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答弁本文情報

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昭和四十九年一月二十二日受領
答弁第六号
(質問の 六)

  内閣衆質七二第六号
    昭和四十九年一月二十二日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員小林進君提出主権の侵害に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小林進君提出主権の侵害に関する再質問に対する答弁書



一について

1 ベン・バルカ事件についてあまりに詳細にわたつて明らかにすることが外交上適当でないというのは、この事件が本来友好的な関係にあつたフランス・モロッコ両国間に大きな緊張をもたらした事件であり、紆余曲折を経た上で両国は完全に和解しているだけに、事件の当事国でもなくまたフランス・モロッコ両国と友好関係を有する我が国として、この事件の経緯につき詳細にわたつて論ずることは適当でないと考えられるとの趣旨である。

2 前回の答弁書は、ベン・バルカ事件の事実関係とフランス政府の処置につき事実を隠しているのではないか、との質問に対してベン・バルカ事件の事実関係とフランス政府の処置について回答し、大平外務大臣の答弁は訂正の必要がないことを明らかにしたものであり、言葉じりをとらえたものではない。
  なお、「フランス政府の採つた処置と、今回、金大中氏拉致事件に関して日本政府の採つた処置とには大きな懸隔と差異がある」のではないかとの点については、国際刑事事件の解決は、事案の性質、内容に応じて外交交渉で合意されるというのが国際慣行であり、金大中氏事件の処置ぶりについては既に前回の答弁書の四(ロ)の部分で回答したとおりである。

二について

1 外交官の身分を有する者が、駐在国においてある者の拉致行為に関与した場合において、その行為が公的行為である場合と私的行為である場合とが論理的にはあると考えるが、金東雲一等書記官が金大中氏拉致行為に関与していたとの事実のみをもつて同書記官のこの行為を公的行為であると断定することは、現段階では、できないと考える。
  なお、政府としては、金東雲書記官のこの行為を私的行為であると判断しているのではない。

2 一般に外交交渉において一方の当事国がある事項について挙証をしなければならない国際法上の義務を負担するとか、挙証を要求する国際法上の権利を有するとかということがないことは、前回の答弁書の二(4)のとおりであるが、法的な権利、義務の関係を離れていえば、外交交渉において、一方の当事国が自らの主張をする場合、その主張をより説得力あるものとするために、その主張に関連した立証を行うことがあることは言うまでもない。

三について

 「金大中氏は、出国も含めて自由が保障されている」ことは日韓両国政府間の了解であり、昨年十一月二日の金鍾泌国務総理の来日に先立ち金溶植外務部長官より後宮大使に対し、更に金国務総理来日の際同国務総理より田中総理大臣に対し、いずれも明確に述べられたものである。なお文書による合意という形式はとつていない。
 金大中氏の出国許可申請は、現在韓国政府部内において審査中であると承知している。本人が出国を希望するのであれば速やかに出国できることが望ましいことは言うまでもない。大平外務大臣より李(注)前大使に要請を行つたのもかかる観点に立つたものである。

四について

 今回の外交的決着の性格については、前回の答弁書の四(ロ)において述べたとおりであるが、主権侵害に該当しない事案についての国家責任の問題の処理として、いかなる措置が採られたかについての先例としては、一八九八年のザフィロ号事件(米国海軍の補給船ザフィロ号の水夫がマニラにおいて、英国人の財産を掠奪、破壊したことに関し、英国が米国の監督義務違反を追及した事件で、損害賠償の支払いにより解決)、一九一一年のボアセ事件(モロッコにおいて、仏の領事ボアセがスペイン官憲に暴行された事件で、スペインがフランスに陳謝し、解決)、一九六七年の在京ラオス大使館館員の麻薬不法取引事件(在京ラオス大使館員が麻薬の不法取引に関連したとの事件で、ラオスが陳謝し、かつ将来、かかる事件を起さないとの保障をすることにより解決)等がある。
 なお、国際責任が生じた場合に、釈明、陳謝、将来同様の事態を発生せしめないとの保証、責任者の処分、原状回復、損害賠償等のうち、いかなる措置が責任解除措置として採られるかについては、事案の性質、内容に応じて外交交渉で合意されるのが国際的な慣行であることは、前回の答弁書の四(イ)において述べたとおりである。

 右答弁する。




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