「その案件を、因数分解したらどうなる?」──私はこんな問いかけをよくします。「えっ、ここは法制局でしょ?」「中学校の数学の授業じゃないよね?」そんな声が聞こえてきそうです。
衆議院法制局に持ち込まれてくる案件は、その時々の複雑な事情が絡み合った法律問題を内包するものが少なくありません。議員とともに、問題の所在を的確に把握するためには、その案件に含まれる法的な論点を、既存の法的枠組みで理解できる基本的な要素に分解し、単純化して把握することが便宜です。その上で、それぞれの要素について考えられる解決策を組み合わせていって、体系的な法制度に組み上げていく──そんな作業が私たちのプロフェッショナルな「仕事の流儀」です。
例えば、x2−8x+15=0 この数式を解くときに「えっと、1を当てはめて・・・ダメ、2を当てはめて・・・これもダメ、3は・・・当たりっ!」実際の立案の現場でも、これと似たような思考方法をしていることがあります。でも、これじゃあダメです。因数分解すれば、すぐに x=3, 5 と答えが出るのと同じです。
ただし、x2+1=0 というような問題だと、因数分解しても答えが虚数になってしまいますね。こんなときは、そもそも問題の立て方が間違っているのじゃないか、そんなふうに考えて、最初からやり直すこともしばしばです。
大丈夫、「三人寄れば文殊の知恵」と言うとおり、知恵を出し合えば、必ず何らかの解決策が出てくるものです。
しかし、ここでも気をつけなければならないことがあります。単なる「居心地が良い、仲良しクラブ」では、構成員間で愛想の良さや団結心が増せば増すほど独立した批判的思考が困難となって、非合理な意思決定、すなわち「集団浅慮」が発生する場合があると指摘されています。「文殊の知恵」となるには、一人ひとりが「独立した批判的思考」を心掛ける必要があります。
どうですか。緊張感溢れる、そして居場所もやりがいもある風通しの良い職場、そんな衆議院法制局に魅力を感じませんか?
衆議院法制局長