平成23年11月17日(木)(第2回)

◎会議に付した案件

1.「憲法審査会の運営に関する申合せ」についての報告

「憲法審査会の運営に関する申合せ」について報告があった。

2.会長代理の指名

会長は、会長代理に、中谷元君(自民)を指名した。

3.日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件

参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。

参考人中山太郎君及び衆議院法制局より報告・説明等を聴取した後、意見表明等を行った。

(参考人)

前衆議院憲法調査会会長
   元外務大臣   中山 太郎君

(説明者)

衆議院法制局法制企画調整部長    橘 幸信君

◎中山太郎参考人の報告等の概要

序.「憲法調査委員会設置推進議員連盟」の立ち上げと活動

@議連の設立趣意書と「憲法50周年記念フォーラム」(1997年5月〜11月)

  • 平成9年5月、「憲法調査委員会」の国会設置を目指す「憲法調査委員会設置推進議員連盟」設立の呼びかけを行った。同年11月には、「憲法50周年記念フォーラム」を開催し、GHQが作成した日本国憲法草案の起草に携わった5人の関係者をお呼びするなどの活動を行って以降、常に憲法と共に歩んできた。

A湾岸戦争時の苦い経験(1991年1月)

  • 現実政治の上で「憲法問題」に直面したのは、湾岸戦争の時だった。戦争勃発の際、外務大臣としてサウジアラビアを訪問したとき、同国外相からの自衛隊派遣の要請を受けたことや、ペルシャ湾で日本のタンカーが石油を運んでいるのに自衛隊を派遣できないのかという指摘、その他内外の議論が集中する中、当時の我が国は「憲法の制約上、海外に自衛隊を派遣することはできない」とされていたため、別の方法での支援とせざるを得なかった。他方で、自分も戦争体験者としての経験もある。そのためにも、憲法はどうあるべきなのか、国民の皆さんに決めて頂く機会を作りたいとの思いで、憲法論議に取り組む決意をした。
  • 元々私は小児科医で、小児まひの研究者としての研究や地域の医療に取り組んできたが、医者で外務大臣を経験した先達である青木周蔵は、渡欧してプロイセン憲法を学び、明治憲法の制定に正面から取り組み、新しい国の在り方をまとめていった政治家である。

B議案提出権のない憲法調査会の設置へ(1999年7月)

  • 議連に超党派の多くの議員の参加を頂いたのは、政党再編の過程で多くの党に分かれるに至ったかつての同志や、森喜朗元総理などの尽力のおかげである。議連の活動においては、「小異を捨てて大同につく」との方針の下、「憲法調査委員会」に憲法改正原案の提出権を与えるかどうかが議論になった際も、「議案提出権のない、純粋な調査のための調査会」を設置するとの方向で意見集約を図った。
  • その結果、憲法調査会は、全ての会派が参加する形で発足することができた。

1 憲法調査会の調査の経緯と会長として心掛けたこと等

@会長として心掛けたこと

  • 会長として特に留意したことの一つは、憲法論議は国会でこそ行われるべきということである。このことは、幹事会に政府職員を入れなかったことにも現れている。私は、「憲法論議だけは政府に手を突っ込まれずに、国会議員が政治家としての立場で議論しなければならない。国会職員こそがすべての情報を握って補佐してほしい。」と事務局に言った。
  • もう一つ心掛けたことは、憲法は国民のものということである。どのような立場であれ、憲法調査会を議員同士の自由な討論の場にし、国民にオープンなものとするため、幹事会で相談しながら工夫した。特にユニークだと言われたのは発言時間の割り当て方であり、一回当たりの発言時間を例えば5分以内と決めた上で、どの会派であっても何回でも発言してもいいという方法をしばしば採用した。
  • 自由討議では、指名されれば自由に憲法に関する持論を述べることができるが、いつ反論が飛んでくるか分からないから、緊張感もある。

A調査活動において特徴的な事柄

  • 憲法調査会の調査活動の中で特徴的な事柄の一つは、海外調査である。憲法調査会の5年間、毎年、合計5回の海外調査を行った。特に印象に残っているのは、平成13年の海外調査でイスラエルを訪問したときに、首相公選制の導入について調査をしたが、先方が「首相公選制は失敗だった」と述べられたのには、一同深く考えさせられた。このほか、欧州各国の王位継承制度や憲法裁判所制度なども、超党派の議員団の関心を大いに刺激したテーマだった。特に憲法裁判所の制度は、多くの欧州各国のほか、タイや韓国でも導入されており、国政の中で重要な役割を担っているとのことだった。憲法審査会でもぜひ海外調査を行うことを考えてほしい。
  • もう一つ特徴的な事柄は、地方公聴会である。国民の中にある憲法に関する生の意見を反映した議論をする観点から、地方公聴会を9回開催したが、特に沖縄での開催には強い思い入れがあった。沖縄は、国内唯一、地上戦闘に住民が巻き込まれ、多くの尊い命が失われた地域であり、我が国の独立回復後も間接統治の形で米国の施政権下に置かれた状態が長く続いた。また、米軍基地が集中する状況の下で沖縄の人々は大きな負担を強いられている。沖縄で地方公聴会を開催したことには、大きな意義があった。

B報告書のとりまとめと提言

  • 5年間にわたって「憲法改正を前提としない純粋な調査」を行ってきたので、次は論点を深掘りし、「憲法改正の是非を含めた調査検討」に進むはずだったが、その前に、やっておかなければならないことがあった。それが、国民投票制度の整備であった。2005年4月にとりまとめた最終報告書に、憲法改正国民投票法の整備に関する提言を盛り込み、その提言を実施したのが憲法調査特別委員会であった。

2 憲法調査特別委員会の設置と憲法改正国民投票法の制定の経緯

  • 憲法調査特別委員会が設けられるまでの間、私的に、ヨーロッパ各国の国民投票の実態を視察した。山花郁夫議員は、この経験を踏まえ、「人」を選ぶ選挙と「政策」を選ぶ国民投票との違いを認識して、できるだけ自由な意見表明ができることとした現在の国民投票法の骨格を提言したと聞いている。

@各国の国民投票法制の調査から自公案と民主案の提出

  • 憲法調査特別委員会では、外国の国民投票法制を含めて国民投票法制全般の調査を行い、論点整理を行った。
  • これを踏まえ、2006年5月末に、多くの論点についてほとんど違いのない自公案と民主案が相次いで提出された。委員長提出法案だと委員会審査が省略となって、立法者意思が会議録上明確にならないことを避けるため、委員長提出法案に一本化しなかった。

A与野党の修正協議による大幅な歩み寄り

  • 憲法改正には若い人たちの意見を反映しなければならないと思い、18歳投票権に批判が多かった自民党内の説得に奔走した。その結果、自民党も含めて国民投票の投票権年齢は18歳とされ、自公案と民主案の差異はますます小さくなった。
  • 2006年1月14日の憲法調査特別委員会で、自公案・民主案の提出者から、総括的発言としてそれぞれの法案を修正する大胆な歩み寄りの発言をした。

B年を明けての「政局化」〜「しこり」が残った採決

  • 2007年1月1日の年頭所感で当時の安倍晋三総理が「憲法改正国民投票法案について、本年の通常国会で成立を期す」と述べ、同4日の年頭記者会見では「憲法改正をぜひ私の内閣で目指していきたい。参議院選でも訴えたい」と述べたこともあり、憲法改正国民投票法案の扱いは、一気に政局になった。
  • 同年4月12日の採決当日、理事会の開会予定の時間になっても枝野幸男理事は現れず、しばらくして枝野理事から船田元理事に「上を説得できなかった。責任をとって私と園田康博理事は理事を辞任する」との連絡があった。私もぎりぎりまで採決に踏み切るべきかどうか迷った。
  • 質疑を終局して討論・採決を宣告すると、野党委員が委員長席を取り囲んだ。
  • このような「しこり」が残る形での採決は、それまでの経緯からして本当に残念だった。ただ、参議院では附帯決議を付した上で円満な形で可決された。私は「しこり」は解消されたと思ったが、そうはいかなかった。
  • 2007年7月の参議院議員選挙の結果、衆参のねじれが生じ、憲法審査会規程を制定しないという異常な状態が長い間放置されることとなった。

おわりに

  • 憲法改正国民投票法では、法律施行後「3年間の準備期間」を設けていた。これは、「3つの宿題」をこなすとともに憲法調査会の最終報告書で指摘した論点を深掘りするために設定された期間である。しかし、結果的に、この準備期間を1年以上も過ぎた本日まで、憲法審査会は始動できなかった。その原因の一つに、衆院の憲法調査特別委員会での採決の「しこり」が挙げられてきた。
  • しかし、本日、すべての会派が参加する形で、衆院憲法審査会はその活動を開始したことは、嬉しい限りである。
  • 大震災への対応の一つとしての「非常事態」条項など、論ずべき論点は数多くある。現役の国会議員の皆さんの真摯な議論を切に期待する。私も、憲法論議が国民的規模で盛り上がるよう、微力を尽くしていきたい。

◎衆議院法制局の説明の概要

1.憲法調査会報告書の編集方針とその概要

  • 衆議院憲法調査会の最終報告書の編集方針については、@委員の多様な意見を偏ることなく公平に、かつ、類型化した上で、要約して記載する、A多く述べられた意見についてはその旨を記載する、B議論の全貌を分かりやすく提示するため、総論・総括的な部分を設けることが3つの方針とされた。
  • 編集方針Aの「多く述べられた意見」の明記が、報告書の最大の特徴であり、「@少なくとも20人以上の委員が発言したテーマであること、Aそのうち、発言した委員の3分の2以上が賛成したものであること」とされた。
  • 意見の概要については、最終報告書の中の「あらまし」が、最終報告書のエッセンス中のエッセンスであり、編集方針Bの「総論・総括的な部分」に該当する。この中から更に「多く述べられた意見」をいくつか紹介する。
  • 「前文」については、我が国固有の歴史・伝統・文化等を明記すべき、との意見が多数意見だった。
  • 「象徴天皇制」については、全体として、現行憲法の規定を堅持すべき、との意見が多数意見だった。
  • 最も激しく議論された「9条」に関する論点について、
    • (1)自衛権・自衛隊を法的に認知するために、何らかの憲法上の措置をとることを否定しない、とする意見が多数意見だった。
    • (2)集団的自衛権行使の是非について、@無限定にこれを認めるべき、A限定的に認めるべき、B一切認めるべきではない、との意見にほぼ三等分された。@とAをくくり、「集団的自衛権の容認」の意見が多数意見だったとする読み方も可能だし、また、AとBをくくり、「集団的自衛権全般は認めるべきではない」とする意見が多数意見だったとする読み方も可能、とされたデリケートな論点だった。
  • 「国民の権利・義務」については、いわゆる「新しい人権」を憲法に明記するべきであるとする意見が多数意見だった。
  • 「国会」「内閣」の政治部門について特徴的だったのは、議会オンブズマン制度の導入等国会の行政監視機能の強化が多数意見だったことである。
  • 「司法」に関しては、憲法裁判所を導入すべきとする意見が、多数意見だった。
  • 「地方自治」に関しては、最近の地方分権の進展の現状に鑑みれば、地方自治に関する規定をより充実させるべき、との意見が多数意見だった。
  • 現行憲法に規定のない「非常事態」に関する何らかの規定を設けるべきとする意見が多数意見だった。

2.いわゆる「3つの宿題」について

@附則3条の「18歳選挙権実現等のための法整備」

  • 憲法改正国民投票の投票権者は18歳以上とされているが、同じ参政権なのに選挙権の方は20歳以上では、立法政策としての整合性がとれないのではとの観点、民法などの成年年齢もこれに合わせる必要があるのではとの観点から、附則3条1項で、国は、この法律が施行されるまで(平成22年5月18日まで)の間に、18歳選挙権が実現すること等となるよう、公選法や民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講じなさい、と定めている。
  • これらの関係法律の整備法は、附則3条1項の規定によって国民投票法の本格施行までの3年間の準備期間の間に成立させなければならないものとされているが、法整備が3年以内に行われた場合でも、その施行までには一定の周知期間・準備期間を要すると予想されるので、附則3条2項では、前項の法制上の措置が講ぜられた後、それらの改正法律が施行されるまでの間は、経過的に、憲法改正国民投票も20歳投票権で実施する旨の規定が設けられた。
  • 成年年齢引下げのための法令は、多くの省庁の所管法律にまたがるため、法案提出者は、この整備法案は基本的には閣法によって提出されるべきものと想定していた。

A附則11条の「公務員の政治的行為の制限に係る法整備」

  • 現行の国家公務員法、地方公務員法等の公務員に関する法令の規定では、政治的行為の制限に関する規定が幅広く設けられているが、憲法論議の場面では、公務員といえども一人の国民であり、地位利用を伴わないような純粋な他人への賛否の勧誘行為などを禁止する必要はないのではないか、そのような方向で法整備を行うべきであるというのが、附則11条の規定である。
  • 法制的には、憲法改正国民投票法の一部改正法という形で立案されることが念頭に置かれており、憲法審査会の所管事項となると解されている。

B附則12条の「憲法改正以外の国民投票制度導入の検討」

  • @Aはこの法律が施行されるまでに法整備を行うものとされているが、Bは「締切り」がない宿題である。
  • これは、民主党案が、憲法改正以外の一般的な国民投票の導入を最後まで主張していたことに配慮したものと解されているが、その検討の範囲については少々異なっている。
  • 民主党の最終修正案では、「国政における重要な問題のうち、@憲法改正の対象となり得る問題、A統治機構に関する問題、B生命倫理に関するような政党政治を超えた国会議員・国民の死生観などに関する問題などを例示として掲げた上で、その詳細は「国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める」とされていた。
  • これに対して、成立した法律の附則12条の検討範囲は、「@憲法改正を要する問題(つまり、最終的には96条を発動して憲法改正国民投票の対象となるような事項について、予備的に、事前に民意の動向を探ろうとする場合)と、A民主党の最終修正案と同様に、憲法改正の対象となり得る問題」のみとされている。
  • この国民投票の対象範囲の検討は、憲法審査会の所管事項と解されている。

◎各委員からの意見表明等の概要

●各会派一巡目の意見表明等の概要

山花 郁夫君(民主)

  • 民主党は結党以来、党に憲法調査会を設けて議論・提言を行ってきている。憲法改正の発議は衆参両院で3分の2が必要で、主要政党がほぼ一致しなければ発議は事実上不可能であることから、ならば各党が独自案を書き下すこともないだろうと、2005年の憲法提言では条文化までは行わずに中間的な形で大体の考え方をまとめ、国民的議論をまず起こすべきと主張してきたところである。
  • 国民投票に関しては、党内では、憲法改正問題に限定せず、直接民主制の一つのあり方として国民が国政に直接参加する機会という観点から議論を行った。例えば女性天皇を容認するには、天皇制に関わる問題として国民投票も必要ではないかといった議論が行われた。
  • 当初は公職選挙法をアレンジして国民投票法を制定することが想定されたが、国民投票は国のあり方に関する投票であり、政権選択選挙とは性質の異なるものであるといった議論があった。
  • 国民投票法制定時は、与野党が法案内容で歩み寄り期待感が高まったが、時の政府のトップが争点化するという不幸な出来事が本日に至る大きなきっかけであった。
  • 現在は大震災からの復旧・復興が最優先で取り組まれているため、憲法問題は相対的に言えば優先順位は下がるが、全く必要ないとは言えない。現行憲法が我が国で通用しているのは、憲法に対する国民の法的確信があるからであり、憲法に関して国会でしっかり議論を行っていく必要がある。

中谷 元君(自民)

  • 憲法審査会においては、国民投票法の附則に定められた「3つの宿題」について、ぜひ早期に議論を開始したい。
  • 憲法改正原案の提出については、参議院と連携して設置する両院の合同審査会が、両院の憲法審査会に改正原案の起草を勧告するというのが適切な筋道である。したがって、衆参両院の「合同審査会」が機能するよう規程を定めるなどの体制整備を早急に行うべきである。
  • 本審査会においては、「衆議院憲法調査会報告書」に示された多岐にわたる論点の議論を深めることが必要である。特に非常事態に関する規定については、本年の東日本大震災を受けて、非常事態規定を憲法に設けるべきとの意見が有識者等からも出ている。
  • 自民党結党の大義は、占領下で作られた憲法を改正し、我が国を豊かにするというものであった。経済大国については達成したが、憲法改正については道半ばである。
  • 自民党は、平成17年の立党50年党大会で「新憲法草案」を発表した。現在も憲法改正推進本部において議論を行っており、サンフランシスコ講和条約発効から60年にあたる来年4月28日を目標に、同草案をバージョンアップした新しい時代に対応できる憲法改正案を取りまとめる。本審査会でも鋭意活発な議論を行っていくことを国民に約束する。

赤松 正雄君(公明)

  • 公明党の現行憲法に対する姿勢は、現行憲法の国民主権、基本的人権、平和主義という3原則を変える必要はないが、時代状況の変化に応じて、環境権やプライバシー権などを付け加える余地はあるというもので、大枠で言えば「護憲」だが、さらに詰めていけば「加憲」という立場である。
  • 憲法調査会、憲法調査特別委員会での議論を通じ、憲法をめぐる国民的議論は盛り上がってきていたように思う。不幸な出来事で空白の4年間が生じたが、本審査会での議論により憲法論議をさらに盛り上げるべきだ。
  • 国会における議席数は、広範囲な国民の憲法に対する意見を反映していないという思いがあり、特別委が終わった後の3年の凍結期間に、憲法改正を要する項目か否かについてつぶさに研究・審査することを主張したが、無為に過ごされてしまい残念である。
  • 本審査会は、現行憲法の展開の在り様を審査する形でスタートすべきである。また、並行して3つの宿題の早期解決もあって良いのではないか。

笠井 亮君(共産)

  • 日本共産党は、本日の憲法審査会開催に反対した。国民は憲法改正を求めておらず、憲法審査会を動かす必要はない。
  • 今日の憲法をめぐる動きは、9条改憲を目指す勢力が2000年に憲法調査会を設置したことに始まる。調査会を足がかりとして、国民の中に改憲の機運を盛り上げようとしたが、国民世論は9条改憲反対が多数派である。
  • 2005年の総選挙後の国会で憲法調査特別委員会が設置され、自民、公明、民主の各党は、憲法に改正規定があるのに手続法がないのは立法不作為だと主張した。しかし、国民は改憲を求めておらず、手続法がないことで国民の権利が侵害された事実もなく、立法不作為論は成り立たないものだった。安倍政権のもとで改憲手続法が強行採決されたが、これは慎重審議を求める国民の声を無視したものだった。
  • 憲法審査会を設置する国会法が施行されても、憲法審査会規程を制定できなかったが、自民、公明両党は2009年、野党の反対を押し切って憲法審査会規程を制定した。
  • 民主党は、改憲手続法及び憲法審査会規程の制定に反対した。政権獲得後、民主党は憲法審査会を始動させてこなかったが、ねじれ国会対策のため、憲法審査会を始動させた。民主党は、何事もなかったかのように憲法審査会を動かそうとしている。民主党と自民党が憲法にかかわる問題を軽々しく扱っていることに国民の批判は免れない。
  • 中山参考人からこれまでの経緯について話があったが、憲法審査会を始動させなければならないことに関して説得的な話はなかった。憲法審査会が始動しなかったことで、国民が不利益をこうむった事実はない。

照屋 寛徳君(社民)

  • 社民党は、改憲手続法は主権者たる国民の意思が反映されるような手続法でなければならないのに、国会における審議が不十分のまま安倍内閣の下で強行採決により成立を図ったことに強く抗議し、法案成立に反対した。
  • 改憲手続法は参議院での審議の際、18項目の附帯決議が付された。また、同法附則では、選挙権等の年齢、公務員の政治的行為に関する法整備について、同法施行までの間に法制上の措置を講ずると定めている。同時に、参議院における附帯決議では、最低投票率、テレビ・ラジオの有料広告規制等について本法施行までに検討を加えることとされていた。改憲手続法の抜本的見直しを求める。
  • 今政治がすべきことは、国民の生活を再建し、憲法の理念を実現し、平和国家としてこれからも歩んでいく決意を内外に示すことである。
  • 多くの国民は、東日本大震災、原発事故、放射能汚染におののいている。現下の状況は憲法前文の平和的生存権、13条の幸福追求権、25条の生存権などが著しく侵害されている状況と言わざるを得ない。
  • 沖縄では、米軍基地の存在による事件・事故や、爆音被害によって、日常的に憲法法体系が、安保法体系に侵食され、県民の基本的人権と尊厳が守られておらず、命の危険にさらされる、反憲法的な生活を強いられている。
  • 社民党は、護憲政党の立場から、いかなる改憲策動にも反対である。

柿澤 未途君(みんな)

  • みんなの党は、憲法改正に賛成の立場である。日本国憲法の公布から65年を経て、これまでの国の形を見直すべきときに来ていることは明らかである。憲法9条以上に、見直すべき憲法の条項はあると考える。
  • みんなの党は道州制の導入を主張しているが、これは国の形の大改革である。そうなると、憲法第92条を議論の俎上に乗せる必要がある。
  • 憲法第94条については、本年の国会における総合特区、震災復興における復興特区の議論で、条例による法律の上書きの可否の問題と絡み、今も議論になっている。
  • みんなの党は、一院制を党の基本政策に掲げているが、一院制を実現するためには、二院制を定めている憲法第42条を改正する必要が出てくる。
  • みんなの党は首相公選制の導入を基本政策に盛り込むことを党内で議論しているが、導入のためには、憲法第67条の改正が必要となってくる。
  • 憲法を不磨の大典とするのではなく、その制定の経過からしても、その妥当性が再検証されるべきである。改正の発議を3分の2としている憲法96条を改正して、発議の条件を過半数に下げることも見直しの対象となり得る。

中島 正純君(国民)

  • 中山参考人の話は、すべての会派が参加する形で憲法調査会がスタートするに至った経緯、少数者の意見をじっくり聞くとの基本方針の下に発言時間等に工夫をしたこと等、大変示唆に富むものである。
  • 国会における憲法論議には約4年間の空白期間が生じたが、その間も国民新党は憲法論議の再開を促進すべきとの立場を取ってきた。
  • 東日本大震災は、重要な憲法問題をはらむものであり、とりわけ非常事態事項を憲法に設けることについて議論することは、立法府に課せられた責務である。
  • 現行憲法については、国防上の問題点等さまざまな問題が指摘されてきている。国民新党は昨年の参議院議員選挙に際しての政策集で、「平成の自主憲法制定への憲法論議の再開促進」という項目を立てて、憲法について言及している。憲法審査会において積極的に憲法論議を行っていきたい。

●各会派一巡後の意見表明等の概要

古屋 圭司君(自民)

  • 憲法改正国民投票法の宿題にあげられた、18歳選挙権実現等のための法整備、公務員の政治的行為の制限に係る法整備については、速やかに結論を出す必要がある。
  • 憲法第96条では、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議するとあるが、ここにある「3分の2」を「過半数」に緩和することに賛成である。
  • 日本は硬性憲法の国だが、他の硬性憲法の国では憲法改正を行っている国は多い。憲法は国民自らの手で作るというのが世界の国の例であるが、日本では、国民自らの手で憲法が作られたのではないということが厳然たる事実として存在している。
  • 上記の憲法第96条の改正をする理由は、主権者である国民が主体的に憲法改正の可否に参画する機会を増大していくという一点である。審査会において是非議論すべきである。

辻元 清美君(民主)

  • 「立憲主義」の意味について、共通認識を持つべきである。憲法第99条の憲法尊重擁護義務は、為政者が守るべきルールを国民の側から示されていると認識すべきであるとの指摘が多くなされた。憲法改正国民投票法案の審議での混乱は、単なる政局がらみのものではなく、行政の長が憲法改正を公約にすることが問題視されたものである。
  • 海外派遣の中では、国論を二分するような問題は憲法改正になじまない、国民の中から改正についての意見がわき起こって、国会がその意見にどう答えるかという姿勢で臨むべきである、との指摘があった。
  • 憲法改正手続についての話があったが、これには賛否がある。憲法を変えやすくするハードルを低くして、政権交代のたびに争点になった主張によって憲法が変わるようでは、政治が安定しないことにつながる。

近藤 三津枝君(自民)

  • 3月11日の地震、原発事故の災害によって、被災地では予定されていた地方議会議員や首長の選挙ができなくなり、特例法が制定されて選挙期日の延期・任期延長の特例措置が講じられた。同様の措置を衆議院議員選挙や参議院議員選挙においても講じられるかを政府に質問主意書でただしたが、任期が憲法に定められているので、現行憲法の下では許されないとの答弁があった。
  • 非常事態に対する想定が現行憲法ではなされていない。東日本大震災を教訓として、非常事態にも十分に対応できる憲法としていかなければならない。

柴山 昌彦君(自民)

  • 憲法審査会が始動するまでの4年間の空白期間で、憲法や国民投票法を取り巻く環境は大きく変わり、審議が必要な状態になった。
  • 原発立地の可否など、国民投票の対象をどう解するかについては、間接民主制をとる我が国の憲法との関係から大きな問題になっている。
  • 国民の意思を確認するためにも、国民投票は必要である。また、政党色が憲法改正案に反映されてはならないからこそ、国民投票が硬性憲法の最終的な手続として定められている。
  • 国民投票が一刻も早く機能するように、3つの宿題を集中的に議論すべきであるとともに、国家緊急権を含め、さまざまな課題についても並行して議論をすべきである。

中谷 元君(自民)

<中山太郎参考人に対して>

  • 先ほどの報告にあったテーマ以外で、海外調査を通じて感じたことや、特に印象に残るものがあれば、お聞かせいただきたい。
  • 各党からの協力を得るために腐心されたことや印象に残っていることがあれば、お聞かせいただきたい。