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昭和六十年九月三日受領
答弁第四三号

  内閣衆質一〇二第四三号
    昭和六十年九月三日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 坂田道太 殿

衆議院議員矢山有作君提出東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員矢山有作君提出東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する再質問に対する答弁書



一について

(一) 東京大学農学部に設置された調査委員会において、昭和五十六年十月十三日に開催された東京大学農学部附属生物環境制御システムセンター(以下「センター」という。)の運営委員会に出席した委員八名から会議の状況を聴取した結果は、次のとおりであつたと承知している。
  (1) 五名の委員は、システムの主たる構成装置を、当日配付された日本電気株式会社(以下「NEC」という。)の提案に係る構成図の二装置(ACOS四五〇及びMS七〇)から、ACOS三五〇、MS五〇及びMS三〇の三装置に変更の上、導入することが決定されるとともに、その他についてはセンター長に一任することが決定されたとしている。
  (2) 二名の委員は、右の三装置に変更の上、導入することが決定されたが、その他の決定事項については記憶にないとしている。
  (3) 一名の委員は、右の三装置に変更の上、導入することが決定されるとともに、記憶容量、磁気ディスク装置、磁気テープ装置等細部については、当日配付された構成図のとおりとすることが決定されたとしている。
(二) 昭和五十六年十月十三日の運営委員会で、チャンバーの自動制御を行う目的でMS三〇の導入が決定されたことを受けて、センター長は、NECに対しMS三〇に係るチャンバーの制御条件(温度、湿度、光強度等)を提示し、NECは、当該制御条件を実現するため、チャンバー利用者及びチャンバー製造会社と段階的に打合せを行い、その結果を踏まえ、同年十二月二十五日にセンター長とNECとの間で打合せが行われたものであると承知している。
(三) 昭和五十六年十月十三日の運営委員会における決定を受けてNECから提案された構成図に比して、ACOS三五〇のディスク装置、磁気テープ装置、MS五〇のディスク装置等を削減した形になつたことにより、結果的にACOS三五〇が大量のデータの同時処理にはやや長い時間を要するものとなつたことは事実であるが、MS五〇で処理したデータを磁気テープを介してACOS三五〇で計算処理することは可能であり、必ずしも、このような決定の結果がACOS三五〇の低利用を招いたものではないと承知している。
    なお、研究者の多くが大型計算機センターを利用することとなつたのは、同センターによるサービスが向上したためであつたと承知している。
(四) 昭和五十六年十月十三日の運営委員会において昭和五十七年四月を目途に新機種を導入することは決定されていたが、MS五〇及びMS三〇に係る学部内の要望を満たすためには、新たなソフトウェアの研究開発を要することから、導入当初においてはそれぞれの標準機能により稼動させることとし、昭和五十七年一月二十日のNECとの打合せにおいては、当該ソフトウェアの研究開発スケジュールについて協議されたものであると承知している。
(五) 昭和五十六年十月十三日の運営委員会において、NEC製の装置が選定されたのは、画像処理機能、チャンバー制御機能等が考慮されたためであるが、チャンバー制御機能については、NECの提案内容が、他社に比し、より積極的であつたためであると承知している。
(六) 導入するシステムの細部についての検討過程において、装置の構成が変わつたことにより、見積価格が変更されたものと承知している。
(七) ACOS三五〇のうちの中央処理装置ほか九装置については、日本電子計算機株式会社と賃貸借契約を、MS五〇及びMS三〇については、NECと無償の使用貸借契約を締結したものである。契約書以外に了解された事項は、次のとおりであつたと承知している。
  (1) ACOS三五〇について
     ア 更新前のシステムで使用できたソフトウェアが使用できるようにオペレーションシステムに継続性を持たせること。
     イ MS五〇及びMS三〇に対するバックアップの機能を持たせること。
     ウ 統計計算用及び数学用のアプリケーションパッケージを無償で提供すること。
     エ 新たなソフトウェアに関する要望について可能な限り応じること。
  (2) MS五〇について
      研究上必要なソフトウェアを昭和五十七年九月末までに共同研究開発し、無償で提供すること。
  (3) MS三〇について
      チャンバー制御による研究上必要なソフトウェアを昭和五十七年九月末までに共同研究開発し、無償で提供すること。
  (4) 前記の三装置は、個別に独立した機能を有しつつ、データ転送を行うため、ACOS三五〇を主システムとして、モデムを介して結合すること。
(八) ACOS三五〇については、農学部教官二名の作成に係る二種類のテストプログラムにより、昭和五十七年四月初め頃、動作テストを行い、稼動状態にあることを確認するとともに、日本電子計算機株式会社と賃貸借契約したACOS三五〇に係る十装置については、同年四月七日に、農学部用度掛長が、契約書に基づき当該装置の配置が完了していることについて検収を行つたが、NECと無償の使用貸借契約したMS五〇及びMS三〇については、いつ、誰が、どのようにして検収を行つたのか不明であると承知している。
    また、同年四月七日からレンタル料を支払うこととしたのは、前記賃貸借契約の内容が同日から履行されたことによるものであると承知している。

二について

(一) 更新前のシステムには、遠隔情報処理用の端末機は存在したが、TSS機能は新システムになつて初めて導入されたものであり、この新システムの稼動は、昭和五十七年四月七日に開始されたと承知している。
    また、ACOS三五〇の、学生を含めた農学部内への一般公開については、ディスク保守管理等その運用の取扱いについての決定が遅れたため、同年六月十一日からとなつたものであるが、農学部の教官については、同年四月七日から使用できる状態にあつたと承知している。
(二) MS五〇の画像処理標準機能は、実際に昭和五十七年四月から稼動しており、同年一月二十日の工程表でも、そのように予定されていたと承知している。
    なお、農学部が追加要求した画像処理の機能は標準機能に含まれておらず、それに対応するソフトウェアの単体テストは同年八月から行い、十月から稼動したものであると承知している。
(三) MS三〇は、昭和五十七年五月二十日に搬入され、同年六月からその標準機能を用いて環境データ(主としてチャンバー内気象要素(温度・湿度・光強度)の測定値)の収集を開始していたと承知している。
    なお、MS三〇とチャンバーとの接続システムが不完全であつたため、徐々に改善が加えられたほか、チャンバー制御による研究上必要なソフトウェア開発作業が、工程表に従つて行われていつたものと承知している。
(四) MS三〇については、導入後多数のトラブルが発生したことは事実であるが、その後、その標準機能を用いた稼動を行いながら、徐々に改善が図られ、現在では計測・記録用及び制御用としての機能が一応整備されるに至つていると承知している。
(五) 報告書の記述は御指摘のとおり誤りであり、昭和五十七年四月五日にデータ端末用電話が設置された後、同年五月七日に回線用ファームウェアが修理され、多摩農場との遠隔情報処理は、同年五月八日には使用可能となつていたと承知している。
    なお、電話料支払は、同年四月七日からのレンタル開始に備え、データ端末用電話を設置したことによるものであると承知している。

三について

 MS三〇は、制御機能及び計測・記録機能を有しているものであるが、現在、植物用環境制御チャンバー(五台)及び特殊環境チャンバー(一台)と接続し、稼動状態にある。ただし、特殊環境チャンバーに係る土壌水分含有量についての複雑な経時的変化を与える機能については必ずしも十分満足できる域に達していないと承知している。
 MS五〇の使用状況は、計算機使用ノート及び画像処理システム使用簿の記録によれば、御指摘のとおり低利用となつているが、調査委員会がMS五〇の主要な利用者及びセンター関係者から聴き取り調査を行つたところによれば、ノート及び利用簿への記録は厳密になされておらず、これらの記録以外にもMS五〇を使用した事例があつたと承知している。

四について

 昭和五十七年度の機種更新時以降、NECのシステム・エンジニアによつて支援サービスが行われていたことを示す明確な記録は残されていないが、聴き取り調査を行つたところ、支援サービスを受けた研究等の例として次のようなものがあつたと承知している。
1 A助手(農業地水学講座)及び指導学生
 (一) 昭和五十七年九月から五十八年六月
     特殊環境ストレス下における植物の生理・生態に関する研究
 (二) 昭和五十七年十月から五十八年二月
     耐水性団粒の各種分布特性に関する研究
 (三) 昭和五十八年十月から五十九年二月
     低倍率電子顕微鏡による粒子の形状・大きさの特性に関する研究
2 B教授(家畜解剖学講座)及び指導学生
  昭和五十七年十一月から十二月
  画像解析による筋線維の形態学的研究
3 C助手(環境調節工学講座)
  昭和五十七年十一月から五十八年三月
  環境ストレスと植物の生理・生態に関する研究
4 D助手(生物測定学講座)及び指導学生
  昭和五十九年七月頃及び十一月頃
  遺伝資源の画像情報解析に関する研究
5 E技官(センター)
 (一) 昭和五十七年十月から五十八年一月
     MS三〇の操作とファイル管理のためのソフトウェア開発について
 (二) 昭和五十八年二月から五十九年十二月
     MS五〇及びMS三〇の操作とファイル管理のためのソフトウェア開発について

五について

 NECに対するシステム・エンジニアの派遣等の要請は、センターの電子計算機の利用率の向上を意図して、センター長が、NECとの直接の窓口となつていたA元技官を介して、口頭で行つたものと承知している。
 計算機の利用向上のための対策は、本来、計算機の管理運用に携わる者が責任をもつて講ずるべきであるにもかかわらず、改善を要する具体的な問題点を明確にしないまま、NECに対しその対策を委ね、しかも、その進行管理を怠るというような不十分な管理体制により、国立大学に設置した研究用電子計算機の民間業者による不正使用の疑いを招くに至つたことは、極めて遺憾なことと考えており、今後、このようなことがないよう十分注意してまいりたい。

六について

 OA化実験は、センター長の了解を得て、A元技官が口頭でNECに依頼したものであると承知している。
 また、依頼当時は、システムを更新する予定はなかつたと承知している。

七について

 調査委員会が数名の専門家に検討を依頼したところ、センターに持ち込まれたソフトウェアは、東洋大学に関係すると思われる古いソフトウェアをACOS三五〇用に改変したものであり、センターにおける作業は、その一部を更に修正し、実行したものではないかと思われるとの意見もあるが、負荷テストを行つたものというNECの説明も否定しきれないとの意見もあると承知している。
 しかし、調査委員会としては、NECから負荷テストの具体的内容やそのテスト結果についての報告がなされていないこと、負荷テストが必要であつた客観的理由に乏しいこと、テストを終了した時期と東洋大学にソフトウェアを納入した時期とがほぼ一致していること、当該ソフトウェアの担当者がセンターで作業を行つていることなどから見ると、この作業の目的がソフトウェアの修正等そのものにあつた可能性が大きいと思われることから、更に調査しているところであると承知している。

八について

 調査委員会が数名の専門家に検討を依頼したところ、センターに持ち込まれたソフトウェアは、大阪酸素工業株式会社に関係すると思われるものであり、センターにおける作業は、同社がFACOM ― M一四〇Fの代替機としてACOS三五〇を導入することとしたことに伴い、FACOM用プログラムをACOS三五〇用に改変したものではないかと思われるとの意見もあるが、限界テストを行つたものというNECの説明も否定しきれないとの意見もあると承知している。
 しかし、調査委員会としては、NECから限界テストの具体的内容やそのテスト結果についての報告がなされていないこと、テストの終了の時期と大阪酸素工業株式会社がACOS三五〇を導入した時期とがほぼ一致していることなどから見ると、この作業の目的がソフトウェアの改変そのものにあつた可能性が大きいと思われることから、更に調査しているところであると承知している。

九について

 調査委員会が数名の専門家に検討を依頼したところ、御指摘のアウトプットから判断すると、相当高度な技術を持つた者によるソフトウェアの開発が行われたとは思われるが、この作業がN1ネットワークに係るソフトウェアそのものの開発を目的としたものであるか、あるいは農学部における応用のためのソフトウェアの開発を目的としたものであるか、明らかでないとされており、調査委員会において更に調査しているところであると承知している。

十について

 葛西裕之氏が、助手及び大学院学生の二名に対し延べ数時間にわたりMS五〇による画像処理のプログラム相談を行つていたことは、両名からの事情聴取により判明しているが、これら以外の作業は特別業務IIIを行つていたものと承知している。

十一について

 報告書作成の際には、磁気ディスクの打出しは行わなかつたが、現在までの調査において、特別業務に関係する部分をすべて打ち出し、検討した結果は、八及び九についてにおいて述べたとおりであつたと承知している。

十二について

 報告書作成の際には、磁気テープのすべての打出しは行わなかつたが、現在までの調査において、特別業務に関係する七本の磁気テープをすべて打ち出し、検討した結果は、七から九までについてにおいて述べたとおりであつたと承知している。

十三について

 報告書作成の際には、せん孔力ードの打出しは行わなかつたが、現在までの調査において、センターに残存する約三万枚のせん孔力ードを打ち出したところ、その中に特別業務に関係するカードが存在しており、それらを検討した結果は、七から九までについてにおいて述べたとおりであつたと承知している。

十四について

 御指摘の点については、現在までのところ、訂正発表は行つていないが、農学部において更に調査を行つており、その結果を踏まえ、報告書を作成し、訂正発表を行う予定であると承知している。

十五について

 電子計算機使用時間通知書には、賃貸借契約に係る電子計算機(ACOS三五〇)の使用時間のみを記載すべきであつて、日本電気フィールドサービス株式会社の社員が、MS五〇及びMS三〇の使用時間をも記載したことは、御指摘のとおり誤りであり、また、MS三〇の搬入前に同社の社員がその使用時間を電子計算機使用時間通知書に記載したのは、錯誤によるものであり、いずれもセンターの担当者による記載事項の確認が適切に行われていなかつたものであると承知している。農学部においては、担当者に注意したと承知している。

十六について

 日本電気フィールドサービス株式会社による定期保守は、各月の第一月曜日に行うこととされていたため、ACOS三五〇については、搬入直後ではあつたが、昭和五十七年四月五日(月曜日)に点検が行われたものであると承知している。

十七について

 昭和五十七年五月二十一日の日本語処理は、当日午後に行われた農学部職員・学生に対するACOS三五〇の性能と使用方法に関する講習会のために行われたものとの見方もあるが、その事実が確認されていないと承知している。
 また、同年九月二十九日のアラビア文字処理は、NECの説明では、負荷テストのために行われたものとされているが、その事実が確認されていないと承知している。

 右答弁する。




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