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平成元年四月十五日提出
質問第一八号

 医薬品副作用の被害防止に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年四月十五日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




医薬品副作用の被害防止に関する質問主意書


 医薬品の副作用による死亡や病状悪化等の被害が後を絶たず、社会問題となっている。最近でも、四年間で十一人が死亡したホパンテン酸カルシウムをはじめ、重体を引き起こしたエノキサシン、フェンブフェンの併用事件、さらに副腎皮質ステロイドの安易な使用による皮膚障害悪化の例も続出している。
 政府は、一九八五年の日米モス協議による医薬品の「市場解放」でいっそう新薬の導入を進めているが、一方で行政の側の副作用対策は本格的強化が図られず、こうした副作用に対する国民の不安はいっそう増すばかりである。欧米に比べても副作用情報のモニター数が極端に少ないなど対策の遅れは明白であり、医薬品の副作用を最小限に抑え、国民が安心して使用できるよう対策を講ずることは緊急であると考える。
 従って、次の事項について質問する。

一 副作用の未然防止のため医薬品の製造承認審査を厳密に
 1 政府は一九八五年七月から、医薬品の承認審査において外国臨床試験データを原則受け入れることとしたが、日本人と外国人とでは、食生活、体質、人種的に違いがあることは明らかである。一九八五年三月の「外国の臨床試験データの評価に関する研究班」の報告でも、遺伝的要因が薬物の有効性・安全性の人種的差異を生ぜしめる場合があること、食生活等の環境因子、医療実態の差等が薬物の有効性・安全性に影響を与えること、さらに外国で実施された臨床試験データの「信頼性の確認あるいは試験をした医療機関や研究者の資格、条件を把握することは極めて困難と思われる」こと等、国内データの必要性を結論づけている。副作用防止のため国内データを基本とする承認制度に戻すべきと考えるがどうか。
 2 一九八七年六月に製造承認され、九月から発売された武田薬品のマオン錠は、今年一月、同社の自主的措置として発売を中止した。現在、中央薬事審議会が承認しているマオン錠を、メーカーは発売しないという異常な状況が生まれているが、こうした事態はすでに使用され、出回っている同薬の取扱いを含め社会の混乱をまねくものである。なぜこうした事態が起こっているのか明らかにしていただきたい。
二 副作用情報の改善について
  政府は現在、厚生省薬務局が発行している「医薬品副作用情報」(二ヵ月に一回)、「医薬品副作用モニター報告の概要」(年一回)、「厚生省医薬品情報」(二〜三年に一回)と、緊急時にメーカーを通じて「ドクターレター」を医療関係者に配布すること等によって副作用対策を行っている。しかし、今年二月に厚生省が劇薬指定など緊急措置をとったホパンテン酸カルシウムの場合、十一年間、十五万人に投与され十一人の死亡者をだすに至っている。また、すでに「医薬品副作用情報」「医薬品添付文書」で掲載されているエノキサシンとフェンブフェンの併用、副腎皮質ステロイドの副作用についても、内容が徹底せず重大な副作用被害が生まれている。こうした事態が発生する背景には、副作用の情報収集、伝達の点に不備があるといわなければならない。
 1 情報の収集
  @ 厚生省が収集している企業や医師からの「副作用報告」は、一九八七年度で約二、五〇〇件であり、アメリカの五五、〇〇〇件、イギリスの一六、〇〇〇件と比べても極めて遅れている。医師からの情報収集のために政府が指定しているモニター指定病院は一、〇四九ヵ所でしかない。一万六千品もの薬が流通しているもとで、情報量を抜本的に増やすため、モニター指定病院の大幅増加及び収集システムの改善等の対策が必要と考えるがどうか。
  A また、企業からの報告の内容を「重篤、又は未知の副作用」だけにするのでなく、一般的に軽いと思われる副作用でも重い副作用の発生基盤を見出せること、発生頻度の調査も大切なことから、すべての副作用情報を収集すべきと考えるがどうか。
  B 諸外国では副作用、安全性情報がコンピュータでデータベース化されているが、日本では、副作用情報を一覧表にした「医薬品副作用モニター報告の概要」が年一回発行されるだけであり、過去の情報を含め詳しく検索したり利用できる状態にはない。活用しやすい副作用情報の累積資料集の作成や、メーカーに集積されている情報とあわせたコンピュータによる統一したデータベースの構築、全国どこからでも最新のデータにアクセスできるシステムが求められていると考えるがどうか。
 2 医師、薬剤師への情報の伝達
  @ 「厚生省副作用情報」「医薬品副作用モニター報告の概要」は、各都道府県とモニター病院、モニター報告者、医療関係団体(医師会、薬剤師会、製薬工業協会など)にしか配布されておらず、病院、薬局(薬剤師)へはメーカー、団体まかせとなっており、すべての医師、薬剤師に伝えることが不可欠と考えるがどうか。
  A 「ドクターレター」は緊急の使用注意を伝えるもので、これは厚生省がそのつどメーカーに指示して医療機関に配布させている情報であるが、現在の配布方法では小規模な施設には伝達が遅く、大きな病院の場合でもすべての医師に情報が届かないことがある。政府としても迅速、確実に伝達されるよう責任ある対応をすべきと考えるがどうか。
  B 現在、二〜三年に一回となっている「厚生省医薬品情報」を発行当初のように年数回にし、中身も、ニュース的内容だけでなく、当初のように重要な医薬品の使用方法についての総説を示すことが必要であると考えるがどうか。

 右質問する。





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