十八年十一月四日付同議事録では、湿度について誤差大で「インターフェス情報の欠落があり、再収集の必要あり」となつている。
     このことは、MS30は当初から使用に耐えなかつたことを示しており、現在においても、精度、信頼性において欠陥が解消されていない疑いがある。このことについて所見を示されたい。
 (五) 多摩農場からのデータ入力は、「通信回線確保のために稼動が一年遅れた」とする「報告書」の記述は誤りであり、第一回要求資料Jによれば、既にレンタル開始直前の五十七年四月五日から、農場、「CERES」ともにデータ端末用電話が設置され、料金も支払われていた。これは国費の濫用といわざるを得ない。
     また、第二回要求資料C(五十七年五月七日付現況報告)では、この原因を回線用ファームウェアにあり、としているが事実に相違ないか。
三 電算機の利用状況について「報告書」は「MS30は常時利用され、MS50もかなり使われており、とくに問題はない」となつているが、MS30は前記のように、五十八年十月の時点で、既に「NEC」議事録に精度と信頼性に問題ありと記されているほどであり、その後も本来の機能を発揮していない模様である。現在の実態を詳細に報告されたい。
  第二回要求資料(注)及び(注)によれば、五十八年四月以降は月平均の利用者二〜三人で、使用時間八時間程度という低利用となつている。その原因を説明されたい。
四 「報告書」では「NEC」のプログラム相談等のための支援SEは「ACOS350に対して昭和五十七年十月以降派遣されてきていたが…サービスの依頼は少なかつた」となつているが、五十七年十月五日〜十一月十九日までのSEサービスの案内が出された以外は「CERES」から案内はなく、支援を受けたことを示す記録もないというのが大学側の回答である。支援サービス依頼者もいないのに、連日SEを空費することはあり得ないことである。このことは、実態としてSE支援はなかつたといわざるを得ない。明確な釈明を求める。
五 業界の常識として、業務に際しては必ず事前に東大からの依頼文書と、それを受けて双方担当者の打ち合わせがあつて着手することになつている。今回の如く、担当者間に何ら記録が残つていないということは、そもそも、そのような業務依頼はなかつたとみざるを得ない。「NEC」が「報告書」に述べるように、延べ十六ヵ月、三百三十二人もの社員を投入して業務に就かせたとするならば、それを裏づける説明を求める。
  国立大学設置の研究用コンピューターを、民間業者が一技官の口頭依頼を根拠として、このように長期、大量に使用し得ないことは明らかである。「NEC」の使用は不正を疑わざるを得ない。文部省の所見はどうか。
六 「NEC」回答文書(六〇・一・一六)によると「OA化実験」はセンター長の依頼によるとなつているが、事実としての裏づけを明示せよ。
  このOA化完成の上は、再度NECシステムに更新する心算であつたのか否か。仮に他社システムに変えれば、それまでの出費が無駄になることも考慮したのか否か。
七 第二回要求資料Hの五十七年十月〜十一月のコンソールジャーナルを含む電算機アウトプットは、専門家の鑑定によれば東洋大学入試用ソフトウェア開発そのものであるという。具体的な反論とその裏づけありや。
八 第二回要求資料Rの電算機アウトプットは、専門家の鑑定によれば、大阪酸素工業株式会社の業務用ソフトウェア開発そのものであるという。弁明の余地ありや。
九 第二回要求資料(注)の電算機アウトプットは、専門家の鑑定によれば、「N1ネットワーク」ソフトウェア開発そのものであるという。否とするなら釈明を求める。
十 右のこと及び六十年一月十六日付「NEC」提出資料、計算機使用ノートを見るとき、第二回要求資料Jに述べられる葛西裕之氏は、五十九年十一月の十九日間は「N1ネットワーク」開発業務に従事していたものと考えられる。「報告書」十五ページ表5に記される通常業務に従事していた云々は事実に反する。明確な回答を求める。
十一 「報告書」作成に当たつて、現存するディスクパックについて「NEC」が業務用に使用したと見られる部分は、その内容を打ち出して検討したものか否か。未検討であるならば、至急その内容を打ち出し、検討の上明示されたい。
十二 「報告書」作成に当たつて、現存する磁気テープはすべてその内容を打ち出して検討したものか否か。未着手であるならば、至急正確に検討の上、内容を開示されたい。
十三 「報告書」作成に当たつて現存する約三万枚の穿孔カードは、打ち出して検討したか否か。
  至急明示されたい。
十四 「報告書」では昭和五十八年十月から五十九年五月にわたつて、一研究課題による約一、八七五時間(JECCメーター時間)の利用があり、「NEC」使用は八五時間であつたとしているが、実際のJECCメーター時間は一、八二七時間に過ぎず、更に、この間には「NEC」社員二百二人も使用しているので、「報告書」の一、八七五時間の使用はあり得ない。これに関してはさきの質疑(衆・文教委・六月五日)の際指摘し、大学当局はその後、指摘した点の誤りを認めている。この点「NEC」の使用時間を過少に示す結果となつたものとして重要である。
  六十年五月七日付「農学部長見解」等、関連資料の訂正発表(大学内、報道機関など配布先に対して)をすべきである。いつ、いかなる訂正発表を行つたか、伺いたい。
十五 前記質疑の際、ACOS350と別機種であるMS50及びMS30の使用時間を示す数字を不正に書き加えた点を指摘したが、その後、これをどのように処理したか。
  また、五十七年四月の電算機使用時間通知書(第一回要求資料I)では、MS30の使用時間が書き加えられているが、同機は当時未だ搬入されていなかつたものである。これらは、単にずさんというよりも、悪意に満ちた文書偽造といわざるを得ない。弁明しうる余地ありや。
十六 第一回要求資料Hに五十七年四月五日付の定期保守を行つた旨の報告があり、四宮技官の承認印が押されているが、当日は未だ搬入直後で、レンタル開始以前であつたから、この時点で定期保守を行うことはあり得ない。
  前項同様、ずさんという以上に、明らかな文書偽造といわざるをえない。事実に即した釈明を求める。
十七 第二回要求資料Nの五十七年五月二十一日の日本語処理及び五十七年九月二十九日のアラビア文字処理のための使用は、いかなる理由によるものか。

 右質問する。





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