平成26年4月17日(木)(第2回)

◎会議に付した案件

日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(船田元君外7名提出、衆法第14号)

1.参考人から意見を聴取することに、協議決定した。

2.上記案について、提出者船田元君(自民)、枝野幸男君(民主)、中谷元君(自民)、鈴木克昌君(生活)、北側一雄君(公明)、三谷英弘君(みんな)、畠中光成君(結い)及び馬場伸幸君(維新)に質疑を行った。

(提出者に対する質疑者)

平沢 勝栄君(自民)

武正 公一君(民主)

小宮山泰子君(生活)

大口 善徳君(公明)

杉本かずみ君(みんな)

井坂 信彦君(結い)

笠井 亮君(共産)

三木 圭恵君(維新)


◎提出者に対する質疑者及び主な質疑事項等

平沢 勝栄君(自民)

<提出者に対して>

  • 4月3日に8党で交わされた確認書の性格は、どのようなものか。署名を行った各党の責任者が交替しても、党はこの確認書に拘束されると考えてよいか。
  • 確認書には、選挙権年齢引下げに係る各党間プロジェクトチームの設置等が明記されているが、選挙権年齢については、今後どのような段取りで18歳に引き下げるのか。あわせて、民法の成年年齢、少年法の適用年齢についてはどうか。
  • 仮に選挙権年齢や民法の成年年齢が下がらなかったとしても、憲法改正国民投票には影響を与えない、すなわち、本改正案さえ施行されれば憲法改正国民投票は実施できると考えてよいか。
  • 本改正案で、公務員について、純粋な国民投票運動は行うことはできるが、他の法令により禁止されている他の政治的行為を伴う場合はできないこととなる。そのようにした理由は何か。また、純粋な国民投票運動とそうでないものを切り分けることは可能か。
  • 組織により行われる勧誘運動の企画等に対する規制について、当初与党案では規制するとしていたが、本改正案では検討条項となった理由は何か。
  • 確認書では、公務員や教育者の地位利用による国民投票運動の禁止規定の違反に対し罰則を設けることの是非については、今後の検討課題としている。本改正案で罰則を設けないこととしたのはなぜか。
  • 確認書では、地方公務員の政治的行為について国家公務員と同様の規制とすることについては、「各党の担当部局に引き継ぐ」こととしているが、この趣旨は何か。また、引き継いだ後は、どうなるのか。
  • 確認書には、「国民投票運動を行う公務員に萎縮的効果を与えることとならないよう、政府に対して、配慮を行うことを求める」とある。これは、違反行為をした公務員に対する取り締まりを緩めようという趣旨のようにも読めるが、このような合意を行った趣旨は何か。

武正 公一君(民主)

<発言>

  • 憲法改正国民投票法改正案が、8党の合意を得て提出に至った。これは7年前の法制定時に残された3つの宿題を解くものであり、特に、投票権年齢について4年以内の18歳への引下げを明確にするものである。提出者の尽力に感謝する。

<提出者に対して>

  • 我が党が主導した投票権年齢の18歳への引下げが実現するに当たり、18歳・19歳の者への周知、学校教育での取組、国民各層への周知が必要と考えるが、その方策についてどう考えるか。
  • 公務員の政治的行為に係る法整備について、7年前の法制定・本改正案提出に当たっての民主党の考え方はどのようなものであり、どのように整合性をとったのか。
  • 7年前の法制定時、船田議員は提出者として「公務員であっても、特定の政治的目的を持たない通常の賛否の勧誘運動は自由にすべき」「国民投票運動においては、できるだけ自由度を増すべきとの方向での検討である」旨を答弁している。この答弁と今回の改正内容との整合性についてどう考えるか。

<発言>

  • 憲法改正国民投票は、将来の日本を形作る国の最高法規に関する議論であるから幅広い国民が参加すべきであり、その運動は公務員を含めてできるだけ自由であるべきとの趣旨で、憲法改正国民投票法は制定された。本改正案も同じ趣旨に基づいて合意されたものであり、現行の規制を強化する方向で議論することはその趣旨に反する。

<提出者に対して>

  • 本改正案では、公務員について、憲法改正に関する純粋な賛否の勧誘・意見表明が可能とされた一方で、「政治的行為禁止規定により禁止されている他の政治的行為を伴う場合は、この限りでない」とされている。では、公務員が、全体の9割が前者の内容、残り1割が後者の内容で構成されるビラを配布した場合、1割が違法であるが故に「全体として違法性を帯びたビラ」を配布したと評価されてしまうこととなるのか。
  • 一般的国民投票制度の在り方について、憲法審査会で定期的に議論できるように幹事会で協議する旨が確認書に盛り込まれたが、この議論はどの程度の頻度で行うことになるか。

小宮山 泰子君(生活)

<発言>

  • 生活の党は憲法改正に否定的な立場ではない。憲法に書き加えるべきことがあれば書き加え、改めるべきことがあれば改める。そのためには、しっかりと議論をし、手続に従って国民の同意を得なければならない。

<提出者に対して>

  • 生活の党も本改正案の共同提出者となっているが、他党とともに提出者に加わることとなった経緯・理由は何か。
  • いわゆる「3つの宿題」への対応については、各党で活発な議論が行われたものと認識しているが、生活の党のこれらについての考え方と本改正案との関係はどのようなものか。
  • 現行法制定過程において、当初の自公案では本改正案同様、裁判官、検察官、公安委員会の委員、警察官については、特定公務員として国民投票運動を禁止していたが、議論が進められる中で削除された。本改正案の取りまとめに当たり、これらの職種の者を特定公務員として復活することとした議論の経緯を説明してほしい。

大口 善徳君(公明)

<発言>

  • 憲法改正国民投票法改正案は、8党共同で提出され、また確認書が交わされるなどしてご努力いただいた。このことを多としたい。

<提出者に対して>

  • 本改正案では、投票権年齢は改正法の施行の4年後に、選挙権年齢や成年年齢の引下げの状況にかかわらず、自動的に18歳に引き下げられることとなるが、そのようにした理由は何か。
  • 選挙権年齢は18歳以上というのが世界のすう勢であり、ぜひ引下げを目指さなければならないと思うが、提出者の見解を伺う。
  • 選挙権年齢を引き下げることにより、成年年齢を引き下げるインセンティブになると思うが、提出者の見解を伺う。
  • 確認書においては、選挙権年齢については改正法施行後2年以内に18歳に引き下げる各党間プロジェクトチームを設置することになっている。一方、昨年12月に交わされた自公の合意では、附則3項の法制上の措置を速やかに講ずるため与党プロジェクトチームを設置することになっている。選挙権年齢を各党間プロジェクトチームで検討した後、成年年齢に関する法整備についてはどのような枠組で議論するのか、見解を伺う。
  • 公務員や教育者の地位利用による国民投票運動の禁止規定の違反に対して罰則を設けるべきとの意見があったにもかかわらず、本改正案では罰則を設けないこととした理由は何か。
  • 在職中の国民投票運動が禁止される特定公務員の範囲については、公職選挙法136条の規定に合わせるべきとの意見もあったが、本改正案では検査官、収税官吏及び徴税の吏員については含めないこととした理由は何か。

杉本 かずみ君(みんな)

<提出者に対して>

  • 手続法である本改正案が成立すれば憲法改正が視野に入ってくるが、憲法改正についてみんなの党は、現時点でどのような考え方を持っているか。
  • みんなの党が本改正案の共同提出者に加わった経緯・理由は何か。
  • 選挙権年齢等の18歳引下げは提出者間におけるコンセンサスであるが、個人的には適切な判断力が備わっているのか疑問である。投票権年齢18歳と選挙権年齢20歳との齟齬について、どう考えるか。
  • 成年年齢引下げについて、みんなの党はどのように考えるのか。
  • 確認書にある選挙権年齢引下げに係る各党間プロジェクトチームの設置時期はいつか。また、その事務局は誰が担当するのか。
  • 公務員や教育者が地位を利用して国民投票運動を行うことの弊害は大きいが、罰則を設けて禁止する必要はないか。
  • 会計検査官、収税官吏及び徴税の吏員についても特定公務員として国民投票運動を禁止する必要があるのではないか。

<発言>

  • 個人的には、一人一人の意思は尊重されるべきであるが、自衛官、海保職員も、特定公務員に含まれる警察官の延長線上に存在すると考えている。

<提出者に対して>

  • みんなの党のアジェンダにある、一般的国民投票制度の導入は諦めたのか。今後も導入について議論するのか。
  • 憲法審査会が4〜5回開かれたら、1回は一般的国民投票制度について検討するということだが、一般的国民投票制度の議論は定期的に進められることになるのか。

井坂 信彦君(結い)

<提出者に対して>

  • 改正法施行後4年を経過するまでの間、憲法改正国民投票の投票権年齢は「20歳以上」とする経過措置が盛り込まれたが、4年とはどのような理由で決まったのか。この4年間で選挙権年齢等の引下げについてどのように取り組むのか。
  • 成年年齢の引下げの停滞が、投票権年齢や選挙権年齢の引下げができないことの言い訳にならないよう、民法とは切り離して考えるべきではないか。
  • 附則3項に「改正法施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずる」旨の検討条項があるが、これまでも選挙権年齢引下げに係る措置が取られてこなかった。速やかに投票権年齢を下げるという意思を示していただきたい。
  • 我が国の急速な少子高齢化、大きな人口構造の変化を踏まえ、また世代間の格差の是正等も政治課題に上りつつあるとの観点から、投票権年齢・選挙権年齢の引下げを急ぐべきと考えるが提出者の見解を伺う。

<発言>

  • 本改正案の内容について、協議の過程では、若年層の権利よりも公務員の権利の方が大事なのか、バランスを失するのではないかと懸念を表明した。選挙権年齢等の18歳への引下げを改めて強くお願いしたい。

<提出者に対して>

  • 在職中国民投票運動をすることができない特定公務員として、検査官、収税官吏及び徴税官吏を入れず、裁判官、検察官、公安委員会の委員及び警察官のみを規定するに留めた理由は何か。
  • 特定公務員の国民投票運動を禁止し、その違反に対し「6月以下の禁固又は30万円以下の罰金」との罰則を設けているが、公務員や教育者がその地位を利用して国民投票運動を行った場合にも、禁止の実効性を高めるため、同様に罰則を設けることが必要であると考えるが、見解を伺う。
  • 憲法改正以外の重要問題に関する国民投票について、間接民主制との整合性の確保は考えつつも、我が国にとって極めて重要な問題と捉え、政治課題として国民の意思を問う仕組みは重要だと考えるが、提出者の見解を伺う。
  • 国民投票制度の対象拡大に係る検討条項について、今後具体的にどのような議論を進めるのか。

笠井 亮君(共産)

<提出者に対して>

  • 改憲手続法で「宿題」と言われているのは、選挙権年齢等を投票権年齢に合わせて18歳に引き下げるということがポイントである。それも含めていわゆる「3つの宿題」は本当にできたのか、認識を問う。

<発言>

  • 「3つの宿題」というのは、2007年当時に自公の法案提出者が立法者の意思として自らに課した課題であり、責任を曖昧にしてはならない。「法施行までの3年間に必ず選挙権年齢等の引下げをするから法案を通してくれ」と、慎重審議を求める国民の声を押し切って採決を強行した。提出者には、これに対する責任があるのではないか。

<提出者に対して>

  • 改憲手続法を運用するために、宿題の中身を変えてしまっているのではないか。船田議員は、それは政治状況が変わったからだと言っているが、明らかにこれまでの経過や答弁、立法者意思と異なるものではないか。

<発言>

  • 今この改定案の審議を行ったところで、この場での答弁もまた何の担保にもならないということになりかねない。
  • 今回の改定案は改憲手続法成立時の約束をある意味で反故にして、現行法の抱える様々な問題点は先送りにして、とにかく改憲の国民投票ができるように形だけ整えることになると受け止められても仕方がない。

<提出者に対して>

  • 船田議員は、改憲手続法の改定は憲法改正の手続を整備するだけとのことだが、今すぐ整備せよという国民からの多数の声が具体的な形で現れているのか、認識を問う。
  • 世論調査でも、憲法改正に反対が賛成を上回り、国会の中では改憲派が多数を占めるように見えるが、国民の中では憲法を守れというのが多数派である。国民の意識についてどう考えるか。
  • 国民投票のルール作りが必要だと言われるが、戦後ずっと手続がなかった状況で、しかもこの7年間は整備すると言って整備してこなかった状況の中で、ゆっくり時間をかけて整備したらいいのではないか、急ぐ必要はあるのか。
  • 船田議員は、集団的自衛権行使容認のために拡大解釈を自由にやるなら憲法改正は必要ないと言われてしまうと述べており、解釈改憲が先行することで明文改憲の機運がしぼむことに懸念を示している。そこで、改憲手続法を改定することで改憲の条件作り・世論作りをしようとしているのではないか。

<発言>

  • 改憲手続は国民世論の多数が必要だとなったときに決めればよく、そういう状況でない今、改憲手続法は改定ではなく廃止すべきだ。

<提出者に対して>

  • 改憲手続法は民主党政権・鳩山内閣で2010年5月18日に施行された。当時枝野議員は法令解釈担当大臣だったが、記者会見で「附則に定められた法整備が進んでいない下で、手続法を施行できるのか」という問いに対し、「政治論として考えたときには、国民投票制度自体が、両院における3分の2の多数による発議がなされなければ発動されないシステムであるので、そういった意味では、純粋法理論上、施行できるのかどうかという議論にあまり今は意味がないと思っている」と述べていたが、これはどのような意味か。衆参両院の3分の2以上の賛成で発議できる状況にないので、改憲手続法がどういう状態でも関係ないという意味だと受け止めてよいか。
  • 同日の記者会見で、枝野議員が「むしろ重要なことは、3年以内に18歳投票権に向けた法整備を行うことが前政権でなされなかったことを踏まえ、少なくとも我々が政権を得てから3年以内にはこの附則で求められている作業を行わなければならないという責任を負っており、その責任を粛々と果たしていくことだと思っている」と述べていたが、民主党政権下においても18歳投票権に向けた法整備ができなかったのはなぜか。

<発言>

  • 改憲手続法の「宿題」は、自公政権でも民主党政権でもできない難解な宿題だったということだ。本来は宿題にせずに、法案審議の際に憲法調査特別委員会で結論が出るまで審議するか、選挙権年齢等の引下げについては改憲手続法とリンクさせずにやる方法もあった。

<提出者に対して>

  • 安倍総理の憲法観は当時から変わったと考えるか。民主党が2007年に自公案に反対した際の理由は、一方的な衆議院通過のスケジュールと、当時の安倍総理の憲法観をあげていた。安倍総理の憲法観が当時から変わっていないのなら、なぜ今民主党は共同提案をしたのか。

<発言>

  • 本改定案については、丁寧かつ徹底的な審議が必要であり、詰めた論点整理を強く求めたい。

三木 圭恵君(維新)

<発言>

  • 本改正案は、8党の合意のもと共同で提出された。法案提出者、特に船田議員の尽力に感謝したい。

<提出者に対して>

  • 日本維新の会の憲法改正に対する考え方、国民投票法の「3つの宿題」についての取組、今回8党で合意の上共同提出するに至った経緯について伺う。
  • 公務員の国民投票運動に関して、組織により行われる勧誘運動の企画等については、当初の自公案ではその行為を禁止していたにもかかわらず、民主党との交渉の結果、附則に検討条項として盛り込まれることとなり、その中味は「規制の在り方について検討する」となっている。これについては、どのような場で協議されることになるのか。
  • 地方公務員の政治的行為を国家公務員と同様の規制とし、罰則を科すことが必要であり、今後、公務員法制全般の問題として取り組むべき問題と考えているが、提出者の見解を伺う。
  • 地方公務員の政治的行為を国家公務員と同様の規制とすることについて、今後も検討していく旨、船田議員から確認の答弁をいただきたい。
  • 投票権年齢が18歳に引き下げられることに伴い、日本国憲法の制定過程を学習指導要領に加えることと、憲法教育についてもっと具体的に充実を図っていく必要があると考えるが、提出者の見解を伺う。