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答弁本文情報

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昭和五十年一月十七日受領
答弁第三号
(質問の 三)

  内閣衆質七五第三号
    昭和五十年一月十七日
内閣総理大臣 三木武夫

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員佐野憲治君提出中外電気工業の労使紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員佐野憲治君提出中外電気工業の労使紛争に関する質問に対する答弁書



一について

 中外電気工業株式会社富山工場(以下「会社」という。)に関しては、総評全国金属労働組合富山地方本部中外電気工業富山工場支部(以下「支部」という。)役員等から、所轄労働基準監督署に対し、昭和四十七年八月から昭和四十九年十二月までの間に、労働基準法第二十四条、第三十二条、第三十七条、第三十九条、第九十一条、第百四条等に違反する事実があるとして十二件の申告が行われ、また、同法第六十七条に関連して告訴及び告発(一事案)が行われた。これについて所轄労働基準監督署は、申告外の事項も含めて監督を実施したところ、労働基準法第十八条、第二十四条、第三十二条、第三十七条、第三十九条、第六十一条、第七十五条及び第八十九条並びに労働安全衛生法第十二条、第十七条、第十九条、第二十条、第二十三条及び第百条関係の違反の事実が認められたので、これらについてはその是正方を勧告する等の措置を講じたところである。
 なお、労働基準法第六十七条に関連する告訴告発事件については所轄労働基準監督署は所轄地方検察庁に送付し、同庁はこれを不起訴処分とした。

二について

 所轄労働基準監督署が会社に対して行つた是正勧告はすべて履行されたと承知している。
 なお、労働基準監督機関は常にき然たる態度でその責務を遂行しており、所轄労働基準監督署が会社とゆ着している事実は全くない。

三について

 富山県地方労働委員会は、昭和四十九年十月一日、会社に対し、会社役員等が支部役員等に対して支部からの脱退を示唆するなど不当労働行為を行つたとして、陳謝文の掲示等を命じた。
 会社は、この命令を不服として中央労働委員会に再審査の申立てを行い、当該命令を履行していないようである。
 なお、当該命令は中央労働委員会において争われている場合にもその効力は停止されず(労働組合法第二十七条第五項ただし書参照)、会社は当該命令を履行すべきであるが、この場合には強制力はない。すなわち、当該命令が中央労働委員会において争われている限りいまだ確定していないので、当該命令の履行を罰則をもつて強制することはできない。

四について

 本件について所轄地方法務局において調査した結果、人権侵犯の事実があると認められたので、昭和四十九年五月十日、同局において、会社の工場長山根忠雄及び労務部長江口勝正に対し、人権尊重の理念を啓発するとともに、侵犯事実を摘示し反省善処を促したところ、右両名はその趣旨を理解し、今後かかる行為はしない旨誓約したので、同日付けで説示として処理した。

五について

 昭和四十九年二月二十八日、富山地方検察庁に対し、支部役員山田千晶ほか二名から会社守衛猪山石太郎を被告訴告発人として傷害事件の告訴告発がなされ、同事件について同庁において慎重に捜査を行つたところであるが、告訴告発人らと被告訴告発人との間に示談が成立し、告訴告発も取り消され、また、被告訴告発人も既に会社を退社しているなど諸般の事情を考慮して、同年十二月二十七日これを不起訴処分とした。

六について

 昭和四十九年五月二十四日、富山県が会社の立入検査を行つた際、会社の排水口において〇・七ppmのカドミウムを検出した。この値は、全国一律基準の〇・一ppmを上回るものであつたので、同県では、同年六月一日水質汚濁防止法第十三条第一項の規定に基づく改善命令を出し、その処理に当たつた。会社は、同年十月三十一日までにこの命令に基づく改善をすべて完了しており、その後における同県の立入検査においてこれが確認されている。
 なお、同年五月二十四日、同県が行つた公共用水域である明神川での測定ではカドミウムが検出されなかつたことなどから住民等の健康影響問題はないものと考えられるが、今後の調査により必要があれば健康影響調査について指導してまいりたい。
 また、カドミウムによる労働者の健康障害防止については、労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則により従来から健康診断の実施等必要な措置を講ずるよう監督指導を実施している。会社においては、カドミウムによる健康障害は発生していないが、労働基準監督機関としては今後とも必要な監督指導を進め、健康障害の防止に努めてまいりたい。

七について

 支部役員等から所轄労働基準監督署に対し五回にわたつて労働基準法第百四条第二項に違反する賃金カット等がなされている旨の申告が行われたが、調査の結果同項違反は認められなかつた。また、質問の配置転換命令、賃金カット等が労働組合法第七条第四号に該当するかどうかは、関係労働組合等の申立等に基づき労働委員会等の権限ある機関が判断すべきことであるので、とかくの見解を述べることは差し控えたい。
 なお、支部等が行つた不当労働行為救済申立事件又は配置転換命令に関連する仮処分申請事件については、現在東京都地方労働委員会並びに東京地方裁判所及び富山地方裁判所高岡支部において審査又は審理が進められていると聞いている。

八について

 使用者は、労働関係法令を遵守すべきことは当然であり、政府としては、かねてから労働関係法令違反の防止に努めているところである。
 しかして、労働基準法等に違反する行為を行つた使用者に対しては、労働基準監督機関は、是正勧告等を行うこととしており、特に悪質な事案については送検することとしている。また、不当労働行為救済命令が確定した場合及び不当労働行為救済命令が確定判決によつて支持された場合には、その違反に対しては罰則の適用があるものとされており(労働組合法第二十八条及び第三十二条参照)、不当労働行為救済命令の実効性の確保が図られている。

九について

 政府は、かねてから労働基準法上の母性保護に関する規定の履行の確保を図るとともに、勤労婦人福祉法に基づいて、妊娠中及び出産後の婦人労働者の健康管理についての指導基準を設け、事業主に対し指導を行つているところであり、今後一層婦人労働者の保護の徹底に努めてまいりたい。
 なお、所轄労働基準監督署は会社に対して妊娠中の婦人労働者の健康に配慮するよう指導を行つているところである。

十について

 本件労使紛争に関し東京地方裁判所又は東京都地方労働委員会に係属した事件のうち、総評全国金属労働組合が昭和四十八年十二月に東京都地方労働委員会に対して行つた不当労働行為救済申立事件については昭和四十九年五月に和解が成立したと聞いているが、この外の事件については現在なお係属中であるのでとかくの見解を述べることは差し控えたい。
 ところで、本件労使紛争は、関係者の懸命の努力にもかかわらずいまだに解決に至らず誠に遺憾である。紛争発生後既に相当の年月が経過しており、一日も早い解決が望まれているので、政府としては、今後問題解決促進のため採り得る諸措置について検討を進めるとともに、労使が自主的に話し合い、問題を解決するという気運の醸成を図る等により紛争の早期かつ円満な解決を図つてまいりたい。

 右答弁する。




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