平成24年2月23日(木)(第1回)

◎会議に付した案件

1.幹事の補欠選任

補欠選任 逢坂誠二君(民主)  三日月大造君(民主)委員辞任に伴いその補欠

2.日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件 (選挙権年齢・成年年齢の18歳への引下げに係る政府の検討状況について)

政府当局から説明を聴取した後、自由討議を行った。

◎政府当局からの説明聴取の概要

内閣官房の説明の概要(年齢条項の見直しに関する検討委員会について)

  • 憲法改正国民投票法附則3条を受けて、政府としては、平成19年5月、各府省事務次官等をメンバーとした年齢条項の見直しに関する検討委員会を設置し、「20歳以上」等の規定を有する法令の年齢条項について総合的な検討を行ってきた。
  • しかし、平成21年10月の法制審議会答申において、民法の成年年齢引下げについては、直ちにこれを行うことは適当ではないとされたこともあり、憲法改正国民投票法が施行された平成22年5月までには法制度上の措置を講ずるに至らなかった。
  • 政府としては、年齢条項引下げに関する国会における議論の推移も見守りつつ、引き続き関係法令についての検討を進めるとともに、法制審議会答申で指摘された成年年齢の引下げに向けた環境整備のための施策を積極的に推進することとしたところであり、明日(2月24日)に、年齢条項の見直しに関する検討委員会を開催し、各府省における検討状況等についてフォローアップすることとしている。
  • 政府の検討委員会では、公職選挙法や民法をはじめとして、法令上「20歳以上」などの年齢に関する条項について総合的に検討を行っており、その対象法令数は現時点で338であり、内訳は法律が204、政令が37、府省令が97となっている。このうち9割について、各府省庁における検討が終了している。対象法令数は多いものの、公職選挙法、民法の改正に伴い自動的に年齢が引き下がるもの、あるいは20歳等の規定があっても、選挙権年齢、成年年齢とは別の理由で年齢が定められているものも数多くあるため、現時点で改正を必要とする法令として把握しているものは、法律10本、政令3本、府省令5本程度である。
  • 法制審議会で指摘された民法の成年年齢の引下げに向けた環境整備については、関係府省において各種施策を推進しているところである。
  • 年齢条項の見直しに関する検討委員会においては、関係省庁の密接な連携の下に、引き続き関係法令についての検討を加速させるとともに、成年年齢の引下げに向けた環境整備のための施策を積極的に推進していく。

総務省の説明の概要(選挙権年齢の引下げについて)

  • 憲法改正国民投票法案の国会審議でも取り上げられていたが、選挙権年齢の引下げについては、民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであること、諸外国においても成年年齢に合わせて18歳以上の国民に投票権・選挙権を与える例が多いこと等から、選挙権年齢と民法の成年年齢等は一致させることが適当であると考えられるところである。
  • 平成19年5月の憲法改正国民投票法の成立を受けて、政府においては、内閣官房副長官(事務)を委員長とする年齢条項の見直しに関する検討委員会が設置され、公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の年齢条項について検討が行われてきた。
  • 民法の定める成年年齢については、平成21年10月の法制審議会の答申において、18歳に引き下げるのが適当としつつも、消費者被害の軽減などの環境整備が必要であり、現時点で直ちに引下げを行うことは適当でないとされたところである。
  • こうしたことなどから、憲法改正国民投票法が施行された平成22年5月までには、公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令について、必要な法制上の措置を講ずるに至らなかった。
  • 総務省としては、選挙権年齢の引下げのための法的措置については、内閣官房等とも連携し、法律体系全体の整合性を図りながら、適切に対処していきたい。

法務省の説明の概要(法制審議会の答申「民法の成年年齢の引下げについての意見」について)

  • 憲法改正国民投票法附則3条の規定及び平成19年11月に開催された年齢条項の見直しに関する検討委員会における決定を踏まえて、平成20年2月、法務大臣から法制審議会に対し、民法の成年年齢の引下げの当否等について諮問がされ、民法成年年齢部会で調査審議が行われた。
  • 民法成年年齢部会では、各種専門家、有識者からの意見聴取や高校生、大学生との意見交換を実施したほか、国民の幅広い意見を聴取しながら検討が行われ、平成21年7月に「民法の成年年齢の引下げについての最終報告書」が取りまとめられた。法制審議会総会では2回の審議が行われ、同年10月、法務大臣に対して答申が行われた。
  • 答申は、「民法の定める成年年齢については、これを18歳に引き下げるのが適当であるが、現時点で成年年齢の引下げを行うと、消費者被害の拡大など様々な問題が生じるおそれがあるため、引下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要である」とした上で、「民法の定める成年年齢を18歳に引き下げる法整備を行う具体的時期については、関係施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえて判断するのが相当である」としている。
  • 成年年齢の引下げを行う場合の問題点を解決するための施策としては、@消費者被害の拡大のおそれ等の問題点を解決する観点からは、消費者庁による消費者行政の一元化及び充実、学習指導要領に基づく消費者教育等の充実等に向けた取組が行われており、また、A若年者の自立を援助する観点からは、新しい青少年育成施策大綱等の内容を踏まえた若年者の総合的な支援に向けた取組等がされているが、これらの施策の効果が現れ、国民の間に浸透するには、ある程度の期間を要すると考えられる。法務省としては、引き続き、関係省庁とも連携を図りつつ、民法の成年年齢の引下げに必要な環境の整備に努めたい。
  • 公職選挙法の選挙年齢を引き下げるには、民法の成年年齢も引き下げなければならないとの議論があるが、これらはそれぞれ立法趣旨が異なり、理論的に見ても、諸外国の立法例を見ても、必ずしも一致させる必要がないと承知している。したがって、民法の成年年齢を引き下げずに公職選挙法の選挙年齢を引き下げることは可能と考えており、むしろ、公職選挙法の選挙年齢の引下げを先行させることによって、民法の成年年齢の引下げに向けた国民の意識を醸成した上で、国民の理解が得られた後に民法の成年年齢を引き下げることが、一つの有力な選択肢と考えている。

◎自由討議における各委員の発言の概要(発言順)

近藤 三津枝君(自民)

  • 憲法改正の国民投票権を18歳以上とすることについて、日本の人口構成の変化の面から意見を述べる。最新の国勢調査によると日本の20歳以上の人口は1億367万人、これに対し20歳から29歳までの若者は1346万人であり、全有権者に占める20代の人口の割合は13%である。戦後初の選挙(昭和21年4月10日)時の20代の人口割合は約28%であり、65年間に、少子化により、半分以下の割合に減っている。仮に18歳、19歳の若者に選挙権を与えると、全有権者に占める20代までの人口は、2%増えて15%となる。わずか2%の増加と言われるかもしれないが、若者の意見がそれだけ反映されるということになる。今後の人口減少がさらに深刻になる中で、将来の日本を担う若者の世代の意見を憲法改正に反映させるためにも、18歳以上の者にも選挙権を与えるべきである。
  • 18歳は高校卒業の年齢に当たるが、実際に憲法改正が行われることを想定すると、国民投票が行われる2、3年前から国会やメディアで議論がなされるだろう。18歳になってから初めて憲法改正について考えるのではなく、その前からしっかり考えられるようにしなくてはならない。一方で、現行憲法は制定経緯から翻訳調でわかりにくい表現が多くあり、解釈で工夫しながら現実の政策を推進しているというわかりにくい面もある。18歳の若者でも憲法改正について判断できるような、わかりやすい憲法としていかなければならない。

柿澤 未途君(みんな)

  • 私も、10年以上前、18歳選挙権を目指すNPO団体と連携しながら、この問題を研究し、取り組んできた。2010年4月の衆議院総務委員会でも、憲法改正国民投票法の附則にある選挙権年齢の18歳引下げについて必要な措置を講ずるとしながら、憲法改正国民投票法施行までにできないのではないかという意見を述べた。極端に言えば、今の状態は法律違反と言ってもいい状況であり、早急に検討すべき課題である。
  • 選挙権年齢の引下げと民法上の成年年齢の引下げを切り離すことができるかどうかという論点について、総務省は、選挙権年齢と成年年齢は一致させるべきとの意見があり、一方で法務省は、民法上の成年年齢については、必ずしも一致させる必要はなく、選挙権年齢のみを引き下げることも可能であるとの意見で、見解に違いがあった。年齢条項の見直しに関する検討委員会でとりまとめをする立場の内閣官房としては、総務省、法務省の意見についてどのような見解か。私自身は、この問題についてさらに深めて議論していくことが憲法審査会の使命であると考える。

大口 善徳君(公明)

  • 憲法改正国民投票法附則3条1項に基づき、どの範囲の法律について法整備をすべきかについては、憲法改正国民投票法案の国会での審議においては、少なくとも公職選挙法の改正が必要であるという意見や、あるいは、民法の改正も必要であるなど様々な議論があったが、民法上の判断能力と参政権の判断能力は一致させるべきということで附則は書かれている。
  • 法務省は、民法の成年年齢引下げと公職選挙法の選挙権年齢の引下げについて、それぞれ立法趣旨が異なり、諸外国の立法例を見ても必ずしも一致する必要がないことから、両者を切り離し、公職選挙法の選挙年齢の引下げを先行させるのも一つの有力な選択肢であるとの見解を示したが、この点についての深掘りした説明を求める。
  • 明日から再開が予定される年齢条項の見直しに関する検討委員会においては、法務省の見解についてどのように対応していくのか見解を求める。
  • 民法の成年年齢の引下げを行う場合の問題点を解決するために環境整備が必要であるとの見解が示されているが、この必要な環境整備にどれくらいの時間がかかるかについて、法務省の見解を求める。

小沢 鋭仁君(民主)

  • 憲法改正国民投票法の附則に定められた3つの宿題について、我々は早急に対応していく責務がある。
  • 内閣官房の答弁では、国会審議の状況も見て対応したい旨が述べられたが、憲法改正国民投票法の附則においては「国は」が主語となっており、政府がやらなければならないこととしてしっかりと認識してもらう必要がある。
  • 民法の成年年齢引下げと公職選挙法の選挙権年齢の引下げに関する法務省の見解について、法務省から深掘りした説明を求める。民法の成年年齢引下げと公職選挙法の選挙権年齢の引下げについては、憲法審査会としても早急に議論を進めるべきである。

山尾 志桜里君(民主)

  • 憲法改正国民投票法附則3条2項の解釈だが、現在のように「法制上の措置が講ぜられ」ていない状態では、国民投票の投票権を有する者は、20歳以上になるのか、同法本則3条により18歳になるのか。私はこの点については柔軟に解釈し、20歳以上の者が投票権を有すると解釈すべきと考える。
  • 私は、選挙権年齢は18歳に引き下げるべきとの意見である。人口動態の急激な変化が、社会保障をはじめとする国のあり方に劇的な改革を迫っている今、割合は減るが責任が増えていく若い世代の声を国政に入れ込んでいく必要性が高いからである。
  • 民法の成年年齢と少年法の適用年齢は、選挙権とできるだけ同時に引き下げる方向で検討すべきである。安易に選挙権年齢だけ引き下げることについては慎重な立場である。その理由は、責任を伴わない権利をふるまうと、その権利の行使の結果にひずみが生じるからである。責任を引き受ける者が権利をも行使すべきである。
  • 民法上の成年年齢については、高校卒業後多くの者が、契約を締結し、働き、賃金を得る等の行為を、親権者から自立して行っているという実態が先行している。少年法は、20歳未満を少年とし、成年と切り分けて原則は家裁送致にしているが、例外的に検察に逆送し成年類似の刑事裁判に付すことも予定している。成年類似の刑事裁判の手続にのった場合、死刑があり得るのは18歳が分水嶺である。自分の行為を引き受ける最も厳しい責任として死刑がありうるのが18歳であるから、少年法の適用年齢を18歳に引き下げることもあり得ると考える。
  • これらをパッケージで引き下げるとなると時間がかかるが、権利には義務を伴うという原則を曲げるべきではない。その間、附則 3条2項の解釈は柔軟であるべきである。

笠井 亮君(共産)

  • この時間も予算委員会の集中審議が行われている。私の元にも、消費税増税問題等重要な問題が予算委員会で審議されているのになぜ憲法審査会が行われるのかという意見が寄せられている。かねてより、私は、国民は改憲を求めてはおらず、憲法審査会は動かすべきではないという立場ではあるが、開会されたからには意見を表明し、質問する。
  • 改憲手続法附則3条1項は、選挙権年齢や成年年齢等を引き下げるための検討及び必要な法制上の措置を2010年5月18日までに講ずることを義務付けているが、政府の年齢条項の見直しに関する検討委員会は、2010年4月20日に開かれた第4回の会合でストップしている。内閣官房は、以来現在まで2年近くもなぜ会合を開かなかったのか。 2010年5月18日という期限が来て、宿題の答えが出せずにあきらめたのか、国会も動いていないからということなのか。
  • 法務省は、選挙権年齢の引下げと成年年齢の引下げを切り分けることもできるということを説明しており、その視点も含めて検討できたのに検討していなかった。内閣官房によれば、同検討委員会は明日(2月24日)再開するということだが、国会も動き出したのでこのあたりでやらないとまずいということで再開したのか。
  • 選挙権年齢と成年年齢については、法務省と総務省の意見は異なっている。この問題を巡っては多くの課題があると思うが、解決しないまま生煮えの状況で改憲手続法を審議して18歳選挙権について規定し、施行されるまでの間の検討及び必要な法制上の措置を規定したが、見通しもないままに成立したためにこのような問題が起こってくると思う。その意味では、18歳選挙権や成年年齢の問題は、改憲手続法と別個に国会や政府で検討すべき問題である。日本共産党は、戦前から、18歳選挙権を掲げてきた。この問題は、国会で審議がされていないからやらなくてよいという話ではなく、改憲手続法とは関係なく、別個に、不断に政府で検討し、国会で議論すべき問題である。

照屋 寛徳君(社民)

  • 冒頭、いかなる改憲にも反対である立場を表明したい。
  • 国民投票の投票権年齢は本則で18歳以上と定めているが、この意義は大きい。これは、国民主権の理念に基づき、国の将来を決する憲法改正問題について、より多くの国民に対して投票権を付与しようとするものであろう。しかし、投票権年齢、公職選挙法の選挙権年齢、民法の成年年齢、少年法の適用年齢は、それぞれ立法の趣旨・目的との関連で、簡単に結論を見出せるものではなく、多様な国民の意見を聞いた上で、法制上の措置やその施策について慎重な検討を要するものと考える。
  • 法制審議会が答申した「民法の成年年齢の引下げについての意見」について質問する。この中で、「消費者被害の拡大など様々な問題が生じるおそれがあるため…」とあるが、消費者被害の拡大のほかに、法制審議会においては、どのような問題が事例として出されたのか。また、「現時点で引下げを行うと…」とあるが、「現時点」とは答申時を指すのか、それとも関係法令の整備・諸施策の立法・立案の実施を指すのか。さらに、憲法15条に定める成年者による普通選挙と民法の成年年齢に関する法制審議会における議論はどのようなものであったか。

川越 孝洋君(民主)

  • 法務省は、成年年齢を 18歳に引き下げた場合、消費者被害が拡大するおそれがあるとしているが、これについて、18歳から 20歳に達するまでの青少年に対して、どのような教育をしているか。
  • 権利と義務は裏表の関係にある。私が中学校の頃には高校への進学率が50%を超えたが、それまでは中学校を卒業すると同時に働きに出る人が多かった。所得税など税金を払っているのに選挙権はないのかと自分でも言ったことがあるのを思い出した。
  • 法の番人である法務省が人間の根本にかかわる問題について、どちらでもよいかのような態度を取るのはいかがなものか。
  • 法務省は先ほどの説明の際、「国民の理解が得られた後に民法の成年年齢を引き下げるということが、一つの有力な選択肢である」と述べたが、法律は全て国民の理解を得られているのか。
  • 少子高齢化を迎える中、社会の担い手として若者が求められてくる中で、早くから国政への参加を促すために、選挙権を18歳から付与すべきであるが、当然責任は取るべきである。

中谷 元君(自民)

  • 憲法改正国民投票を 18歳以上の者の投票で実施できるように、憲法審査会幹事会又は各党代表者による実務者協議会等を設けて協議すべきである。
  • 国民投票の実施には投票人名簿の作成・管理、違反者の取締規定の整備等が必要になると考えるが、今後どのような手続を実施すれば国民投票が可能になるか。
  • 現在総務省の指示で各自治体が投票準備を行っているが、その投票権年齢は20歳を前提に準備しているのか。また、憲法改正について国会が発議を行えば、現在でも国民投票は実施できる状態にあると考えてよいか。
  • 光市母子殺害事件に関して、犯行当時18歳1ヶ月であった元少年に対し死刑が確定することとなった。こうしたことを受けて、少年法の適用年齢の引下げについて社会的要請が大きくなっているが、法務省はどのように検討しているか。
  • 公職選挙法の選挙権年齢の18歳への引下げについて、政府は早期に決断して改正案を提出すべきであるが、内閣官房と総務省の見解を伺いたい。

中島 正純君(国民)

  • 憲法改正国民投票法附則に規定されている検討事項については、最優先に取り上げ、結論を得なければならない。
  • 諸外国の大勢が選挙権年齢を18歳としており、また、我が国の18、19歳の国民がそれに比べて知識能力、判断力、社会的関心が劣っているとは思わない。
  • 国民投票の投票権年齢を 18歳以上としたのは、18、19歳の国民に成人としての責任を負う自覚を持ってもらうことも期待していたはずである。であるならば、同時に少年法の適用年齢についても検討が必要である。少なくとも、公職選挙法改正により 18歳以上の国民に選挙権が与えられれば、刑事責任を含めた一体として社会的責任をも負うべきなのは当然である。
  • 法制審議会の最終報告書は、少年法等の検討について所管省庁で行うこととしており、少年法の適用年齢は法務省において当然に検討されなければならない問題であるが、これまで具体的にどのような検討がなされ、今後どのような検討スケジュールを考えているか。
  • 本来、憲法審査会で議論すべきは改正の内容のはずであり、憲法調査会報告書を踏まえた上で、改正への歩みを進めていくべきである。我々の責務は憲法について審議を進めることであり、憲法論議を国民的な論議につなげていくことが重要である。

赤松 正雄君(公明)

  • 年齢条項の検討に関して、政府から「国会審議を見守りつつ」との説明があったが、立法府で議論が進んでいないからきちんとした答えが出せなかった、宿題を出した国会がいい加減であったから、宿題を片付けるべき行政側もなかなか応じられなかったと感じられる。立法府、行政府とも大いに反省すべきである。
  • 当初2年だった検討期間を1年延ばして3年間としたにもかかわらず、不幸にして無為に過ごされてきた。憲法改正国民投票法制定当時には想定されなかったことで、残念な結果となっている。今の与野党、立法府、そして行政府とも仕切り直しをし、反省すべきことは反省した上で、きちんと体勢を立て直して、3つの宿題の解決に向けて取り組むべきである。
  • 18歳選挙権の問題に関しては、憲法改正と絡めて議論されてきた印象がある。公明党は18歳選挙権を主張しているが、憲法改正と絡めて議論するのではなく、憲法改正とは別の問題として取り組む必要があるのではないかと感じる。

辻元 清美君(民主)

  • 民法の成年年齢と公職選挙法の投票権年齢は、どこで決めるのか。政府側はどういうプロセスを経て決定となるのか、説明してほしい。
  • 数年前の憲法調査特別委員会においても、今回と同様の議論があった。私は、憲法改正という一番大きな、国の大本を決める手続の投票権者の範囲が決まっていない中で法律を成立させてよいのか、順番としては、民法の成年年齢なども含めて十分検討された上で制定するのであればよいが、宿題を残したまま憲法改正手続を定めるという見切り発車をしてよいのか、ということを述べた。特別委員会においては不正常な状態で採決されたが、そのような経緯から、投票権者の範囲については立法府において結論を出し、その結論に従って進めていくのが大事だと思う。
  • 投票権年齢は18歳が適当ではないかと思う。今国会で年金問題が審議され、若い人たちの50年先の問題を議論している。我々も、様々な将来を見越して、国会の場で議論しているが、様々な意識を持って政治に参画していくことが大事である。選挙権年齢を引き下げるべきである。それに伴って、個別の問題の大本を決める憲法も、若い人の参加の幅を広げるべきである。しかし、こうしたことは憲法審査会だけでなく、政府の手続や、世論とも調整を図った上で、憲法改正に向き合わないと、国民に対して不誠実であると考える。

浜本 宏君(民主)

  • 中学卒業後に税金を支払っている人もおり、また、昨年3月11日の大震災では若者が命を張って活動していた実態がある。米国で選挙権年齢が 18歳になったのは、ベトナム戦争で命をかけて戦った若者がいたためとの話も聞いており、選挙権は18歳以上に付与すべきと考える。
  • 法務省は成年年齢の引下げに関連して法教育や消費者教育の必要性に言及していたが、自らの教師の経験を踏まえれば、最も心配なのは学校において公民教育がほとんど行われていないことである。民法に限らず公職選挙法上の選挙権年齢の引下げに際しても、公民教育や法教育を充実させていく必要がある。

柴山 昌彦君(自民)

  • 本来必要な立法措置ができるまでの経過的な状態について規定を置かなかったのは、規定を置くことにより立法措置そのものが遅れることを想定しないということで、与野党合意の下で不完全な形での立法とならざるを得なかった。それは我々が必要な措置をとるという強い決意表明だったのであり、現在の立法不作為の状態は早期に解消しなければならない。
  • 法務省が、消費者被害の拡大のおそれ等の問題点を解決する観点から、「消費者庁による消費者行政の一元化及び充実」を掲げていることは、国民生活センターの組織の統廃合という議論のある問題に矮小化される懸念があり、疑問である。
  • 若年者消費者教育の充実との発言があったが、高校段階の18歳と、大学進学等で親元を離れて自活をしている20歳とでは、財産上の契約を行う形態等にもかなり差が生じるのではないか。法務省は、18歳時点又は20歳時点で親元を離れて自活している人の割合を把握しているか。
  • 総務省は、民法上の判断能力と参政権の判断能力は一致すべきとの見解を述べているが、具体的にどのような理由で 2つの判断能力が一致すべきと考えているか。一致した方がよいという以上に、一致しなければならないとする根拠はあるのか。
  • 一致しなければならないほど投票に精神的成熟性が必要なのであれば、例えば投票にまつわる選挙犯罪についても同様の形での精神の成熟性が考慮されなければならないのか。参政権の年齢と刑事責任の年齢が連動する必要があるとの議論につながる懸念がある。

山花 郁夫君(民主)

  • 憲法改正国民投票法案の採決では反対の立場をとったが、選挙権年齢等の18歳への引下げについては、むしろ我が党から主張していたものであり、この点については賛成の立場で意見を述べる。
  • 今日3省庁の話を聞いたが、総務省と法務省とで立場が違う。内閣官房はしっかりと議論をリードしてほしい。選挙権年齢と民法の成年年齢との関係について、両省で綱引きをしていると、いつまでも動かない。一般的に言うと、それぞれの法律で立法趣旨があって、年齢が決まっている。年齢がそろっていることが、必ずしも絶対的な条件ではないと考える。
  • 法務省は、成年年齢の引下げを行う場合の問題点として消費者被害の拡大を強調している。引下げ反対の意見の中には、 18歳への引下げで被害件数が増えるかのような主張をしているものもあるが、現在成年年齢が20歳となっていても 20歳になった翌日から消費者被害が増えるという現状があり、消費者被害が若年化するおそれがあるという指摘である。そのような現状があることを踏まえれば、成年年齢を引き下げるかは、どう決めるかの問題である。
  • 平成22年5月18日までに法整備を終わらせるのが、当時の国会の意思だった。現在は、その法整備を終わらせるべき期間を徒過している。個人的には、与野党で期間について議論をし、改めて期間を定めてその間に法制上の整備を行う、ということについて検討してはどうか。 3省庁は、そのような期間を国会が議決したら、遵守するか。

保利 耕輔君(自民)

  • 18歳で憲法問題や選挙に関与するには、教育が大切である。 18歳で政治的見識を持っている者は少ないのではないかと感じる。
  • 義務教育は中学で終わるが、中学3年までの間に憲法についてどのくらい勉強しているかは分からない。高校は後期中等教育といわれており、中等教育は高校まで行かないと完結しない。政治に対する関心を呼ぶための一般教育は、高校レベルだろうと思う。
  • 政治の問題を教育の中で扱うのは、公正・公平でなければならず、中立をどう守るかという問題もあり、デリケートなものである。
  • 文部科学省がこれからの教育についてどのように考えているか、憲法審査会で意見を聴く場を設けてもらいたい。

木村 太郎君(自民)

  • 選挙権年齢と成年年齢の関係について主に議論されているように思うが、被選挙権年齢の引下げについてはどうか。諸外国において、選挙権年齢を引き下げると同時に、あるいは連動して被選挙権年齢も引き下げるといった例はあるか。政府内で、被選挙権年齢も引き下げる検討を行っているか。