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昭和四十四年五月二日受領
答弁第五号
(質問の 五)

  内閣衆質六一第五号
    昭和四十四年五月二日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員伊藤惣助丸君提出日本海上空における米軍偵察機撃墜事件と日米安保条約に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員伊藤惣助丸君提出日本海上空における米軍偵察機撃墜事件と日米安保条約に関する質問に対する答弁書



一、安保条約の実施に関連し、政府は米国政府と随時緊密に協議している。また、米軍とも常に緊密な連絡をとつているので、必要な情報については、連絡を受けており、米軍の配置、状況などについても一般的に承知している。しかしながら、個々の航空機等の具体的行動については必ずしも連絡を受けていない。

一、情報収集・偵察活動のために日本国内の米軍施設・区域を米軍が利用することは事前協議の対象とはならない。
  公海上における偵察哨戒飛行は、現下の国際情勢にかんがみ、一般に各国の行なつているところであり、安保条約の下においても、米軍が在日米軍基地を利用してかかる活動を行なうことは、日本の平和と安全にも関するところであり、当然予想されているところである。

一、安保条約上事前協議の対象となる事項は、第六条の実施に関する交換公文において明確に合意されているところである。
  安保条約においてわが国は、「日本の安全に寄与し並びに極東における平和及び安全の維持に寄与するため」米国がわが国において施設・区域を使用することを認めているが、わが国の平和と繁栄は極東の平和と遊離して考え得るものではなく、現下の国際情勢のもとにおいては、わが国に駐留する米軍をも含め極東の米軍の存在がこの地域における戦争の発生を未然に防止しわが国の安全保障のため必要な抑止力を構成しているのである。
  米軍がいるから日本が戦争に巻き込まれるというのは事の本質を見誤つたものであり、米軍がいることによつて日本を巻き込む惧れのある戦争が防止されているのである。

一、朝鮮半島においては、北朝鮮側がいわゆる祖国統一政策に基づき、対韓工作を積極化し、これが原因となつて、プエブロ号だ捕事件と前後して起つた韓国大統領官邸襲撃事件や韓国東海岸における武装ゲリラ上陸事件等にみられるとおり、緊張した情勢が続いており、北朝鮮側による米軍偵察機撃墜事件はかかる緊張を背景として発生したものである。
  今回米国が護衛付きで偵察活動を再開することとしたのは、北朝鮮側による不法行為の再発を防止し、合法的な偵察活動が円滑に行なわれるよう措置したもので、政府としてはその中止を申入れる考えはない。

一、政府は、在日米軍施設及び区域について、従来から米側と話し合いを行なつてきたが、昭和四十三年十二月二十三日開催された日米安全保障協議委員会第九回会合において在日米軍施設の問題について、米側から約五十箇所の施設の返還、共同使用又は移転について提案があり、協議が行なわれた。
  これが具体的処理については、現在、日米合同委員会において鋭意促進を図つており、その結果四月二十五日現在、名寄演習場、日出生台・十文字原演習場など十五箇所の返還及び移転について合意をみるに至つた。
  その他の施設及び区域についても、今後、さらに相当数の返還、共同使用及び移転について日米合同委員会において合意をみるよう引続き、その調整に努力している。

一、沖繩は、その地理的位置及びその果たしている役割から太平洋のカナメ石と呼ばれ、極東における各種の紛争に対処することのできる軍事機能をもち、従来から米国の極東戦略体制における中核的地位を占めているものと評価されている。
  今回の事件に際して、沖繩の基地が具体的にどのような役割を果たしているかについては詳らかでないが、従来の評価に変更があるとは思われない。
  沖繩返還について、政府として従来屡々説明しているとおり、返還後の沖繩を含むわが国全体の安全を考慮しつつ、わが国の国益に最も合致する方策を真剣かつ、慎重に探究しており、そのような立場で米側との交渉に当つている。
  今回の事件は、わが国周辺極東地域の国際環境のきびしさを示すものであるが、政府の沖繩返還交渉の心構えには影響を及ぼすものではない。

一、政府は一九七〇年以降も日米安保体制を堅持することが、現下の国際情勢にかんがみ最も国益に合致するところと確信している。一九七〇年以降安保条約を自動継続せしめるかどうかについては、諸般の事情を勘案し、最も妥当な結論を適当な時期までに出すこととなろう。

 右答弁する。




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